【コーヒーの歴史】アメリカで育ったコーヒー文化!―紅茶から転じた一杯が国民の心を掴むまで―
コーヒーがアメリカ大陸に初めて持ち込まれたのは、17世紀半ばのこととされております。
当初、コーヒーは贅沢品として扱われ、庶民の日常生活には程遠い飲み物でございました。
しかし、1683年頃にニューヨークがコーヒー豆の取引の拠点となり、ボストンやニューヨークではコーヒー・ハウスが次々と誕生したのです。
その後、アメリカ独立戦争を象徴するボストン茶会事件が起こり、茶への関心が薄れると、コーヒーが国民の生活に根付く兆しを見せ始めます。
19世紀初頭には、米英戦争による紅茶の供給不足が追い風となり、コーヒーの需要がさらに高まりました。
その後、輸入先であるハイチやブラジルからの大量供給によって価格が下がり、コーヒーは徐々に贅沢品から日常の飲み物へと移行していったのです。
1830年代までに、アメリカ国民1人あたりの年間消費量は約2.3キログラムに達するようになりましたが、品質面ではまだ課題が多く、輸送や保存の技術不足から豆の劣化が進み、不純物が混入することも少なくなかったのです。
技術革新が進むとともに状況は改善されました。
鉄道や蒸気船による鮮度保持、焙煎や包装技術の向上によって、コーヒーの市場価格が下がり、より広い層に普及する道が開かれたのです。
1870年代にはラテンアメリカからの大量供給も加わり、コーヒーは完全に大衆化したのでございます。
さらに、1920年に禁酒法が施行されると、酒の代用品としてコーヒーの需要が急増し、喫茶文化が社会に深く根を下ろすこととなりました。
こうしてアメリカにおけるコーヒーの旅路は、植民地時代の贅沢品から始まり、紆余曲折を経て国民的な飲み物へと成長していったのです。
その一杯には、歴史の転換点ごとに生まれた物語が幾重にも重なり合っているのでございます。
参考文献
マーク・ペンダーグラスト著、樋口幸子訳(2002)『コーヒーの歴史』河出書房新社