中東イエメン まだ終わらぬアラビアンサイクロンの脅威
砂漠の国が、前代未聞の洪水に見舞われています。
今週火曜(3日)、イエメン史上最強のサイクロン・チャパラが上陸し、被害をもたらしましたが、よりにもよって、来週も同じ場所に別の嵐が上陸する模様です。さらに、被害が拡大するおそれがあります。
サイクロン・チャパラによる被害
イエメンは砂漠の国。これまで強いサイクロンが上陸したことは、記録が残っている1979年以降ありませんでした。しかし、先日アラビア海における史上2番目に強いサイクロンが上陸したのです。
イエメン全土では大規模な洪水が起こり、110万人が被害を受け、少なくとも11人の死亡が伝えられています。
イエメン本土では、48時間のうちに7年分の年間降水量に匹敵する610ミリの雨が降りました。ただですら通常雨の降らない砂漠の地に、突如として豪雨が降ったことから、その惨状たるや散々なものとなりました。しかも街の35%が失業者という貧しい場所であったことも被害を大きくした原因と考えられます。
今もなお多くの人々が救助を必要としていますが、被災地が紛争地帯であること、またアルカイダの支配の勢力下であることから、救助活動は困難を極めていると国連人道問題調整事務所(OCHA)は伝えています。また、国連食糧農業機関(FAO)によると、大量の雨により生態系にも影響を及ぼし、「サバクバッタ」と言われる害虫が大量発生し、農作物に被害をもたらす可能性があるといいます。
新たなサイクロンの脅威
チャパラは上陸後、砂漠の乾燥した空気を吸って急速に弱まり消滅しました。しかし、イエメンにおけるサイクロンの脅威は、まだ終わりでないのです。
昨日(5日)新しいサイクロン・メグがアラビア海に発生しました。アラビア海の海面温度は今年9月いまだかつてない高温となりましたが、11月に入っても平年よりも高い状態が続いています。今後も発達しながら西に進み、ソコトラ島に再び接近、その後弱まるものの来週火曜日(10日)にはイエメン本土に上陸する見通しです。この嵐により予想される雨量は最大で400ミリ。もうすでに降った量を考えると、今後さらに深刻な被害が発生する可能性が高いのです。
増え続けるアラビアンサイクロンと異常高温の可能性
ある研究によると、気候変動によってアラビア海にできるサイクロンの数は今世紀末までに、46%も増加する可能性があるといいます。また、温暖化が続くと、サイクロンの水蒸気量が増えて、より大量の雨を降らせるおそれがあります。
イエメンのように、砂漠が広がる灼熱の地は、元からからっからに干からびていて、雨を地面に貯めることができません。一度サイクロンが来れば、大規模な災害が発生することは必至です。加えて、中東の一部では2100年までに60℃を超えるような高温になるとする研究結果も発表されています。
今後温暖化によって、アラビア海沿岸ではサイクロンと高温という、新たな問題に直面していかなければならないのです。
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