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Amazon、物流の自動化に取り組む。自立走行やドローン配送

小久保重信ニューズフロントLLPパートナー
物流施設内をロボットで自動化するAmazon(写真:ロイター/アフロ)

米アマゾン・ドットコムが自動運転車関連の特許を取得したことが分かったと、海外メディアが報じ、話題になっている。

複数の自動運転車を制御するシステム

米特許商標局(USPTO)が公開した書類によると、特許のタイトルは「Lane assignments for autonomous vehicles(自律走行車のための車線指定)。

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米国特許番号は「9,547,986」で、「アマゾン・テクノロジーズ」という子会社が2015年11月19日に申請し、今年1月17日に成立している。

この特許を大まかに言うと、幹線道路網において、複数の自動運転車を制御するためのシステムに関する技術。

幹線道路などには、時間帯によって交通量の多い側の車線を増やす「リバーシブルレーン(可逆車線)」があるが、アマゾンの特許では、自動運転車がこうした車線を安全に走行するための仕組みを提案している。

自動運転車がリバーシブルレーンのある道路に近づくと、集中型の道路管理システムが車両と通信し、適切な車線を走行するよう指示を出す。システムはこうした通信を複数の車両との間で同時に行い、広範囲にわたり各車両の動きを調整するのだという。

書類ではその背景について、次ぎのように説明している。

「自律走行車は効率的な道路交通網の利用を促進する。リバーシブルレーンも交通の流れを効率的なものにする。しかし自律走行車がリバーシブルレーンのある道路に近づいたとき、車両はその情報を得られず、どの車線が適切な進入ルートであるかといった判断ができない恐れがある」

アマゾンのシステムでは、自動運転車がリバーシブルレーンに遭遇する際に生じるこうした問題を解決するのだという。

物流事業を強化

今回公開された書類にはアマゾンの自動運転車に関する事業など、今後の計画や事業戦略については書かれていない。

しかしこの話題について報じている英ガーディアンの記事によると、アマゾンは以前から運転者の操作を手助けしたり、人間のドライバーに代わって運転したりする技術について研究している。

そして、自立走行する乗用車やトラックは将来、同社物流事業の重要な役割を担うのではないかと同紙は伝えている。

アマゾンはすでに自社ブランドの輸送トラックを大規模導入するなどし、物流システムの強化を図っている。先頃は輸送トラックを配車するためのモバイルアプリを開発しているとも伝えられた。

ドローン配送の部門で自動運転システムも開発

なお米リコード(recode)の記事によると、アマゾンはドローン(小型無人機)で商品を配送するプロジェクト「Prime Air」の開発部門で、商品配送を目的とした自動運転車を研究開発している。

例えば先頃、上空を飛ぶ飛行船を倉庫として利用し、ドローンで地上に商品を配達するという構想に関する特許をアマゾンが取得したと報じられ、話題になったが、その特許取得企業は前述のアマゾン・テクノロジーズだ。

(参考・関連記事)「アマゾン、米国でドローン配送の実験開始か

またリコードによると、今回の自動運転車システムに関する特許書類に記載されている発明者のジム・カーランダーという人物は、ドローンプロジェクトの技術顧問を務めている。

JBpress:2017年1月20日号に掲載/原題「アマゾン、自動運転車関連の特許を取得 将来を見据えた物流事業の強化が目的か」)

ニューズフロントLLPパートナー

同時通訳者・翻訳者を経て1998年に日経BP社のウェブサイトで海外IT記事を執筆。2000年に株式会社ニューズフロント(現ニューズフロントLLP)を共同設立し、海外ニュース速報事業を統括。現在は同LLPパートナーとして活動し、日経クロステックの「US NEWSの裏を読む」やJBpress『IT最前線』で解説記事執筆中。連載にダイヤモンド社DCS『月刊アマゾン』もある。19〜20年には日経ビジネス電子版「シリコンバレー支局ダイジェスト」を担当。22年後半から、日経テックフォーサイトで学術機関の研究成果記事を担当。書籍は『ITビッグ4の描く未来』(日経BP社刊)など。

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