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メジャーリーグ初の快挙をやってのけたのは、ほとんど無名の3人だった

宇根夏樹ベースボール・ライター
ジェレミー・ヘイゼルメイカー(カーディナルス)Apr 8, 2016(写真:USA TODAY Sports/アフロ)

4月8日、セントルイス・カーディナルスの3人が、メジャーリーグ初の快挙をやってのけた。代打として起用された、ジェレミー・ヘイゼルメイカー、アレッドメス・ディアス、グレッグ・ガルシアが、いずれもホームランを放った。これまで、同じチームの代打3人が本塁打を記録した試合は一度もなかった。3本ともソロ本塁打で、ヘイゼルメイカーは7回表に同点弾、ディアスは8回表に逆転弾、ガルシアは9回表にリードを広げるアーチを叩き込んだ。

昨シーズン、カーディナルスの代打本塁打は4本だった(最多はフィラデルフィア・フィリーズの10本)。彼らは今シーズン、強打の代打トリオとして、カーディナルスの切り札になるのだろうか。いや、それは考えにくい。前日までは通算69試合で3本塁打。これは、3人を合計した数字だ。ガルシアは2014年にメジャーデビューしているが、ヘイゼルメイカーとディアスは今シーズンがメジャーリーグ1年目だ。2人は故障者に代わってロースターに入った。また、3人ともロング・ヒッターではない。ヘイゼルメイカーはボストン・レッドソックス傘下のAAとAAAでプレーした2012年に計19本塁打を放っているが、他の2人にマイナーリーグで15本塁打以上を記録したシーズンはない。ディアスはこの代打本塁打が、メジャーリーグ初アーチとなった。

3人が再び揃って代打として起用される試合さえ、なかなか訪れない可能性もある。ただ、球史に名前を刻んだ翌日も、彼らは試合に出場した。ヘイゼルメイカーは「2番・センター」、ディアスは「8番・遊撃」としてスタメン出場。ガルシアは8回裏から三塁を守った。この試合では、3人ともホームランは打たなかったが、四球による出塁が共通していた。ホームランのような華やかさはなくとも、彼らはこれからも地道な働きをする脇役として、チームに貢献しそうな予感がする。四球の他に、ヘイゼルメイカーはバント安打、盗塁、犠牲フライを記録し、ディアスは守備でエラーを犯したものの、シングルヒットとタイムリー三塁打を放った。

ベースボール・ライター

うねなつき/Natsuki Une。1968年生まれ。三重県出身。MLB(メジャーリーグ・ベースボール)専門誌『スラッガー』元編集長。現在はフリーランスのライター。著書『MLB人類学――名言・迷言・妄言集』(彩流社)。

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