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「外国人選手がNBAでやっていくことの難しさ」 ルーカス・ノゲイラ(ラプターズ)インタヴュー

杉浦大介スポーツライター
(写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ)

ルーカス・ノゲイラ(トロント・ラプターズ)

1992年7月26日生まれ、24歳

ブラジル、リオデジャネイロ州サンゴンサロ出身 ポジションはセンター

 ブラジル人だが、スペインでプロ選手としてスタートを切り、2013年1月にスペインのパスポートを取得。2013年6月の2013年のNBAドラフトでセルティックスに全体の16位で指名されると、その後にマーベリックス、ホークスにトレードされ、2014年7月にラプターズに交渉権が譲渡された。

 228cmのウィングスパンと身体能力が売りのビッグマン。3年目の2016~17シーズンは自己最多の57試合(6先発)に出場し、平均4.4得点、4.3リバウンド、1.6ブロック。主にベンチ登場ながらチーム最多の平均ブロックをマークするなど、守備的センターとして大きな成長を遂げた。

注・インタヴュー収録はブルックリンで2017年1月17日に行われたネッツ戦のゲーム前。この月のノゲイラは17試合で平均23.9分、6.1得点、5.4リバウンド、1.9ブロックと優れた成績を残していた。

Half Brazilian and half Spanish

ーースペイン出身のライターから、君は自分自身を「Half Brazilian and half Spanish(半分はブラジル人、もう半分はスペイン人)」と呼んでいると聴いたことがある。その理由は?

LN:僕はブラジル生まれだけど、スペインに7年も住んで、スペインでプロデヴューした。だからブラジル、スペインの両方のパスポートを持っている。おかげで自分がスペインの人間でもあるように感じているんだ。

ーーサッカー大国のブラジルで生まれながら、バスケットボールを選んだ理由は? 

LN:昔はサッカーもプレーしたよ。どんどん背が伸びたからもう真剣にはプレーしなくなったけど、今でもサッカー界に多くの友人がいるし、今後もプレーするのを完全に止めてしまうことはない。もちろんNBAのシーズン中は遠征も多いし、サッカーをする時間はなかなかないけど、今でもテレビではよく見ているよ。

ーー子供の頃に憧れたバスケットボールプレーヤーは?

LN:コービー(・ブライアント)だ。

ーーNBA3年目でプレー時間が大きく増え、数字的にもほぼすべてのカテゴリーで自己最高を記録している。向上の要因をどう分析している? 

LN:ラプターズでの過去2年は出場機会が少なかったけど、辛抱強く練習してきたのが身を結んでいるのだろう。去年の夏はこれまで以上に真剣にトレーニングしたんだ。チャンスがもらえる気がしていたから、それを逃したくなかった。コートで少しずつ力が出せるようになってきたから、今後は少しでもチームの勝利に貢献していけたらと思っているよ。

ーー禁酒したのが効果を発揮しているといった記事も見たけど、アルコールを止めた影響はどんな時に感じられる? 

LN:疲れを感じることがなくなった。今はいつでもエナジーに満ちているし、ケガもしなくなった。20、30、40分と長い時間をプレーしても平気だ。もちろん今後にまたケガはするんだろうけど、自分自身で感じられるエナジーがこれまでとの大きな違い。(禁酒という)正しい決断ができたと感じている。

ーー11月に初めての子供となる娘さんが生まれたこともモチベーションになっているのかな? 

LN:その通りだね。家族が一人増えて、僕はこれまで以上にハードに動かなければいけなくなった。彼女により良い未来を供給してあげたい。僕は娘より先にこの世からいなくなるわけだけど、彼女はこれからこの世界で多くのことを経験をしていく。幸福な日々を過ごさせてあげたいという気持ちがモチベーションになっているのは間違いない。

外国人選手にとっての難しさ

ーー今季中はリム周辺でのフィニッシュの確率が非常に高いことでも話題になった。 

LN:コート上では多くをこなさなければいけないけど、チーム内で自分に何が望まれているか、コーチ陣が僕に何をして欲しいと思っているかは分かっているつもりだ。僕の仕事はリム周辺で相手のシュートをブロックし、ロブをキャッチしてゴールに押し込むこと。そしてゴール周辺でディフェンスに励むこと。それらはチームにとって重要なことであり、僕が一生懸命に取り組んでいることでもある。

ーー先ほども話したスペイン人記者から、“スーパースターでない限り、NBAでやっていくのは簡単ではない“と君が話していたというのを聴いたことがある。その言葉の意味を説明してもらえるかな? 

LN:もともとスーパースター候補と目されていない選手は、頭角を表すために2倍、3倍、4倍もハードワークを続けなければいけない。僕は3年目にしてプレー時間を得られるようになったけど、ここに辿り着くまでは簡単ではなかった。一方、カレッジ時代からアメリカでビッグネームだった選手は、NBA入り後も1年目からすぐにプレータイムを得て、スターになってしまうんだ。

ーーもちろん結果を出さなければいけないのは同じだけど、チャンスを得るまでがより難しいということかな。

LN:そう、特に欧州から入団する選手にとっては簡単ではない。僕はスペインにいた時代から(クリスタプス・)ポルジンギス(ニックス)がどれだけ良い選手かは知っていたけど、アメリカでは知名度がなくて、最初は価値を疑われて、彼はコートで証明しなければいけなかった。

ーーポルジンギスは海外選手の中では比較的すぐに認められた選手だと思うけど、それでは君は彼がNBAでもこれだけやれることはデヴュー前から分かっていた?

LN:もちろんだ。スペインにいる人はみんな彼のポテンシャルに気づいていたはずだ。ただ、アメリカではそこまでの知名度はないし、信頼もないから、まず最初に力を示さなければいけない。NCAAトーナメントで活躍した選手たちのようにはいかない。それでもやっていくのは可能だけど、海外の選手は自分の名前を確立し、ローテーションに入るのがより大変なんだ。 

ーー君も3年目にして確実に前に進んだけど、今後、NBAで成し遂げたいことは?

LN:数字などで大きな目標を設定しているわけではない。可能な限り良い選手になりたい。第1に人間として、第2にプレーヤーとして、リスペクトされるようになりたい。人間、選手、チームメート、そのすべてで優れていたと記憶されれば幸福だろうね。そして、家族により良い生活を供給できれば、それが僕のレガシーになる。

スポーツライター

東京都出身。高校球児からアマボクサーを経て、フリーランスのスポーツライターに転身。現在はニューヨーク在住で、MLB、NBA、ボクシングを中心に精力的に取材活動を行う。『日本経済新聞』『スポーツニッポン』『スポーツナビ』『スポルティーバ』『Number』『スポーツ・コミュニケーションズ』『スラッガー』『ダンクシュート』『ボクシングマガジン』等の多数の媒体に記事、コラムを寄稿している

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