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1日1本だけ運行、大阪―鳥取間を約4時間半で結ぶ「はまかぜ号」 乗り通したら車販も自販機もなかった!

鉄道乗蔵鉄道ライター
現在のキハ189系は2010年から運行を開始した。3両編成だ(筆者撮影)

 大阪から鳥取に向かう場合、特急スーパーはくと号を利用するのが一般的なルートであるが、1日1本だけ大阪駅から播但線を経由して鳥取駅に向かう特急はまかぜ号という列車がある。特急スーパーはくと号の場合は、大阪―鳥取間を智頭急行線経由で約2時間半で結び、乗車券・特急券の通常価格は7,520円。これに対して特急はまかぜ号は大阪―鳥取間を播但線経由で約4時間20分で結び、乗車券・特急券の通常価格は7,460円だ。

 そもそも今回、筆者が特急はまかぜ号に大阪―鳥取間の全区間で乗車しようとしたのは、大阪在住の友人からの話がきっかけだった。この友人から「通勤途中に毎日、エンジン音を響かせて普通列車を追い抜いていく赤い帯の列車があるが、あれは何だ?」とラインともらったので、「播但線経由で鳥取駅に向かう特急はまかぜ号という列車だ」と答えたところ、一度乗ってみたいという話となった。せっかくなので空いている9月の平日がよいということで、友人はわざわざこの日のために有休をとって乗車しようということになった。

この日は閑散期のため特急料金が通常よりも200円安い。乗車券は、はまかぜ号で播但線を乗り通す場合は福知山線経由の運賃で計算される特例のため4510円となる(筆者撮影)
この日は閑散期のため特急料金が通常よりも200円安い。乗車券は、はまかぜ号で播但線を乗り通す場合は福知山線経由の運賃で計算される特例のため4510円となる(筆者撮影)

朝7時台に1本だけ運行される鳥取行「特急はまかぜ1号」

 大阪発の特急はまかぜ号は、1日3本が設定されているが、鳥取駅まで運行されるのは朝7時48分に発車するはまかぜ1号のみで、12時23分に発車するはまかぜ3号は香住行、18時4分に発車するはまかぜ5号は豊岡行となっている。なお、多客期には、大阪9時38分発浜坂行の特急かにカニはまかぜ号が設定されるほか、はまかぜ3号が香住―浜坂間で延長運転されることがある。

 はまかぜ1号が大阪駅を発車する10分前の7時38分には鳥取・倉吉行の特急スーパーはくと1号があり、こちらに乗ると鳥取駅には10時12分に到着するが、はまかぜ1号ではそれよりも約2時間遅い12時7分に鳥取駅に到着する。こうしたことから、特急はまかぜ号にはどのような乗客が乗っているのか興味深い。

はまかぜ号には車内販売も自動販売機もない!

 はまかぜ1号は、特急スーパーはくと1号と同じ3番ホームから発車する。筆者が大阪駅3番ホームへと向かったのは7時30分ころであったが、7時35分になり京都発のスーパーはくと1号が入線し3分間停車し7時38分に発車。その後、間もなくして、特急はまかぜ1号がホームへと入線。窓側席をほぼ埋める程度の乗客を乗せ、豪快なエンジン音を響かせて大阪駅を発車。筆者のテンションも上がる。

 車内放送では、はまかぜ号には車内販売も自動販売機もないことが告げられるが、この列車に手ぶらで乗ってしまうと、特に鳥取駅まで通しで乗車する場合には4時間半近くにわたって、飲み物も食べ物も手に入らないという状況になるので、事前に大阪駅の売店で何かを購入して乗車することをお勧めしたい。筆者はペットボトルのお茶とおにぎりを購入して乗車した。なお、コンセントについては最前列の座席のみの設置でフリーWi-Fiの設備はないことから、車内でパソコン作業をするのにはやや難がある仕様だが、座席の乗り心地はよく長時間乗車しても快適だ。

 列車は、大阪駅を発車すると東海道本線を西に向かい三ノ宮、神戸と停車。その後、山陽本線に入り明石、姫路で乗客を乗せ、車内の座席は6~7割程度が埋まった。そして、姫路駅では進行方向が変わり、播但線へと入った。

車内の様子(筆者撮影)
車内の様子(筆者撮影)

非電化区間のある播但線ではディーゼル特急の本領発揮

 播但線は、山陽本線の姫路駅と山陰本線の和田山駅の65.5kmを結ぶ路線で、全線が開業したのは明治時代末期の1906(明治39)年だ。現在は寺前駅までの29.6kmは電化されているが、その先の和田山駅までは明治時代に建設された狭小なトンネルがあり電化のためにはトンネル等の大規模な改修が必要になることから現在も非電化区間のまま取り残されており、ディーゼル特急のはまかぜ号の本領が発揮できる区間となっている。

 なお、姫路駅から鳥取駅までは特急スーパーはくと号であれば1時間半程度であるのに対して、特急はまかぜ号では3時間以上かかるのでここからが長丁場だ。播但線からは単線区間となり福崎、寺前に停車。寺前までの電化区間では時折、途中の駅でワインレッドの103系電車とすれ違った。そして険しい山道となる非電化区間に入ると生野、そして「天空の城・竹田城」最寄りの竹田駅に停車。播但線を1時間11分で走り抜け列車は和田山駅に到着した。和田山駅では若干の停車時間があり新大阪行の特急こうのとり号と離合した。和田山駅からは山陰本線へと入り、城崎温泉駅までは再び電化区間となる。

播但線の電化区間で活躍するワインレッドの103系電車(筆者撮影)
播但線の電化区間で活躍するワインレッドの103系電車(筆者撮影)

豊岡駅で多くの乗客が下車

 和田山駅の次に停車した豊岡駅では、およそ半数の乗客が列車を降りた。兵庫県豊岡市は県北部の但馬地方の中心都市でおよそ7.4万人の人口を擁することから、ビジネス利用も多いようだ。特に、明石駅や姫路駅から乗車してきた乗客の大半が豊岡駅で降りて行った。今回、筆者と行動を共にしている大阪在住の友人も半年ほど前に出張で豊岡市を訪れたそうで、「往路は新大阪駅から特急こうのとり号、復路は京都駅まで特急きのさき号を利用した」と話していた。

 豊岡駅から城崎温泉駅までの間は、車窓には谷間いっぱいに広がる円山川の風景が広がる。川幅が広くなっているのは日本海にそそぐ河口が近いためだ。城崎温泉駅からは再び非電化区間となり日本海に近いルートを走るが、ここから鳥取方面への海岸線が断崖絶壁が続くため、線路は内陸部の山がちな部分に敷設されている。そして、松葉ガニの産地で有名な香住駅を過ぎてしばらくすると2010年に鋼製トレッスル橋からコンクリート橋へと架け替えられた余部鉄橋を通過。鳥取駅には定刻通りの12時7分に到着した。筆者が乗車した1号車では、大阪から通しで乗車した乗客は旅行者風の10名弱だった。

2010年にかけ替えられた余部鉄橋からの車窓風景(筆者撮影)
2010年にかけ替えられた余部鉄橋からの車窓風景(筆者撮影)

鳥取駅ではそのまま折り返し

 鳥取駅に到着した特急はまかぜ1号は、到着したホームで車内整備を行い、そのまま鳥取駅を12時56分に発車する大阪行の特急はまかぜ4号となる。この列車が大阪駅へと到着するのは17時5分となる。

鳥取駅は高架駅だ(筆者撮影)
鳥取駅は高架駅だ(筆者撮影)

(了)

鉄道ライター

鉄道に乗りすぎて頭の中が時刻表になりました。日本の鉄道全路線の乗りつぶしに挑戦中です。学生時代はお金がなかったので青春18きっぷで日本列島縦断修行をしてましたが、社会人になってからは新幹線で日本列島縦断修行ができるようになりました。

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