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ラグビー日本代表の山田章仁、2019年へ「大舞台に強い選手で」。【ラグビー旬な一問一答】

向風見也ラグビーライター
前回大会ではサモア代表戦での「忍者トライ」が話題に。(写真:ロイター/アフロ)

ラグビー日本代表の山田章仁が、5月11日、滋賀県内で共同取材に対応。2019年のワールドカップ日本大会の組み合わせについて「戦いやすい」と語った。

予選プールの組み合わせ抽選会は5月10日、京都迎賓館でおこなわれた。日本代表は4つある予選プールのうちグループAに入った。アイルランド代表、スコットランド代表、欧州予選1位チーム(ルーマニア代表などが濃厚)、欧州予選2位-オセアニア予選3位のプレーオフ勝者チームとの対戦が決まった。この組み合わせが決まる前から、日本代表は6月にルーマニア代表、アイルランド代表と国内でテストマッチをおこなう予定だった。

31歳の山田は2015年のワールドカップイングランド大会に出場し、過去2回優勝の南アフリカ代表を撃破し、サモア代表戦では貴重なトライをマーク。歴史的な3勝を挙げた。

その後の2016年度はスーパーラグビーの日本チームであるサンウルブズに参戦し、9トライを挙げた。慶應義塾大学時代から変幻自在とされるランニングスキルを持ち味とし、人気も博してきた。

今回の談話からは、万事を前向きに捉えるべきだという意志が垣間見える。

以下、共同取材時の一問一答の一部(編集箇所あり)。

――感想を。

「非常に楽しみ、です。はい!」

――抽選会はどのようにしてチェックしましたか。

「ツイッターで、生で動画を観ていました。前回の抽選会の時は、僕はあまりコミットできていない(代表定着前だった)。ですので、一概に比較できないのですけど。今回はこれだけの方に集まっていただいていますし、インターネットとかでも見ることが多い。非常に盛り上がってきているんじゃないかと思います」

――各チームへの印象は。

「僕のなかではヨーロッパ勢はすごく印象がいい。それは隠すことはなく。やりやすい相手かな、という気持ちはあります」

――「やりやすい」とは。

「僕も詳しく分析をしたこともないですけど、戦術的にも戦いやすい相手なんじゃないかなという思いは、個人的にはあります」

――フィジー代表のようなアンストラクチャー(形の乱れた状態)からの攻撃を標榜するチームよりも、ストラクチャー(形)から試合を組み立てるヨーロッパ諸国が相手なら…。

「選手としても、メンタル的にはいいと思います」

――どう勝ちますか。例えば、スペースにボールをたくさん動して…などのイメージは。

「そういうのは、いまのところはないですね。分析とかもしていないですし。これから監督、コーチが分析して、選手はその戦術に沿ってやり切るだけ。選手がいまの段階でそれを考えるのは、逆によくないかなという思いはあります」

――日本代表はスコットランド代表と2013年のヨーロッパ遠征、2015年のワールドカップ、2016年の国内テストマッチで対戦。山田選手はいずれも不出場でしたが。

「僕もワールドカップで非常にいい経験もできたので、次回、戦ったことのないスコットランド代表とやる機会があればいいな、とは思っていました」

――ワールドカップでのスコットランド代表戦は、当時どんな気持ちで観ていましたか。

「足、痛いなぁって(一同、笑い)。魚に刺された後だったので、さすがに走れないなと思って観ていました」

――現在、若手中心の日本代表の一員として合宿中です。今回の組み合わせへの他の選手の反応は。

「ポジティブな声が聞こえる。それはあまり、変に隠すことはないんじゃないかな、というのが僕の個人的な思いで。いい思いを持ち続けていくのがいいことかな、と思います」

――プレーオフでは、環太平洋のチームが勝ちあがる可能性もあります。

「そうですね。現段階で分かっているチームはヨーロッパ、ということで、それに対して戦いやすいかなという印象がありますね」

――サモア代表からはトライを奪うなど、個人的な相性はいい。

「(笑みを浮かべ)サモア代表が来たら、また頭を打たなきゃいけない(激しいタックルを放って脳震盪を起こしているので)。それもそれでどうかと思いますが、まぁ、決まっていないところはわからないので」

――サンウルブズの真壁伸弥選手はテレビに出演し、「4勝を」と宣言したようですが。

「今回の相手に関わらず、第1試合が大事というのが2015年に学んだ教訓。そこを勝って、それで残りのプール勝ちに行く…というのは自然かなと思います」

――日本代表の初戦は開幕戦になります。どことぶつかりたいですか。

「えーと、正直、あんまり相手を気にしていないんですけど、大きなステージが好きな僕としては、開幕戦で試合がしてみたいという気持ちはあります」

――組み合わせが決まって。

「前回の組み合わせ抽選会の時は、正直、僕があまりそこへコミットできてなかった。ただ、いまはこうして皆さんの前で話すことができていますし、ワールドカップが早い段階で自分の身体と頭のなかに入っている。いいスタートが切れていると思いますね」

――今回の組み合わせ決定を受け、6月のアイルランド代表戦の意味合いが変わりそうです。

「勝ちに行く。可能性をひとつも見せないで勝ちに行くということが大事だと思うので、弱みを見せずに、しっかりと自分たちが勝てるところを見せるべきだと、選手としては思います」

――先方は、同時期にあるヨーロッパ連合軍へ選手数名を派遣。ある意味、手の内を見せない状態です。

「そういうことはあまり感じないですね。アイルランド代表側から見ると、逆にそこで勢いを失ってしまうということがあるかもしれない。こちらがしっかり勝って、自然の流れの勢いを掴む、若い選手を連れてきたことを後悔させる…というか」

――日本代表のジェイミー・ジョセフヘッドコーチは「シニアレベルの選手はあと2年間戦えるのかを見極める」と話しています。

「もちろんいままでの経験も財産になっているので、それを活かすのに(2019年は)いいタイミングですし、周りがよく言う年齢や身体に関しては全く心配していない。うまくそこにピークを持っていけるように…。抽選会からワールドカップを意識しているという意味では、いいスタートが切れていると思います」

――身体のケアは入念。

「できることはしっかりとやっていきたい。後悔もしたくないので」

――どんな大会にしたいか。

「翌年のオリンピックは東京だけでおこなわれますけど、ワールドカップは日本全国でやる。そこに選手としてど真ん中にいて、日本という国を背負って、スポーツから元気にできるのは楽しみです。選手としても、大会の成功を願っています」

――あと2年間かけて、どんな選手になっていきたいですか。

「うーんと…。引き続き、というと大変恐縮ですけど、大きなステージに強い選手でいたいと思っています。これから迫ってくる大きなステージで、持てる力を100パーセント発揮して、どんどんアピールしたいと思いますね」

――ちなみに、これまでなぜ大舞台に強かったのでしょうか。

「何でですかね。やっぱり、プロになったきっかけも、自分のプレーを見ていただきたいからとか、ちびっこに夢を与えたいというものだったので…。大きなステージ、イコール、観客の皆さんが多いというところ。そこで皆さんにラグビーのプレーを見せて、ラグビー、スポーツの良さを伝えたいという思いが根本にある。その思いが(大舞台で)自然と出てくるのかな、と思います」

――そもそも大舞台を怖いと思わない。

「まったく思わないです」

――地元の圧力があるのでは、という声もあるが。

「まったくないですね。逆です。教えてくれたコーチとか、お世話になった人に身近に見せるチャンスですし。もちろんたくさんのメディアの方が毎試合、毎回、来られるとも思う。いい機会だと思っています」

代表デビューから2年ほど前、すでに「例えばオールブラックス(ニュージーランド代表)が100だったとして、僕が90だったとします。試合当日にそのオールブラックスの選手が緊張して89の力しか出せなかったとして、僕が持っている90を出せば、その日は僕が勝てるじゃないですか。そういうせめぎあいのところは意識しています」といった話をしていた。

ストレスフリーの状態で力を出し切る。そのために「戦いやすい」と宣言する。15分間の取材機会に、己の態度を示した。

ラグビーライター

1982年、富山県生まれ。成城大学文芸学部芸術学科卒。2006年に独立し、おもにラグビーのリポートやコラムを「ラグビーマガジン」「ラグビーリパブリック」「FRIDAY DIGITAL」などに寄稿。ラグビー技術本の構成やトークイベントの企画・司会もおこなう。著書に『ジャパンのために 日本ラグビー9人の肖像』(論創社)『サンウルブズの挑戦 スーパーラグビー――闘う狼たちの記録』(双葉社)。共著に『ラグビー・エクスプレス イングランド経由日本行き』(双葉社)など。

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