萩野公介がみせた道標
3年ぶりの記録更新
男子400m個人メドレーで3年ぶりの自己ベストを更新し、金メダルを獲得した萩野公介。予選・決勝を合わせ、終始、落ち着いたレース展開。完璧な泳ぎだった。
マイケル・フェルプスに憧れて
五輪で18個の金メダルを獲得しているマイケル・フェルプスに憧れ、複数種目で活躍することを目標に自己の可能性を広げてきた。
複数種目に挑戦することは、様々なレース展開に対応できる経験値や体力の向上、精神的な強さを手にできる一方、デメリットもある。蓄積された疲労から大本命の種目で勝ち切れず、大きな精神的ダメージを受けることも。
大舞台であればあるほど、苦い経験は心に大きく傷を作り、簡単には払拭できない。萩野は複数種目で活躍するも、五輪、世界選手権(長水路)での金メダル獲得経験がなかった。
覚悟の決断
五輪金メダル獲得に向け、彼が下した決断は実にシンプルだった。
過去、世界大会で7種目に出場したことのある彼の実力からすると、今大会はリレーを含めて4種目。他にも出場できる種目はあったはずだ。しかし「複数種目でのメダル獲得」ではなく、「金メダル獲得」にこだわった。これは逃げ場のない真っ向勝負の道。種目を絞る勇気と共に、彼の覚悟を感じた。この決断は複数種目に挑戦し続けてきたからこそみえた境地だ。
金メダルへの道標
五輪4大会連続出場を果たし、五輪で4つの金メダルを獲得してきた北島康介氏は、金メダル獲得へ向けて、常に「戦い方」を示し続けてくれた。萩野はその背中を見て歩みを進め、ついに、日本競泳チームに「戦い方」を示す、真のエースへと成長した。
萩野が示した金メダル獲得までの道標は、日本競泳チームの財産となり、受け継がれていくだろう。
五輪は、まだ始まったばかりだ。明日からは、200m自由形、200m個人メドレー、800mリレーに出場する。個人3冠も夢ではない。チームメイトは、彼の戦い方を目に焼き付けてほしい。