ペルシャ湾岸は生存不可能に 今世紀末までに気温60℃に達する恐れも
これは科学誌ネイチャーに発表された、スイスの大気気候研究所クリストファー・シェール氏による論文の一節です。このまま温暖化が進むとすると、2100年までには、中東の一部の地域で人が住めなくなるかもしれないと言うのです。
これに関連し、アメリカの研究者は、クウェート市やアラブ首長国連邦のアル・アインなどで、気温が60℃に達する恐れがあると予測しています。ちなみにこれまでの最高気温の世界記録は、1913年に米カリフォルニア州・デスバレー(死の谷を意味する)で観測された、56.7℃です。
ペルシャ湾岸の地域では高い湿度も加わって、体感温度が75℃まで上昇する可能性も指摘されています。日本人に人気のドバイやアブダビも、観光どころの騒ぎではなくなるかもしれません。
一体、体感温度70度台とはどんな環境でしょうか。
サウジアラビアに住んでいた男性はこう言います。「誰かにホットタオルを強く押し付けられているような暑さ」、そして「汗はすぐ出てきて、メガネをかけるとレンズがすぐ曇る」と。
温暖化で得する国もある
しかし、物事には表と裏があるものです。温暖化は、中東など元々暑い場所にとってはいいことはなさそうですが、寒すぎて人が住むのに不適だったところには、好影響をもたらす可能性があります。
例えば極寒の地・グリーンランドでは、気温の上昇に伴い農業生産が増加しています。実際、2008年から2012年の間にジャガイモの収穫量が2倍に増えたと報告されています。
またアイスランドでは、氷河が溶け続けていることにより、鉱物資源の開発が加速しています。さらにロシアのシベリアでは、永久凍土が溶け、ダイヤモンドや金などの採掘も盛んになっているようです。
その他にも北極圏の氷が解けて北海航路ができ、貿易が盛んになる、渡航が容易になることで、観光産業が盛んになることなどが期待されています。もちろんこうした国々もいいことばかりではないでしょうが、少なからず、こうした温暖化の恩恵を受けているようです。
それでは、日本ではどうでしょう。
ゲリラ豪雨が多発して洪水リスクが高まる、西日本などでは米の収穫量が減少したりするなど、いくつもの問題が懸念されています。しかし一方で、特に北日本では農業の栽培期間が長くなる、以前作れなかった作物が作られるようになるなど、好影響も考えられます。
IPCCも温暖化の進行は不可避のところまで来ていると指摘しています。今後私たちは、来るべき気候の変化に順応する道を探る必要があるのです。