2018年「働きがいのある会社」ランキングが発表。ランクイン企業はどこ?
「働きがいのある会社ランキング」は「Great Place to Work Institute(以下 GPTWと略す)」が毎年作成しているランキングである。その2018年版のランキングが発表された。
結果はすでに各メディアで報じられているが、ここではもう少し踏み込んでこのランキングがどうやって作られているのかをお話したいと思う。
【ランクインした企業について】
ランキングは、従業員規模別に3つにカテゴリー分けされている。
企業規模が異なると経営サイドと従業員サイドの距離感も全く異なってくるので、分けて評価するのは適切な対応だと言えるだろう。
〜大規模部門〜
大規模部門では1位「シスコシステムズ(コンピュータネットワーク機器開発)」、2位「Plan・Do・See(ブライダル)」、3位「ディスコ(精密加工装置メーカー)」となっている。
4位〜9位はセールスフォース、アメリカンエキスプレス、プルデンシャル生命保険、モルガンスタンレー、イケアジャパン、ジョンソン・エンド・ジョンソンなど全て外資系企業となっておりTOP10のうち7社が外資系企業となっている。
TOP10で日本企業なのは前述のプラン・ドゥ・シー、ディスコの他、10位にホットヨガのLAVA internationalの3社。
〜中規模部門〜
中規模部門では1位「コンカー(SAPグループ会社/IT)」、2位「バリューマネジメント(ブライダル)」、3位「ケンブリッジ・テクノロジー・パートナーズ(コンサルティング)」。
新興上場企業もランクインしているが、ここでも外資が目立つ。グローバルで見ると大規模な外資系企業も、日本法人の人数は1000人未満というケースは多いのだ。
〜小規模部門〜
小規模部門では1位「アクロクエストテクノロジー(IT)」、2位「マルケト(IT)」、3位「gCストーリー(施工業)」。
この部門になると日系の未上場ベンチャーが大半となっているが、一部会計事務所がエントリーしているのも興味深い。
【ランキングについて】
大規模部門はともかく、中規模部門・小規模部門については初めて名前を聞いた企業も多いのではないだろうか?
このランキングに載っている企業は全て「自らエントリーを行った企業」であり、逆に言えばエントリーしていない企業はどれだけ有名な企業であっても調査対象にはならない。つまり自薦のみ受け付けているランキングということになる。
当該企画には、全世界では50カ国で約7000社がエントリーしているという。日本のランキングにおいては438社が参加し、全135社がランキング入りしている。
(135社の内訳は、大規模部門25社、中規模部門55社、小規模部門55社)
【アンケートをもとにランク付け】
同ランキングは企業の「従業員へのアンケート調査」「会社へのアンケート」を元にして作成されている。
これを読んでいる方の中には「そんなアンケート、自分は受けたことがない」と思った方もいるかもしれないが、それもそのはず。アンケートは全ての企業に対して行われているわけではなく、エントリーした企業の従業員に対してのみ実施されているのだ。
また、実施企業の中でも全ての従業員を調査しているわけではなく、企業規模に応じて調査対象人数も異なっている。
小規模な企業では全社員が調査対象になることもあるが、例えば社員数1万人以上の企業であれば500名が最低ラインの調査対象人数となる。
評価配分は従業員アンケートが2/3、会社へのアンケートが1/3という割合だ。その結果を元に、今回のランキングが作成されている。
【アンケートを取る対象の社員の範囲は?】
ランキング参加の際の従業員数は、取締役、契約社員、パートタイム・アルバイト(週20時間以上勤務)も含まれている。
従業員250人以上の場合は選定した調査対象人数の60%以上、従業員数が250人未満の場合は従業員全員の70~90%がアンケートに回答しなければいけないという。
従業員数が24人以下の場合にはそもそもエントリー自体ができない事になっている。
なお本企画は有料で参加するものと思い込んでいる方も多いようだが、従業員へのアンケートをWEB回答方式にできるなら無料で参加することもできる。(紙回答なら回答人数×800円が必要になるという。)
【昨年の1位企業は参加せず?】
前年までのランキングと比較した結果、今年のランキングにある企業の名前がない事に気がついた。
2017年はワークスアプリケーションズが1位であったが、今年はランキングに同社の名前が見当たらないのだ。
ワークスアプリケーションズは2017年時点で「10年連続のベストカンパニー賞受賞」を達成しており、このことは同社の採用サイトでもPRされている。
本記事を書く際に、GPTWの事務局にワークスアプリケーションズが今年度ランキング入りしなかった経緯について問い合わせを行った。
結果としてランキングに載っていない企業についての回答はいただけなかったものの「殿堂入りなどの仕組みは無い」との回答をもらっている。
前年1位企業がランク外まで順位を落とすという事は考えづらいので今年度はエントリー自体を見送った可能性が高いが、その理由は今のところ公表されていない。
【参加企業からの声】
参加しなかった企業もある一方で、ランクインした企業の経営者は概ね満足そうだ。
参加した企業の経営者に話を聞いたが、エントリーする目的はやはり「採用時の訴求ポイントの1つとするため」。
特に、ベンチャーでランクインした企業は経営者自らTwitterやFacebookでこぞってPRしている。
エントリーするとともに社内プロジェクトを立ち上げ、社内環境改善に取り組んでいるという企業も見受けられた。
「受賞したが、まだまだ上位に入れるよう改善したい」と語る企業もあったため、働きがいのある職場を作る上での良いキッカケになっているようだ。
このような企画に参加している企業の共通点は、「採用や定着率改善に積極的」という事に尽きる。
ただ広告費にお金を掛けるばかりではなく、従業員にとって魅力的な職場にしていこうという意識は素晴らしいものだ。
一方で求職者の目線から考えると、自分にとっての「働きがい」がその企業と一致しているかどうかについて注意してもらいたい。
働きがいがあるかどうかは結局のところ主観的なもので、このランキングはその主観を「従業員などへのアンケート」という形で定量評価している。つまり「主観の集合体への評価」なのだ。
そのことに注意した上で、情報源の1つとして参考にしていただきたい。