世界で4番目に月着陸に成功したインドの「チャンドラヤーン3号」、JAXAとインドの国際共同計画とは?
JAXAの月着陸機「SLIM」が日本初の月面着陸を成功させる約半年前の2023年8月、インドは世界で4番目の月面着陸を成功させました。
本記事では、そのチャンドラヤーン3号のミッション内容と、将来のインドとJAXAによる国際共同プロジェクト「LUPEX」まで詳しく解説していきます。
月着陸機チャンドラヤーン1,2号を詳しく知りたい方はこちらの記事で
■インド初の月着陸に挑む「チャンドラヤーン3号」
チャンドラヤーン3号はインドの月探査ミッションです。目的は月の南極への安全な着陸と探査です。軌道航行モジュール、着陸モジュール、月面探査車で構成されており、全ての重さの合計は約4トンです。ちなみに、チャンドラヤーンとは「月の乗り物」を意味しています。
チャンドラヤーン3号は、2023年7月14日にインドのサティシュ・ダワン宇宙センターからLVM3ロケットにより打ち上げられました。
ロケットでの打ち上げ後、まずは軌道航行モジュールの出番となります。地球周回軌道に投入された機体は、軌道航行モジュールにより月の周回軌道へ投入されます。ちなみにこの軌道航行モジュールには、地球によって反射された光を収集するための「SHAPE」と呼ばれる地球偏光分光測定装置が搭載されています。この観測データは、地球と同じような特徴を持つ他の惑星を探索する際に活用されるとのことです。
軌道の航行は順調に進み、8月5日は月周回軌道への投入にも成功します。月の70km上空から撮影された画像には、古代の惑星衝突によって月の裏側にできた巨大な黒点などの地形を捉えました。
そして、2023年8月23日、ヴィクラムと名付けられた1.75トンの着陸モジュールが切り離され、遂に月着陸に挑みました。ちなみに、ヴィクラムとは、インド宇宙工学の父と呼ばれる物理学者でインド宇宙機関ISROの初代所長、ヴィクラム・サラバイに由来しています。
チャンドラヤーン2号の失敗を受け、3号では障害物の回避機能やエンジン構成に改良を追加。そして、より頑丈な脚と大きな太陽電池パネルを持ち、より多くの燃料を搭載しているとのことです。
■「チャンドラヤーン3号」月面着陸に成功!
そして、月面着陸は無事に成功!インド宇宙研究機関ISROの関係者は歓喜の渦に包まれました。今回のミッションが成功したことで、インドは、アメリカ、ソ連、中国に続き、4か国目に月着陸を成功させた国となりました。さらに月南極付近への着陸はこのミッションが史上初めてとなります。
そして、チャンドラヤーン3号の月表面探査が開始されます。着陸モジュールには、月で発生する地震の計測装置や、月の温度をより詳細に測定するセンサーなどが搭載されており、初めてとなる南極での環境分析が行われました。
続いて、プラギャンと呼ばれる月面探査車の分離にも成功し、詳細な月の探査を行いました。プラギャンの重さは約26kg、6個の車輪で月面の表面を走行します。さらに、X線分光器や、レーザー分光器により月組成の化学分析を行います。ちなみに、プラギャンとは知恵や英知という意味が込められています。
チャンドラヤーン2号の失敗のリベンジができ本当に良かったですね。
■次の月着陸計画は、日本と国際共同ミッション!
そして、チャンドラヤーン3号の次の月着陸ミッションもすでに計画が始まっています。それはなんと、日本との国際協力ミッションなのです。その名も、氷資源探査プロジェクト「LUPEX」です。LUPEXの目的は、月の南極に眠る氷を見つけることです。
そしてこのLUPEX、日本とインドとの間で役割が分かれています。まず、地球からの出発は日本の新型ロケット「H3」で打ち上げを行います。その中にはインドが開発する月着陸機が搭載されており、月の南極付近のクレータへの着陸に挑戦します。そして、着陸機の中からJAXAが開発した月面探査車が出てきて、氷を探索する計画です。LUPEXは氷の存在確率が高い「シャクルトン・クレータ」付近でドリルによる掘削探査を行います。
果たしてH3ロケットの開発はLUPEXの打ち上げまでに間に合うのか、こちらも要注目です。
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