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誤解されない、わかりやすい伝え方・話し方「ホールパート法」

横山信弘経営コラムニスト

何らかの問題を解決したい、目標を達成させたいといった、論理コミュニケーションをする場合、相手にわかりやすく「論点」が伝わる話し方をしなければなりません。雑談ならともかく、相手に誤解されると手戻りが多くなり「会話効率」が著しく悪くなるからです。

「論点」は、話の「幹」だと捉えましょう。話の中心を構成する「幹」があり、「枝」そして「葉」があると、頭の中でイメージするのです。そしてその「幹」を一番はじめに伝え、その後に、「枝」、そして「葉」の順番に話してみるのです。まとめると以下の3点となります。

■ 一番伝えたい話の「論点」を簡潔に話す (論点=幹)

■ 二番目に、話の「幹」を補足する「枝」をすべて話す

■ 三番目に、話の「枝」を補足する「葉」を個別に話す

この話し方を「ホールパート法」と呼びます。ホールパート法とは、最初に話の全体像(WHOLE)を相手に伝え、それから話の部分(PART)を説明する話し方。相手の「頭」を整理させるうえで、とても簡単で効果的なコミュニケーション技術です。よく「結果から話す」「結論から伝える」と言いますよね。雑談などの表面コミュニケーションであれば、結論を最後まで話さずに引っ張るのもいいですが、話を噛み合わせて前へ進めるための論理コミュニケーションをする場合は、誤解を避けるためにも、できる限りやめたほうがいいでしょう。

次の会話文を読んでみてください。

上司:「先日、社長と話をしていたら、今ものすごく危機感を覚えているという話をされていた。今年、7人の新入社員が入ってきたじゃないか。何だろうな、仕事中にお喋りが多いというか、無駄な仕事をしていることが多く、しかも長い時間、残業している子もけっこういるというじゃないか。残業代だってバカにならないんだから、もう少しコスト意識を持ってほしいんだよ。それに何と言っても――」

部下:「社長は残業代を支払いたくないので、とにかく早く帰れと言いたいわけですか?」

上司:「そうじゃないよ、もっとコスト意識を持てって話だ。他にも出張旅費とか、通信費とか……」

部下:「仕事中のお喋りだって、必要なときもありますよ。それに、ベテラン社員のほうが残業が多いじゃないですか。まず改善すべきは、そっちのほうでしょう」

上司:「他にもあるんだ。出張旅費とか通信とか……」

部下:「出張や通信にかかるコストだったら、なおさら新入社員は少ないでしょう。社長はなぜか今年入社した7人を毛嫌いしてる気がします」

上司:「おいおい、そうじゃないって」

部下:「新入社員だって日々、一所懸命がんばってるんですよ。それなのに残業代や出張費をケチるなんて、社長はちょっと理不尽じゃないですか? 業績が悪く、利益を出したいのはわかりますが、それは経営陣の責任です。このままだとわが社はブラック企業だと思われてしまう」

上司:「違うって、何を言ってるんだ……」

もしもこの上司が、話の「幹」「枝」「葉」を意識しながらホールパート法を使って話していたなら、相手は誤解せずに受け止めることができたでしょう。以下のように修正してはいかがでしょうか。

上司:「新入社員7人のコスト意識を高めてやってほしい。特に意識して欲しいのは3つのコストだ。1つ目は残業。2つ目は出張旅費。3つ目は通信費だ。1つ目の残業についてだが、7人の仕事量と時間外労働のグラフを比べると、3年目以降の社員と比べて半分以下の作業効率となっている。10年目以降のベテラン社員と比べると3分の1以下だ。いくら新入社員とはいえ、仕事の効率が悪すぎる。2つ目の出張旅費だが、必要のない打合せのためだけに出張に出かけている例が7ヶ月で16事例もある。誰が指示しているのか突き止めて見直すように。3つ目の通信費だが、会社支給のスマホで、ゲームや占いなどの有料アプリをダウンロードしている新入社員が5名いる。すぐにやめさせてくれ。繰り返すが、新入社員7人のコスト意識を高めてほしい。いま引き締めておかないとズルズルいってしまう可能性があるからだ」

話の「幹」は「新入社員7人のコスト意識を高めてほしい」です。これを最初と、最後で繰り返しています。そして具体的なコストを指し示す「枝」の部分を「残業代」「出張費」「通信費」に分けています。「コスト意識を高めてほしい」だけでは、正しく伝わらないからです。さらに、「枝」を補強するうえで、数値的論拠を「葉」の部分で語っているため、非常に説得力のある話し方になっています。このように話したら、

「新入社員だって一所懸命がんばってるのに、残業代や出張費をケチるなんて社長は理不尽だ。わが社はブラック企業だと思われてしまう」

といった誤解はされません。簡潔に書くと、「枝」が3つあるケースでは、

1.「幹」

2.「枝1」「枝2」「枝3」

3.「枝1+葉1」「枝2+葉2」「枝3+葉3」

といったイメージで話すことです。数値的根拠や具体的な事例である「葉」を話し終ったあと、もう一度3つの「枝」を繰り返し、最後に話の論点である「幹」を言って締めくくるとベストです。つまり、こうなります。

1.「幹」

2.「枝1」「枝2」「枝3」

3.「枝1+葉1」「枝2+葉2」「枝3+葉3」

4.「枝1」「枝2」「枝3」

5.「幹」

話のキーワードを整理して繰り返し言うことで、「受け手」である相手の頭が整理されるのです。「早とちり」しそうな人、「話半分」に聞いて自己主張を展開したがる相手と話をする場合は、特に気を付けたほうがよいでしょう。「ホールパート法」を使うだけでなく、

●「枝」や「葉」の部分で必要となる数値的根拠を「資料」などで用意しておく

● 途中で相手にレスポンスされないよう、最後まで駆け抜けるように話す

と、誤解される可能性はきわめて低くなります。誤解しやすい相手と話を前に進める場合に、試してみてはいかがでしょうか。

経営コラムニスト

企業の現場に入り、目標を「絶対達成」させるコンサルタント。最低でも目標を達成させる「予材管理」の理論を体系的に整理し、仕組みを構築した考案者として知られる。12年間で1000回以上の関連セミナーや講演、書籍やコラムを通じ「予材管理」の普及に力を注いできた。NTTドコモ、ソフトバンク、サントリーなどの大企業から中小企業にいたるまで、200社以上を支援した実績を持つ。最大のメディアは「メルマガ草創花伝」。4万人超の企業経営者、管理者が購読する。「絶対達成マインドのつくり方」「絶対達成バイブル」など「絶対達成」シリーズの著者であり、著書の多くは、中国、韓国、台湾で翻訳版が発売されている。

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