【コーヒーの歴史】コーヒーを淹れる技術の進化!―一杯の完成を求めた人々の挑戦―
コーヒーがヨーロッパに広まり、多くの人々に愛される中で、器具と技法の進化が急速に進みました。
当初はトルコ式のポットで煮出す方法が一般的でしたが、混じる滓を取り除くために麻袋を用いた煮出しが考案され、これが布ドリップへと発展したのです。
18世紀のフランスでは、ネル付きのドリップ・ポットが発明され、19世紀にはメリタ・ベンツ夫人によるペーパードリップの登場で、手軽に美味しいコーヒーが淹れられるようになりました。
一方、浸潰法や水蒸気を応用したエスプレッソ方式も登場し、フランスやイタリアでは独自の風味を追求する器具が生み出されたのです。
19世紀半ばには、自動焙煎機がアメリカで開発され、家庭での手間を軽減するために焙煎済みの豆が販売されるようになります。
真空パックやバルブによる鮮度保持の工夫も進み、コーヒーは一層身近な存在となったのです。
20世紀に入り、日本人科学者加藤サトリが世界初のインスタントコーヒーを発明しましたが、当初は大きな注目を集めませんでした。
それが第一次・第二次世界大戦で軍隊に採用されると、一躍普及が進み、戦後には家庭でも欠かせない手軽な飲み物となったのです。
一方で、ソ連ではインスタントコーヒーが特に好まれ、良質な豆の入手が難しい状況で主流となりました。
また、コーヒーの健康への影響を巡る議論も広がり、20世紀初頭にはカフェインを除去する技術がドイツで発明されました。
これにより脱カフェインの代用コーヒーが登場し、ポスタムなどが一部で支持を集めたのです。
コーヒー器具の発明と改良は、文化や技術の発展と密接に結びつき、一杯の完成度を高める努力の連続でございました。
人々の情熱が詰まったその一杯は、単なる飲み物を超え、歴史と創意の結晶なのでございます。
参考文献
マーク・ペンダーグラスト著、樋口幸子訳(2002)『コーヒーの歴史』河出書房新社