最終戦勝利!掛布監督「田面で始まって田面で終わった2016年」を総括《阪神ファーム》
25日に行われたソフトバンク-阪神30回戦(タマスタ)、オリックス-広島29回戦(神戸第2)の2試合をもって、2016年のウエスタン・リーグは全日程を終了しました。昨年度から中止分の振り替え試合がなくなったため各チームの対戦回数はバラバラで、イースタンとの交流試合を合わせた総試合数もかなり違いますね。下記が今季のチーム成績です。
【2016年 ウエスタン】
試合数 (勝-敗-分) 勝率
1 ソ 120 (72-42-6 ) .632
2 中 111 (61-43-7 ) .587
3 神 118 (57-54-7 ) .514
4 広 109 (40-58-11).408
5 オ 116 (40-68-8 ) .370
阪神は4年連続の3位。昨年は同じ57勝でも53敗だったので、ことしは貯金が1つ少ないですね。また昨年はソフトバンクに対しいのみ負け越しでしたが、ことしはソフトバンクと中日戦が、ともに12勝17敗1分けと負け越し。一方、広島に6つ、オリックスに5つ、そしてイースタンの日本ハムに2つ勝ち越したので貯金3という結果となりました。
個人成績では、陽川選手が本塁打と打点の2冠、秋山投手が最多勝利のタイトルを獲得しています。受賞者は以下の通り。ほとんどがソフトバンクで、阪神が3部門、あとは中日が1部門でした。ことしは“タイ”が多いですね。
【ウエスタン表彰選手】
・首位打者 .305 塚田(ソ)
・最多本塁打 14 陽川(神)、カニザレス(ソ)
・最多打点 62 陽川(神)
・最多盗塁 23 釜元(ソ)
・最高出塁率 .424 塚田(ソ)
・最優秀防御率 1.49 山田(ソ)
・最多勝利 9 秋山(神)、山田、笠原(ソ)
・最多セーブ 11 祖父江(中)、嘉弥真(ソ)
・勝率1位 .900 山田(ソ)
松坂撃ちから始まった最終戦
では、25日にタマホームスタジアム筑後で行われたソフトバンク-阪神戦の詳細をご紹介します。この日のチケットは前売りで完売しており、今季最終戦というだけでも普段より多いマスコミ陣が、松坂大輔投手の先発とあってさらに多く熱気ムンムンです。まあ予定の2回が終わって松坂投手が降板すると、波が引くように減ったのは言うまでもありませんけど。
また試合後はグラウンドで約1時間、ファンの皆さんと選手が触れ合うイベントも開催。帰りの電車に乗り合わせた家族連れのお客様も、大満足といった様子でした。ソフトバンク公式サイトによれば、1年間で12万人近くの来場者数だったとか。1試合平均で約2000人というのはすごいですね!
試合は1回に松坂投手から2点を先取した阪神が、6回にも追加点を挙げ、田面投手をはじめピッチャー陣が計3安打で1失点。6対1で勝ち、掛布監督の1年目が終わっています。有終の美、やはり勝って締めくくるのはいいものですね。
《ウエスタン公式戦》9月25日
ソフトバンク-阪神 30回戦 (筑後)
阪神 200 003 001 = 6
ソフ 010 000 000 = 1
◆バッテリー
【阪神】○田面(2勝9敗)-岩田-榎田-桑原 / 鶴岡-岡崎(6回~)
【ソフ】●松坂(1勝4敗)(2回)-石川(2回)-伊藤祐(1回)-伊藤大(2/3回)-巽(1回1/3)-星野(1回)-島袋(1回) / 拓也-堀内(8回~)
◆本塁打 拓也3号ソロ(田面)
◆二塁打 緒方、今成。新井、カニザレス
◆打撃 (打-安-点/振-球/盗/失) 打率
1]指:柴田 (3-0-1 / 0-2 / 0 / 0) .265
2]左:緒方 (5-3-2 / 0-0 / 0 / 0) .291
3]三:今成 (5-2-1 / 0-0 / 0 / 0) .309
4]中:横田 (4-0-0 / 1-1 / 0 / 0) .261
5]一:新井 (4-1-0 / 1-0 / 0 / 0) .295
〃一:坂 (0-0-0 / 0-1 / 0 / 0) .174
6]右:伊藤隼 (4-0-0 / 2-1 / 0 / 0) .259
7]二:西田 (4-1-0 / 2-0 / 0 / 0) .238
〃二:森越 (0-0-0 / 0-1 / 0 / 0) .223
8]捕:鶴岡 (2-0-0 / 0-1 / 0 / 0) .273
〃捕:岡崎 (2-0-0 / 1-0 / 0 / 0) .129
9]遊:植田 (2-1-0 / 0-2 / 0 / 0) .168
◆投手 (安-振-球/失-自/防御率) 最速キロ
田面 5回 69球(3-5-1 / 1-1 / 4.30) 147
岩田 2回 24球(1-3-0 / 0-0 / 4.15) 145
榎田 1回 13球(0-2-0 / 0-0 / 1.10) 142
桑原 1回 15球(0-0-1 / 0-0 / 2.42) 147
<試合経過>
松坂にすべての視線が集まったような1回。1死から緒方がライトへ、続く今成はレフトへ、ともにフェンス直撃の二塁打で阪神が1点を先取!さらに横田の三ゴロでエラーがあり、もう1点入ります。その裏の田面は先頭の釜元に右前打されるも、すかさず鶴岡が盗塁阻止。栗原と上林は連続三振、3人で終了。
2回はカニザレスから三振を奪ったあと5番の拓也にレフトへソロを打たれて1点差。しかし、3回に2死から釜元の左前打と二盗を許しただけで、3安打5三振1失点で5回を終えています。
打線は3回は柴田の四球と今成の右前打、4回は鶴岡と植田の四死球などでチャンスを作るも追加点なし。6回に1死から伊藤隼の四球と西田の右前打、2死後に植田の四球で満塁として、柴田が押し出しの四球。続く緒方は左前へ2点タイムリー!これで5対1です。
リリーフ陣は6回(捕手も岡崎に交代)、岩田が真っすぐで2三振を奪うなど三者凡退。7回は先頭のカニザレスに左中間二塁打を浴びながらも、後続をピシャリと断って2イニングを無失点です。8回の榎田は代打・張本をチェンジアップで、代打・金子圭はカットボールで連続の空振り三振。三者凡退でした。
そして9回、ソフトバンク7人目の島袋に対して先頭の緒方が右前打。横田が四球を選び、暴投で1死二、三塁となります。次の坂も四球、これがまた暴投で緒方が生還。2死後に森越も四球を選んで満塁としたものの、ここは三者残塁で無得点。
その裏、桑原がマウンドに上がります。まず黒瀬をスライダーで捕邪飛に。上林は初球の真っすぐで一ゴロ。続くカニザレスはストレートの四球(敬遠気味)、最後は代打・斐紹をスライダーで左飛に打ち取って試合終了。ほとんど真っすぐで、スライダーが「3球くらい」だったそうです。
田面で始まって、田面で終わった今季
試合後のコメントは田面投手からご紹介します。本人の前に久保投手コーチが「田面はきょう新たにツーシームとシュートを投げたんですよ。ツーシームはフォークボールの変形かな。これだけのものを見せてくれたから、フェニックスでもどんどんイニングを重ねてもらう」と期待度アップという談話でした。
田面投手は「勝てたことがまずよかったです」と、今季2勝目にホッとしたような表情。とはいえ「ホームランは、ちょっと(ストライクを)取りにいってしまったとこで…。あれはダメですね。反省。もったいない投球でした。課題もいっぱいある」と、次へ気持ちは向かっています。
ツーシームとシュートを試したとか?「はい。ツーシームは、きのうの練習で久保コーチに言われて投げたんですけど、きょう使ってみて結構よかったので、いい感じで投げられました。精度を上げて、幅を広げたいですね」。きのう投げてみて、きょう試合に使ったということ?「そうですね」。フェニックスでさらに磨きをかけてもらいましょう。
なお帰り支度をしながら、掛布監督が「ことしは田面で始まって田面で終わったんだよ」と本人に。田面投手は笑って聞いていました。
9回に投げた桑原投手は、23日にサヨナラホームランを浴びたこともあって、カニザレス投手は敬遠気味の四球に見えました。もし1発を浴びたら陽川選手のタイトルも1つ減ったところ。でも8月からずっと無死点登板を続けてきて、最後の3連戦で1失点。悔しかったでしょうね。と思いきや本人は、抑えたことも、打たれたことも「ただの結果ですよ」と淡々。あくまでも普通で自然な右腕です。
松坂撃ちは「一生の思い出!」
野手陣では、まず緒方選手。1回に松坂投手からライトフェンス直撃の二塁打を放ち「一生の思い出になりました!バリ憧れの人やったんで。2イニングと聞いて、きのうの夜からワクワクしていた。初対戦です。1打席目から打てば残るじゃないですか。全力でいきました」と、試合後もまだ興奮冷めやらぬ様子。打ったのは143キロの真っすぐです。
この日も5打数3安打2打点の活躍で、最終打率は3連戦が始まる前より1厘上げて.291となっています。いい締めができたのでは?「そうですね。いい形でシーズンを終われてよかったです。掛布監督が、また27日から来年に向けて始まると言われたので、そのつもりで。アピールできるよう頑張ります!」
そうそう、緒方選手は9回の打席でカウント1-2からの4球目をファウルしたのですが、その打球が地面から真上に跳ねて、顔のところへ!ちょうど撮っていた写真を見直しても、顔に当たったような感じでした。あとで本人に確認したところ「顔には当たってないです(笑)」という返事。ヘルメットのつばに当たったそうで、そのヘルメットが飛んでいっていますからね。こんな光景は珍しいかも。緒方選手も「初めてです!」と言っていました。
植田選手にも聞いたところ「松坂さん、知ってますよ」とのこと。植田選手が生まれたのは、松坂投手が高校に入学した頃なんですよね。ちなみに対戦結果は二ゴロでした。なお8回に星野投手から左翼線へヒットを打ち、エラーで二塁まで進んでいます。「(カウントが)3-2やったんで、粘ってファオボールでもいいし、ファウルでいいと思っていました。うまくフェアに入ってくれた」
この3連戦で6安打6打点の今成
今成選手は、この3連戦ですべて2安打ずつ、しかも1戦目がソロと3点二塁打、2戦目と3戦目はタイムリー二塁打を1本ずつ放って、計14打数6安打6打点の活躍です。25日は1回にタイムリー二塁打、3回に右前打でした。「2連敗していたので、そういう意味でもいい先制点になったし、チームが勝ったのは大きい」と振り返りました。
「開かずにボールに入っていく感じでいっています。しっかりコースに対応できるようにしている。どの球種に対しても、打つ準備をするってことですね」というのが、好調の要因でしょうか。
また今成選手の“気遣い”や“盛り上げ”は、ファームでも同じ。23日には秋山投手が右手の指を気にしているのを見てとり、何度もマウンドへ行きました。山下トレーナーいわく「血豆が出来た、というより出来かかっていただけなので全然問題ないんですけど、今成が…」と苦笑い。そういえば今成選手がトレーナーを呼んでいたみたいですね。
そして25日の試合では1回、右前打した先頭・釜元選手の二盗を鶴岡選手が見事な送球で阻止!今成選手は守備位置の三塁から「つるさん!つるさん!」と何度も呼びかけ、本人が気づくと「ナイス!」とひとこと。鶴岡選手もマスク越しにニッコリ笑顔でした。なくてはならない存在ですね。ファームではもったいないくらい。来年は1軍で、チーム一番の気配りを見せてください。
監督総括「27日から2017年のスタート」
では最後に、掛布監督の今シーズン総括です。「田面は2勝目だね。田面で始まって田面で終わった2016年」と笑顔の第一声でした。「やっぱり個人のレベルを上げることがファームの野球では大切。その中で1軍に行った時、1軍の野球についていける戦い方もファームでは大切にしていかないといけない。勝つことにこだわったゲームもやり、育成として若い選手を試すゲームもやった」
“勝つこと”に関して「僕自身、5割はクリアしたいという気持ちがありました。1軍が厳しい戦いをしていて、ファームで負け癖がつくとモチベーションも上がらないのでね。『勝ちましょう!』と言ってくれるコーチも多い。いい経験して、1軍へ行った際にパフォーマンスを出せれば」という方針だったようです。そして「自分の中で手応えを感じている。反省、課題も感じている。選手も同じだと思いますよ」という感想でした。
公式戦は終わったものの、まだ練習試合やフェニックス・リーグ、さらに秋季キャンプと続きます。でも掛布監督は「あす休んで、27日から3試合やってフェニックス。2017年の野球がスタートしていく。ファームは(1軍の公式戦終了後のように)大きな休みがないので、あす一日は僕自身も切り替える時間を作って」と話しました。つまり、きのう25日で2016年は終了、27日からの練習試合やフェニックスは“新しいシーズン”の第一歩だということでしょう。
「2017年に向けて、個々のレベルアップを考えたフェニックスにしていかなければならない。ゲームの中でしかできない野球があるので、考えながら戦いたいと思いますね」
ここまでを振り返り「大勢のファンの前で野球をやることが大切。鳴尾浜にも多く来てくれた。ファンの力があってやれた野球だったと思う」と、掛布監督らしい感謝の言葉での締めくくりです。
フェニックスのテーマは“大胆かつ繊細に”
そして、ことしの『みやざきフェニックスリーグ』で重点を置くのはどういうところか?との問いに「1人1人の野球のレベルが違うので全体で言うのは難しいが、大胆にやる部分と丁寧にやる部分かな」と答えた掛布監督。
「ちょっと小さくなりがちなんでね。失敗を怖がらず大胆にやることが大切。ただ、そうするとボールの見極めとかが雑になってしまう。そのあたりのバランス。大胆さと繊細さのバランスを選手1人1人が感じてやってほしい。それができるのがフェニックス」
「秋季練習は若手が(安芸の秋季キャンプに行くため)僕の手から離れるけど、ファニックスは若手中心なので1試合1試合テーマを持って戦える。楽しみだし、きちっとした形をやる非常に大切な1ヶ月。きょうはバントを徹底するとか、きょうはエンドランを仕掛けるとか、毎試合ごとにコンセプトを変えてやらせる」
この3連戦中にも「江越、横田、植田あたりは全試合使いますよ。それぞれ目標設定は自己申告」という話がありました。掛布監督の新しいシーズンがもう始まります。