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ワールドカップ初戦を前に、田中史朗が「練習が見違えるほど変わった」と手応え【ラグビー旬な一問一答】

向風見也ラグビーライター
取材開始直後の田中。笑いじわを刻む。

9月18日にイングランドで開幕する4年に1度のラグビーワールドカップ第8回大会で、24年ぶりの勝利を目指す日本代表は、19日の南アフリカ代表戦(予選プールB初戦・ブライトン)に向け調整中。16日、滞在先のホテルでウェイトトレーニングに励んだのち、スクラムハーフの田中史朗が取材に応じた。

過去、49キャップ(国同士の真剣勝負への出場数)を取得してきた田中は、13年からニュージーランドのハイランダーズ入り。南半球最高峰のスーパーラグビーで初めてプレーした日本人として話題を集めた。身長166センチ、体重75キロと小柄も、相手の盲点を突く判断と負けん気、競技理解度に裏打ちされたコミュニケーション力でチームを引っ張る。

以下、囲み取材時の一問一答。

「(用意された椅子へ着席を促されたが)いえ、立って喋る方がいいので」

――試合、近づきました。

「練習前とかは、やっぱ緊張します。ただ、悪い緊張じゃない。いい緊張感を持っています」

――南アフリカ代表への印象。

「相手はフィジカルの強いチームなので、しっかりコミュニケーションを取りながらディフェンスしないといけない。アタックの時はチャンスが少ないので、小さなミスにも厳しくしていきたい。ミスが相手の得点になったりするので」

――田中選手が起点となり、ミスの起こりにくいアタックを。

「ひとつのミスで試合の流れが変わる相手。練習中にもミスはあるんですけど、その後のコミュニケーションで改善しているので、大分いい状況にはなっていると思います」

――練習の雰囲気は良くなった。

「前、記事で僕が檄を飛ばした、みたいなことが書かれてあったんですけど(7月のツアー中の試合前練習で皆に注意を促した。参考)。その時に比べたら見違えるよう。昨日の終わりのミーティングでも皆に言ったんですけど」

――(当方質問)どの点から、そう感じますか。

「ブレイクダウン(肉弾戦)で1人ひとりが激しくなった。フォワードの選手(肉弾戦に多く参加する位置)はもともとそうだったんですけど、バックスも1つひとつのクリーンアウト(相手のサポートを引きはがす動き)、球出しをしっかりできている。スペースに向かって走り込む意識も強くなっていて、トライを取り切るまで全員が声を出しているのはいいと思います」

――(当方質問)ボールのない場所も含め、皆、気迫と意図を込めた動きをしている、と。

「そうですね、1つひとつのプレーに代表としてのプライドを感じます。100パーセントではないけど、試合になったらもっといいものが出ると思う。そこ(細部への集中)はもっと意識しながらやっていきたい」

――自陣でプレーしていると、スクラムで反則を誘われスコアを刻まれる…。という相手のシナリオも浮かんでくる。できれば、敵陣でプレーしたい。

「なるべく敵陣でプレーしたいですし、相手もすごく大きいので、セットプレーの回数は減らしたい」

――(当方質問)スペースにボールを運ぶなかで前方に効果的なキックを蹴るなど、とにかく「休ませない」(春先からチーム内で語られた南アフリカ代表戦の対策)ことが必要ですか。

「そうですね。それはどのチームに対しても同じなのですけど、スペースにボールを運んで(キックを蹴った先で)ターンオーバーというのがベスト。そうできればいいですね」

――初戦は、重要ですか。

「ここで悪い試合をすれば、特に初めてワールドカップに出る方のメンタルが下がるのかと感じますし。ただ、ここの試合でいいプレーをすれば近くにある次の試合(23日にグロスターでスコットランド代表戦)へも波に乗って行けると感じます。

チームや個人によっては、いい試合をした後に気が緩む…ということもあります。でも、今回の4戦で気が抜ける試合はひとつもない。いい流れに乗ればいいようになると、僕は皆を信じている。そうなるように、僕も声をかけていきたい」

――1つ目の試合。「いい試合」の定義は。

「勝つことがベスト。あとはディフェンスで相手を止めて…。大勝ちはないので、相手の点数を抑えて、こっちもゴロー(フルバック五郎丸歩副将)のキックとか、ペナルティーで点を重ね、ひとつのチャンスでトライを取る…。あ、ゴローが出るかどうかはまだわからないですけど(メンバー発表は現地時間で現地時間17日15時を予定)」

――スーパーラグビー組の存在感。

「激しさもあるし、色んなところで声も出せるし、周りの選手よりはゲームを引っ張ることができるとは思います」

――(当方質問)相手のキーマンとなりうる、フーリー・デュプレア選手について(70キャップ、取材後のメンバー発表でリザーブスタートが決定)。

「誰が来ても、その選手を分析してプレーするだけ。どのスクラムハーフが来ても、その選手に負けないようにやっていきたいですね」

――改めて、自身2度目のワールドカップへの思いを。

「日本のために。前回のワールドカップで、本当に申し訳ない思いをさせてしまったので(2011年のニュージーランド大会は1分3敗)。僕自身、エディーのラグビーは(スーパーラグビー参戦のため)間、間しか入っていないけど、皆のやってきたこともわかっていますし、ファンの方が応援してくれているのもわかっている。その思いを受けて、戦っていきたいですね」

――4年前のチームと比べ、いまは。

「フィジカル、自信、危機感が上がっています」

――バックスに初選出の選手が多い。不安は。

「個々人に不安はあると思うんですけど、リーダーがしっかり声をかけて行けばいい。僕にはそこへの不安はないですね」

――この1週間の練習量。

「そこは、僕もわからない」

――本番に向けてボリュームを落としているような…。

「いや、結構、キツい…。すみません。バックローとか、日和佐(篤、スクラムハーフ)はやってる。人それぞれ、やらなきゃいけない人はやっています」

――(当方質問)チームが用意したプランを本番でどこまでやり切れるか。

「正直、100パーセント(達成)はないと思う。それでも、先ほど言わせてもらったように、1つのチャンスを活かせれば得点はできる。1つひとつに賭けていきたいです」

ラグビーライター

1982年、富山県生まれ。成城大学文芸学部芸術学科卒。2006年に独立し、おもにラグビーのリポートやコラムを「ラグビーマガジン」「ラグビーリパブリック」「FRIDAY DIGITAL」などに寄稿。ラグビー技術本の構成やトークイベントの企画・司会もおこなう。著書に『ジャパンのために 日本ラグビー9人の肖像』(論創社)『サンウルブズの挑戦 スーパーラグビー――闘う狼たちの記録』(双葉社)。共著に『ラグビー・エクスプレス イングランド経由日本行き』(双葉社)など。

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