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今夜『M-1グランプリ』決勝! 大阪吉本の逆襲なるか

てれびのスキマライター。テレビっ子
『M-1グランプリ』決勝の会場となるテレビ朝日(写真:Rodrigo Reyes Marin/アフロ)

いよいよ今夜、『M-1グランプリ2023』(ABCテレビ・テレビ朝日)の決勝戦が開催される。

今回の大会キャッチフレーズは「爆笑が、爆発する。」。大会前には例年通り、クオリティの高いオリジナルプロモーションビデオが公開された。 日食なつこの「ログマロープ」という意外な選曲も痺れる。

今年の決勝審査員には立川志らくに代わり、海原ともこが入ったことが話題になっているが、予選の審査員もこれまで務めていた前田政二、倉本美津留、長谷川朝二といったベテランが抜け、若返りを図ったという。

そんな新たな審査員が選んだ決勝進出9組は、初進出が半数を超える5組とフレッシュなもの。

決勝大会を前に、そんな決勝進出者たちを改めて整理しておきたい。

大阪吉本の逆襲

・さや香(大阪吉本/2年連続3度目)

今大会、実績的にもっとも優勝に近いといえるのがさや香だろう。3度目の決勝進出であり、昨年は準優勝に輝いた。今年の優勝候補筆頭だ。

不仲説も流れるが、そんなことを持ち出すのが愚かに感じるほどの見事な掛け合いで松本人志をして「美しい漫才」と言わしめた。

2020年はマヂカルラブリー、2021年は錦鯉、2022年はウエストランドと、過去3年、東京で活躍する漫才師が王者についている『M-1』。しかもここ2年は吉本以外の事務所に持っていかれている。“本流”である大阪吉本に、その王道のしゃべくり漫才で王座を奪還できるかが注目だ。

・カベポスター(大阪吉本/2年連続2度目)

2年連続2回目の決勝進出を果たしたカベポスターも大阪吉本所属。2期先輩のさや香とは大阪の劇場で長らく切磋琢磨してきた仲だ。

2022年は「ytv漫才新人賞」と「ABCお笑いグランプリ」という関西の2大若手登竜門タイトルを同年ダブル優勝という史上初の快挙を達成し挑んだ昨年の決勝では、トップバッターに選ばれる不運もあり、8位という結果に終わった。このときの「草食系ロジカル」というキャッチフレーズの通り、ロジカルで独特なテンポの漫才が特徴的だ。立川志らくからは「言葉選びのセンスが天才的」と評された。

今年は永見が『探偵!ナイトスクープ』(ABC)の探偵に抜擢され、コンビでも数多くのレギュラーを掴んで飛躍の年となった。その年の締めくくりとして王座を掴みたい。

・マユリカ(東京吉本/初進出)

今年4月から東京所属となったが、元々は大阪吉本所属だったマユリカ。

彼らはNSC大阪33期生であるが、その同期は『キングオブコント』王者のコロコロチキチキペッパーズ、ビスケットブラザーズ、今年『THE W』を制した紅しょうがの稲田美紀、さらにはZAZY、ニッポンの社長・ケツ、滝音・秋定など各賞レースで結果を残し続けている(NSC生ではないが、霜降り明星も33期扱い)。

今年、『キングオブコント』を制したサルゴリラは、4歳からの幼馴染というのが話題となったが、マユリカの2人は、3歳からの幼馴染。そのクセのあるキャラクターで『マユリカのうなげろりん!!』(ラジオ関西Podcast)も人気だ。

2020年の「ytv漫才新人賞決定戦」決勝を濃厚接触者の疑いがあるとして棄権せざるをえなかったなど賞レースには縁がなかったと本人たちは言うが、それを払拭するかのように、33期で幼馴染コンビの彼らが戴冠する流れが来ているかもしれない。

大学お笑いサークル「O-keis」対決

・真空ジェシカ(人力舎/3年連続3度目)

同期のさや香同様、3回目の決勝となるのが真空ジェシカ。しかも、3年連続だ。

バラエティ番組でも迎合することはなく、常にトリッキーなボケを繰り返し、物議を醸してきた。『M-1』の大舞台でもそれは変わらず、カリスマ的存在になりつつある。すっかりキャラクターが浸透した現在、優勝の機運は高まっている。

川北は慶應義塾大学「お笑い道場O-keis」、ガクは青山学院大学「ナショグルお笑い愛好会」出身という昨今、賞レースで好成績を収め注目される大学お笑いサークル出身者。ミルクボーイ、マヂカルラブリー(村上)に続く大学お笑い出身者王者となるか。

上記のPVでは、「感動させたくない、だけはありますね」と川北らしい発言をしているが、もし彼らが優勝すれば、本人には不本意だろうが感動してしまうに違いない。

・令和ロマン(東京吉本/初進出)

大学お笑いサークル「O-keis」の川北の後輩にあたるのが令和ロマンだ(川北が5期、松井ケムリが9期、高比良くるまが10期)。

彼らは大学時代、「魔人無骨」として名を馳せ、そのままNSC東京23期に入学。首席で卒業しデビューした。芸歴1年目でヨシモト∞ホールのファーストクラスメンバーに異例の早さで昇格を果たし、現在は神保町よしもと漫才劇場のエース格として活躍する漫才エリート。早くから『M-1』決勝進出候補に挙げられてきたが、遂に初めて決勝進出を果たした。

初進出ながら優勝候補に押す声も少なくない。ここ3年、初出場による優勝がないが、それを覆す実力は備わっている。結成6年目の若き王者誕生なるか。

東京漫才界の雄

・モグライダー(マセキ/2年ぶり2度目)

2年ぶり2回目の決勝進出となるのがモグライダー。『リンカーン』の後継番組『ジョンソン』(TBS)に吉本以外から唯一のレギュラーとして抜擢されたのを始め、『ラヴィット!』(TBS)、『月ともぐら』(テレビ東京)などレギュラー番組を数多く抱え、今年のファイナリストの中でおそらくもっとも全国的な知名度の高いコンビといえるだろう。

2021年はトップバッターを引きながらもトップバッターとして歴代最高得点を叩き出した。天然のともしげに対しアドリブ感満載で的確なツッコミを入れる芝のスタイルは、ハプニング性があり、大会キャッチフレーズの「爆笑が、爆発する。」をもっとも期待できるコンビだ。昨年の準々決勝敗退という雪辱を果たすことができるか。

・ヤーレンズ(ケイダッシュステージ/初進出)

そんなモグライダーと長らく東京のライブで苦楽を共にしてきたのがヤーレンズだ。1週間で8回一緒にライブに出たこともあったという。最近は令和ロマンとも『M-1』に向けたツーマンライブを開催してきた。ライブ界で愛され、今回の決勝進出を芸人仲間やお笑いファンがもっとも祝福したコンビの一組だろう。

昨年は「仕上がっている」ともっぱらの噂が立ち、一気に決勝進出もあるのではないかと言われていたが、あえなく準決勝で敗退。今年いよいよベールを脱ぐことになる。早くからライブ界で頭角をあらわし、その第一線で戦ってきた彼らは今大会で大きなインパクトを残すに違いない。

・ダンビラムーチョ(東京吉本/初進出)

NSC東京16期で現在はヨシモト∞ホール所属のダンビラムーチョ。元々は若林正恭、バービー、フワちゃんを輩出した東洋大学の同級生だ。今回のファイナリストでは、大阪と東京の違いはあるがマユリカと同期。

『M-1』では2018年と2022年に準決勝進出。歌ネタが得意な彼ら。なんといっても昨年の敗者復活戦で見せたネタのインパクトは絶大だった。「歌しりとり」と言って森山直太朗の「生きとし生ける物へ」を交互に歌い続けるという人を食ったもの。終盤には楽器まで登場した。初の決勝の舞台でそんなひたすらバカバカしい自由な漫才で大きな笑い声を響かせてくれるだろう。

・くらげ(東京吉本/初進出)

ダンビラムーチョの1期後輩で同じくヨシモト∞ホール所属のくらげ。そのNSC東京17期は、空気階段、オズワルド、コットンらが華々しい活躍を見せる中、くらげは職人肌で叩きあげ感がある。大阪の同期でいえばさや香もいる。杉は今年の準決勝の2日前に子供が生まれたばかり。

今回のファイナリストの中では知名度ではもっとも劣るのではないだろうか。それだけに爆発があるのが『M-1』だ。斬新な切り口の漫才で極上のアップセットに期待したい。

なお、結成年では芸歴の関係性がややわかりにくいので、養成所入学年(「扱い」も含む)で整理して表にまとめてみた。

(※筆者作成)
(※筆者作成)

敗者復活

今年から敗者復活戦のルール・審査方法が、「国民投票」から大きく変更になった。これまでは、知名度が高い出場者が圧倒的に有利といわれていたが、より正当に漫才の面白さそのものが評価されるようになりそうだ。

今年も敗者復活戦には、オズワルド、トム・ブラウン、ロングコートダディといったファイナリスト経験者から、ニッポンの社長、ダイタク、ななまがり、フースーヤ、ママタルトなど個性豊かな実力者たちが揃っている。この激戦を勝ち残った勢いで優勝まで駆け上がることもまったく不思議ではない。

『M-1』敗者復活戦は、15:00から、そして『M-1』決勝戦は、18:30から生放送される。

ライター。テレビっ子

現在『水道橋博士のメルマ旬報』『日刊サイゾー』『週刊SPA!』『日刊ゲンダイ』などにテレビに関するコラムを連載中。著書に戸部田誠名義で『タモリ学 タモリにとって「タモリ」とは何か?』(イースト・プレス)、『有吉弘行のツイッターのフォロワーはなぜ300万人もいるのか 絶望を笑いに変える芸人たちの生き方』、『コントに捧げた内村光良の怒り 続・絶望を笑いに変える芸人たちの生き方』(コア新書)、『1989年のテレビっ子』(双葉社)、『笑福亭鶴瓶論』(新潮社)など。共著で『大人のSMAP論』がある。

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