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投手が野手としてプレーする。そして故障。大谷翔平ではなく田中将大の話。田中は3年前にも…

宇根夏樹ベースボール・ライター
田中将大はこの走塁で太腿裏を痛めた Jun 8, 2018(写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ)

 田中将大(ニューヨーク・ヤンキース)が、6月9日に故障者リストへ入った。前日にアーロン・ジャッジのライトフライで三塁から生還した際、田中は左右の太腿裏を痛めた。復帰までは1ヵ月程度かかる見込みだ。

 ふだん、田中は打席には立たない。6月8日はニューヨーク・メッツのホーム・ゲームだったためにDHがなく、「8番・投手」としてスターティング・ラインナップに名を連ね、2打席目に一塁手のエラーで塁に出て、そこからヒットと四球で三塁へ進んだ。

 田中は2015年9月にも、今回と同じシティ・フィールドで、バントをして一塁へ走り出した際に右太腿裏を痛めた。この時は試合から退くことなく投げ続け、その後も、登板を1度スキップするだけで済んだ。

 これまで、田中はシティ・フィールドで行われた4試合に出場している。他の2試合は、2014年5月と2016年8月。いずれも故障はせず、最初の試合ではメジャーリーグ初完投&初完封とともに、初安打を記録した。田中がメジャーリーグで打ったヒットは、現時点ではこの1本しかない。

 ヤンキースでは10年前の6月にも、野手としてのプレーで故障に見舞われた投手がいた。場所はミニッツメイド・パーク。対戦相手のヒューストン・アストロズは、2012年までナ・リーグに所属していた。「9番・投手」として出場したチェンミン・ワン(王建民)が、走塁中に右足を痛め、その後のシーズンを棒に振った。

 当時、アンソニー・マッキャロンがニューヨーク・デイリー・ニューズに発表した記事によると、ヤンキースのオーナー、ハンク・スタインブレナーは「ナ・リーグも21世紀を迎える時だと思う。ア・リーグ、マイナー、大学、高校、どこもDHを採用している」とコメントしたという。現在は弟のハルが取り仕切っているが、ハンクもオーナーの一人だ。この頃は兄の方が表に出ていて、5月に「レブロンがMJに並ぶ「真のGOAT」になるために必要なもの」でも紹介したように、父譲りの強気な発言を繰り返していた。

 また、ア・リーグの投手ではないが、2015年4月にはアダム・ウェインライト(セントルイス・カーディナルス)が、内野フライを打って走り出した直後に左アキレス腱を痛め、5ヵ月も欠場した。ハンクの言うとおり、ナ・リーグにもDHがあれば、ワンやウェインライト、田中のような故障は起きない。ワンはそれまでエースとして投げていたが、その後、完全復活はできなかった。

 ただ、個人的には、それぞれのリーグに違いがある方が面白いと思う。DH制の有無がもたらす差異は、それ自体にとどまらない。投手交代のタイミングはその一例だ。根本的な解決策は思いつかないが、投手が打撃・走塁の練習にもっと時間を費やすか、インターリーグもオールスター・ゲームと同じように、ナ・リーグのホーム・ゲームでもDH制を採用すれば(その場合はワールドシリーズをどうするのかを検討する必要があるが)、多少なりとも故障の防止に役立つのではないだろうか。

ベースボール・ライター

うねなつき/Natsuki Une。1968年生まれ。三重県出身。MLB(メジャーリーグ・ベースボール)専門誌『スラッガー』元編集長。現在はフリーランスのライター。著書『MLB人類学――名言・迷言・妄言集』(彩流社)。

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