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羽生九段タイトル100期チャレンジを占う――第72期ALSOK杯王将戦挑戦者決定リーグ展望

古作登大阪商業大学アミューズメント産業研究所主任研究員
前人未到のタイトル獲得通算100期を目指す羽生善治九段(写真:Natsuki Sakai/アフロ)

 藤井聡太王将(20)=竜王・王位・叡王・棋聖への挑戦者を決める第72期ALSOK杯王将戦(スポーツニッポン新聞社・毎日新聞社主催)は9月19日、東京都渋谷区「将棋会館」で開幕局となる羽生善治九段(51)と服部慎一郎四段(23)の挑戦者決定リーグ1回戦が行われる。

 前人未到の「タイトル獲得通算100期」の期待がかかる羽生九段のデータを中心に挑戦権の行方を予想してみた。

難敵永瀬王座戦がカギか

<羽生九段とリーグ対戦相手の成績>(対戦順・名前の後の数字はリーグ順位)※各棋士のスケジュールにより対戦順が前後することあり

対服部四段(5)

0勝0敗

対永瀬拓矢王座(2)

4勝12敗

対渡辺明名人(1)

41勝38敗

対糸谷哲郎八段(5)

12勝11敗

対近藤誠也七段(4)

5勝1敗

対豊島将之九段(5)

19勝26敗

 強豪ぞろいのリーグメンバーで羽生九段の順位は3位。データが示すとおり2回戦で対戦する永瀬王座との対戦成績で大きく負け越しており、リーグ序盤のカギとなるだろう。

 他のタイトル経験者との対戦成績も拮抗しており、最終戦の相手豊島九段には負け越しと挑戦への道のりは険しい。

 データを見る限り挑戦権争いの主軸は前王将の渡辺名人とみる。羽生九段には負け越しているが、永瀬王座に19勝7敗、豊島九段に22勝15敗、糸谷八段に18勝6敗とそれぞれ大きく勝ち越しているのが好材料だ。

 羽生九段はリーグ序盤を連勝して勢いに乗ることができれば、通算100期チャレンジの可能性は高まるだろう。

復調著しい羽生九段。戦型は角換わりか相掛かりが本線

<羽生九段の最近10局>(未放映のテレビ対局を除く)

6月16日 順位戦B級1組

対山崎隆之八段 ○

6月30日 棋王戦コナミグループ杯本戦

対千葉幸生七段 ○

7月7日 順位戦B級1組

対佐々木勇気七段 ○

7月21日 叡王戦予選

対島朗九段 ○

7月24日 NHK杯

対横山泰明七段 ●

7月28日 順位戦B級1組

対久保利明九段 ●

7月30日 将棋日本シリーズ1回戦

対菅井竜也八段 ○

8月5日 棋王戦コナミグループ杯本戦

対佐藤康光九段 ○

9月8日 順位戦B級1組

対三浦弘行九段 ●

9月14日 棋王戦コナミグループ杯本戦

対広瀬章人八段 ○

<服部四段の最近10局>(未放映のテレビ対局を除く)

8月1日 NHK杯

対郷田真隆九段 ●

8月5日 新人王戦

対佐々木大地七段 ○

8月12日 順位戦C級2組

対安用寺孝功七段 ○

8月16日 竜王戦6組昇級者決定戦

対冨田誠也四段 ○

8月26日 ALSOK杯王将戦二次予選

対本田奎五段 ○

8月30日 加古川青流戦

対山本博志四段 ●

9月2日 新人王戦

対斎藤優希三段 ○

9月9日 順位戦C級2組

対森下卓九段 ○

9月13日 伊藤園お~いお茶杯王位戦予選

対稲葉陽八段 ○

9月16日 竜王戦6組昇級者決定戦

対渡辺和史五段 ○

 羽生九段リーグ初戦の相手となる服部四段とは初顔合わせのため最近の両者の調子を比較してみた。

 羽生九段は今年春の自己ワースト7連敗の「絶不調」から脱し、直近7勝3敗と復調著しい。8大タイトルの一つ棋王戦でもトップ棋士を連破しベスト4に進出している。

 服部四段も直近8勝2敗と好調を維持しており、調子の面ではほぼ互角といえよう。

 リーグはあらかじめ先後が決まっており、1回戦は羽生九段の先手。服部四段は後手番でも相手の得意を受けて立つタイプなので、最近の傾向からは相掛かりか角換わりに進む可能性が高いだろう。好調同士の対局は接戦が期待される。

大阪商業大学アミューズメント産業研究所主任研究員

1963年生まれ。東京都出身。早稲田大学教育学部教育学科教育心理学専修卒業。1982年大学生の時に日本将棋連盟新進棋士奨励会に1級で入会、同期に羽生善治、森内俊之ら。三段まで進み、退会後毎日コミュニケーションズ(現・マイナビ)に入社、1996年~2002年「週刊将棋」編集長。のち囲碁書籍編集長、ネット事業課長を経て退職。NHK・BS2「囲碁・将棋ウィークリー」司会(1996年~1998年)。2008年から大阪商業大学アミューズメント産業研究所で囲碁・将棋を中心とした頭脳スポーツ、遊戯史研究に従事。大阪商業大学公共学部助教(2018年~)。趣味は将棋、囲碁、テニス、ゴルフ、スキューバダイビング。

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