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「冷ややかと歓迎」2つの視線…“誤球”を隠した20歳韓国女子プロの早期ツアー復帰は容認すべきか?

金明昱スポーツライター
出場停止処分が軽減され今季ツアー出場可能となったユン・イナ(写真・KLPGA)

 2022年6月の「韓国女子オープン」で誤球を隠し続けてプレーしたことが後日になって発覚し、3年出場停止処分を受けていた20歳のユン・イナが、今季からツアーに復帰できるようになった。

 8日に行われた韓国女子プロゴルフ協会(KLPGA)の第1回理事会で、ユン・イナのツアー3年出場停止処分を1年6カ月に軽減することが決まったのだ。すでに「韓国女子オープン」主管の大韓ゴルフ協会(KGA)は昨年9月に処分期間を3年から1年6カ月に短縮することを決めていたが、KLPGAの判断が待たれていた。

 KLPGAは処分の短縮に踏み切った理由について、こう説明している。

「スポンサーをはじめとするゴルフ関係者とファン、すべての会員の立場と大韓ゴルフ協会の処分軽減などを考慮した」

 処分軽減の最も大きな理由は、ユン・イナの処分期間の行動が真摯だったこと。韓国スポーツ紙「エックススポーツ」は「KLPGAはユン・イナが懲戒の決定に従ったこと、懲戒後に50時間の社会奉仕活動を行ったこと、米ミニツアーで獲得した賞金を全額寄付したこと、協会の発展に貢献し、ほかの選手と一般人の模範となり最善を尽くすことを約束したこと、救済を求める訴えが3500件以上もあったことなどを考慮した」と伝えている。

 これでユン・イナは今季4月開催予定のKLPGAツアー国内開幕戦から出場が可能となった。3月に予定している海外開催のKLPGAツアー出場は、懲戒期間のため参加できない。

復帰戦はどこになるのか未定

 今回の処分軽減が決まったあと、ユン・イナはマネジメント会社を通じて、こうコメントを発表している。

「選手としてまた大会に出られる機会を作ってくださったKLPGAと大韓ゴルフ協会に感謝しています。これからも奉仕と自粛の時間を設け、先輩・後輩、同僚の選手たちには心から了解を求めます。これからは同じ過ちを繰り返さず、ゴルフの精神と規則にのっとり、正直で誠実にプレーします。心を開いてもらえるように最大限の努力を尽くしていきます。復帰を望み応援してくれるファンのみなさまには、再びフィールドに立つまで練習に邁進していきます。間違った行動で心配をおかけし、すべての方にもう一度、謝罪の言葉をおくります」

 そこで気になるのは、4月の韓国ツアー開幕戦に出るのかどうかだ。マネジメント事務所によると現状では、復帰初戦がどこになるのかは決めておらず、試合勘やコンディションが一定のレベルに戻るまでは練習を続ける意向だという。

 ユン・イナとしては、早期復帰の決定はうれしい反面、周囲の痛い視線がそう簡単に収まるとは思っていない部分もあるだろう。

反対した選手が非公式投票も?

 「MKスポーツ」は「ゴルフ精神の根幹を揺るがしたプレーで、騒動を起こしたユン・イナの早期復帰に冷ややかな視線を送る雰囲気があるのと同時に、女子プロゴルファーの新星のカムバックを歓迎する視線も存在する」と報じている。

 また、知人の韓国ゴルフ担当記者によれば「KLPGAツアーの選手たちが内部で非公式の投票を通して、反対の声をあげたという噂も上がったほど」で、かなり根深い問題というのが理解できる。

 ただ、これだけ賛否が分かれるのは、ユン・イナがまだ20歳と若く、ルックスと確かな実力を備えた将来有望な選手だからに他ならない。レギュラーツアー初参戦の22年はルーキーながら4月の韓国メジャーの「KLPGAチャンピオンシップ」で10位に入ると、6月は「ロッテオープン」6位、「BCカード・韓経レディースカップ」3位、7月の「メッコール・モナパークオープン with SBS Golf」2位と結果を残し、同月の「エバーコラーゲンクイーンズクラウン」で初日から最終日まで一度も首位を譲らず、通算20アンダーでツアー初優勝を手にした。

ユン・イナは日本ツアーを見たことがある?

 それに身長170センチと恵まれた体格から放たれるドライバーの平均飛距離は、22年当時でツアー1位の約263ヤードで、その豪快なプレーをまたじっくりと見てみたいというゴルフファンも多いのもうなずける。スター性を備えた選手であることは間違いないからだ。

 いずれにしても、ツアー復帰の道は開けた。あとはどの試合になるのかだが、冷たい視線を投げかけられる韓国に居づらいなら、「日本ツアー進出」の可能性も頭の中にあるかもしれない。

 余談だが、「ユン・イナは日本ツアーを直接見たことがある」と去年末に小耳に挟んだ。仮に彼女が日本ツアー挑戦となれば、日本のゴルフファンはどう受け止めるだろうか。

 個人的には早期復帰、特に本ツアー参戦なら大歓迎だ。誠実ながらも豪快なプレーでファンを楽しませ、結果が出れば、ユン・イナの“誤球騒動”のイメージもおのずと変化していくだろう。

スポーツライター

1977年7月27日生。大阪府出身の在日コリアン3世。朝鮮新報記者時代に社会、スポーツ、平壌での取材など幅広い分野で執筆。その後、編プロなどを経てフリーに。サッカー北朝鮮代表が2010年南アフリカW杯出場を決めたあと、代表チームと関係者を日本のメディアとして初めて平壌で取材することに成功し『Number』に寄稿。11年からは女子プロゴルフトーナメントの取材も開始し、日韓の女子プロと親交を深める。現在はJリーグ、ACL、代表戦と女子ゴルフを中心に週刊誌、専門誌、スポーツ専門サイトなど多媒体に執筆中。

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