栗山英樹さんが教えてくれた「愛」
ワールド・ベールボール・クラッシック(WBC)は日本の優勝で幕を閉じた。日本、そして世界のスーパーヒーローの真剣勝負に何度も心が熱くなり、何度も涙が出た。スポーツは、人々の心をひとつにする素晴らしい瞬間を与えてくれる。国内では野球離れが進んでいるそうだが、WBCを観て、憧れる子ども達は多いと思う。
私は、日本の「栗山英樹監督」と、昔、ご縁をいただいたことがある。栗山さんがテレビのスポーツキャスターをされている時、現役選手だった私を取材して下さった。初対面だったが取材を受ける中で「気さくで物腰柔らかな優しい方」と印象を受けた。本当にアスリートだったのかな?と思う程、優しさが溢れている方だ。
このご縁から、私が現役引退後、4年間程、栗山さんの事務所にお世話になった。メディアに出演させてもらう機会を与えてもらった私は、右も左も分からない状況。そんな私に栗山さんが、取材者としての心構え、メディアに出演する上での覚悟や責任、さらには確定申告の仕方など・・・様々な角度でご指導いただいた。
メディア出演では正直、ツラいことも多くあった。「メダリストでもないのに、テレビで解説するなんて!」といった心ない声も。落ち込む私に、栗山さんは「五輪でメダルを獲らないとスポーツを解説したらいけないなんてルールはないよ。だったらメダリストより努力して、取材をして、理解をして、勉強をして、繋がりを作っていけばいい。誠実に。確実に。自信を持って胸を張って。あとは、愛だよ、愛。人と人の間に、愛を持つこと。愛を持って人と接することで信頼感が生まれるからね。愛情を持って取材をしたり、愛情を持ってVTRを作ったり、記事を書くことで、自分も成長できるんだよ。」とメールを送って下さったり、お話して下さったことがある。栗山さんはただ優しいだけでなく、覚悟と信念を持った強い人だ。私自身、メディアに出演する際の原点となる言葉で、今でも大切にしている。
今回のWBC、何度も何度も栗山さんの「愛」を感じる瞬間がたくさんあった。特に印象的だったのが、準決勝のメキシコ戦。不調で苦しんでいた村上宗隆選手への「最後はお前で勝つんだ。」の言葉。「愛」は信頼感を生み出す。栗山さんの「愛」が伝わり、信じる力が優勝へと導いたのだ。日本チームに集まった選手や指導者、関係者は、「栗山英樹監督」だからこそ完成した素晴らしいチームだった。