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まだ負けない阪神ファームは18連勝!村上頌樹投手の三冠にも期待

岡本育子フリーアナウンサー、フリーライター
北條史也選手は12日、甲子園でのウエスタン・広島戦でダメ押しの2ラン!

 また勝ちました!きのう阪神甲子園球場で行われたウエスタン・広島戦を6対2で制し、これで阪神タイガースのファームは18連勝です。シーズン前半は5割を切っていたことが多く、思えば6月になってからでしょうか?白星が連なるようになってきたのは。

 6月5日から11日に7連勝があり、これが2018年以来3年ぶりのこと。そのあとも同27日から7月4日と、13日から27日に6連勝がありました。そして翌28日のソフトバンク戦(タマスタ)で6対15の大敗を喫したのが、今のところ最後の黒星。29日の同戦で引き分け、鳴尾浜に戻った30日から連勝が始まったわけです。

 8月21日に10連勝して、翌22日は延長10回で0対0の引き分けでした。そのあとまた8連勝しているので、あのスコアレスドローも遠い記憶になりかかっていますね。

 負けなしの19試合を振り返ると、総得点が97で総失点は35です。完封勝ちは、ともに1対0で逃げ切った9月1日の広島戦と同5日の中日戦の2試合。2ケタ得点を挙げたのは8月31日の広島戦(12対1)のみ。サヨナラ勝ちは2度で、8月1日のオリックス戦と同7日の広島戦でした。

1軍の最多記録は18連勝

 1軍と比べるのは難しいですが、数字だけを見れば18連勝はプロ野球1軍の最多記録でもあります。前回の東京オリンピックより前、つまり60年以上も昔のことでした。最初は1954年8月22日から9月21日にかけて、南海ホークス(現ソフトバンク)が記録したもの。しかも引き分けを挟んでいません。

 ちなみに、この連勝で首位に躍り出た南海は鶴岡一人(当時は山本)監督のもと、最終的に91勝49敗という成績を挙げながら2位。優勝は西鉄ライオンズだったんですね。ルーキーだった宅和本司投手が26勝9敗、防御率1.58という素晴らしい成績で新人王、最優秀防御率、最多勝、最多奪三振(275個)のタイトルを獲得しました。そうそう、野村克也選手も同期です。

 次は1960年6月5日から29日にかけて、毎日大映オリオンズ(現ロッテ)が達成しました。こちらは途中に引き分けを1つ挟んでの18連勝。そしてリーグ優勝を果たしています。しかし日本シリーズでは大洋ホエールズ(現DeNA)に4連敗しちゃったんですね。この年の監督は西本幸雄さんで、大阪タイガースから移籍した田宮謙次郎選手もいました。

 私は宅和本司さんをはじめ、OBの皆さんから聞かせていただく話でしか知りませんが、鶴岡一人さんや西本幸雄さん、田宮謙次郎さんといったお名前を懐かしく感じてくださる方もいらっしゃるでしょうね。

 また脱線してしまいました。すみません。では、きのう12日の試合を振り返りましょう。

1イニング5点で一気に逆転!

 先発は5日の中日戦(ナゴヤ)で5回を投げ4安打無失点の好投を見せた村上頌樹投手。この試合でリーグ単独トップの8勝目を挙げて以来、中6日での登板です。広島はこの時点で防御率リーグトップの中村祐太投手。両投手の投げ合いで静かに試合が始まりました。

 前日と同じ4回に先制を許した阪神ですが、やはり前日と同じ5回に逆転!しかも打者9人攻撃で一気に5点を奪います。リリーフ陣はこれまた前日同様、3投手が無失点リレー!このへんが、これまでにはない安心感というのでしょうか。点を取られても大丈夫と思えますね、今は。

《ウエスタン公式戦》9月12日

 阪神-広島 24回戦 (甲子園)

  広島 000 101 000 = 2

  阪神 000 050 10X = 6

◆バッテリー

 【阪神】○村上(9勝1敗)-尾仲-アルカンタラ-石井大 / 榮枝

 【広島】●中村祐(5勝5敗)(5回)-中崎(1回)-一岡(1回)-中田(1回) / 磯村

◆本塁打 広:中村奨4号ソロ、宇草6号ソロ(村上)

     神:北條1号2ラン(中村祐)

◆三塁打 神:榮枝

◆二塁打 広:堂林、羽月 神:山本、板山

◆打撃    (打-安-点/振-球/盗/失) 打率

 1]中:江越  (4-2-0 / 1-0 / 0 / 0) .245

 2]二:北條  (3-1-2 / 0-1 / 0 / 0) .306

 3]左:板山  (4-2-1 / 0-0 / 0 / 0) .266

 4]右:佐藤輝 (4-0-0 / 1-0 / 0 / 0) .083

 5]一:陽川  (3-0-0 / 1-1 / 0 / 0) .250

 6]指:高山  (3-0-0 / 0-0 / 0 / 0) .213

 〃打指:俊介 (1-0-0 / 1-0 / 0 / 0) .257

 7]遊:山本  (3-2-0 / 0-1 / 0 / 0) .311

 8]捕:榮枝  (3-1-2 / 0-0 / 0 / 0) .258

 9]三:遠藤  (3-1-1 / 1-0 / 0 / 0) .220

◆投手     (安-振-球/失-自/防御率)最速

 村上  6回 88球 (6-1-1 / 2-2 / 2.40) 144

 尾仲  1回 11球 (0-1-0 / 0-0 / 1.52) 146

 アルカ 1回 10球 (1-0-0 / 0-0 / 0.00) 153

 石井大 1回 15球 (0-1-0 / 0-0 / 0.75) 148

      ※“球”は四球と死球の合計

《試合経過》※敬称略

 先発の村上は1回、先頭の羽月に右前打されるも自身の牽制で刺して、3人で片づけます。2回と3回は三者凡退と、しっかり抑えました。しかし4回、1死から中村奨にセンターへのホームランを浴び、1点を先取されます。5回にヒット2本と四球で無死満塁のピンチを招きながら、フライ3つで後続を断ち無失点!

 すると、1回に江越が放った左前打のみで4回まで中村祐に抑えられていた打線が、その裏に猛攻を見せます。まず陽川の四球と山本の二塁打などで1死二、三塁として榮枝が左中間へ2点タイムリー三塁打!続く遠藤はファーストを強襲するタイムリー内野安打で榮枝を還し、さらに2死後、北條がレフトへ2ラン!打者9人で5点を奪って大逆転しました。

 ところで、この回のヒットは二塁打、三塁打、内野安打、本塁打、二塁打の5本。1イニングでサイクルヒット達成ですね。

 後半に入って、6回も続投の村上が先頭の宇草にライトへホームランを浴び、5対2となります。そのあとは3人で打ち取って交代。6回6安打1三振1四球、2失点という内容です。7回は尾仲が登板して、三者凡退に仕留めています。

 その裏の攻撃で、2死から江越が中前打を放ち、北條の四球で一、二塁として板山が右前タイムリー。もう1点を加え6対2となりました。8回はアルカンタラが、先頭の羽月に二塁打を許すも後続を断って無失点。9回は石井大が三者凡退に切って取り、試合終了です。

この日の写真ではありませんが、2018年に甲子園で行われたファーム公式戦にて。ベンチ前で準備をする板山選手です。
この日の写真ではありませんが、2018年に甲子園で行われたファーム公式戦にて。ベンチ前で準備をする板山選手です。

「選手には頭が下がる」 

 試合後の平田勝男監督は、まず18連勝の感想を聞かれ「うーん、まあほんとにね、選手には頭が下がるな」という言葉。そして「村上がゲームを作って、5回のピンチを切り抜けて。ピンチのあとにチャンスありという言葉がほんとに。あそこ(5回表)で村上がノーアウト満塁から頑張ったというところで、(その裏に)ファーボールから5点だもん。そういう流れというか野球の怖さを感じさせるゲームだったよね」と振り返りました。

 村上投手は2本のホームランを打たれていますね。「うん、1本目の中村奨のはしょうがない。2本目の宇草のホームランは、5点を取ったあとのトップバッター。あそこは、これから1軍を目指すピッチャーとしては3人でなんとかね。5点取ったあとでしっかり抑える意識、もっとレベルを上げていかないと。相手も3まわり目でしょ?ちょうど慣れてくるころなんでね」

 さらに「いいのは際どいところを投げていたんでね。きのうの西(純矢)にしても、村上にしても、こういう連勝でかなり意識をしていると思う。そういうところで、きのうも言ったようにカープの打線がすごくいいんで。ファームとはいえ、いい練習になるよね」と話しています。

 一方、逆転打の榮枝裕貴選手については「榮枝はね、相変わらずだ。攻守に。連勝中は榮枝、長坂というキャッチャーがやっぱりピッチャーを引っ張っていって、リリーフの尾仲、アルカンタラ、石井大と0点でしょ?このへんのリリーフ陣もすごい競争だもん。アルカンタラも、この前2本打たれて、きょうも先頭バッターに打たれたけど。あと、うまく栄枝がリードしてたと思う」と、まず守備を高く評価。

 続けて「そういったところでは、打つ方でもね、栄枝の逆転の左中間ね。最低、犠牲フライ。スリーボールから、あそこで思い切って振れるというところがさ、栄枝の思い切りのよさだね。あそこで、ちょっと迷ったりしてないねん」と絶賛の平田監督です。

甲子園でやれることの意味

 北條史也選手にも一発が出ましたね。「北條は落ちてきても、バッティングがよくなってるなっていうくらい状態はいい。それでまた1軍から絶対に必要とされるんで。他の選手も含めて。非常に状態はいいよ」

 そして「佐藤輝やろ?」と、記者から聞かれる前に佐藤輝明選手のことを話してくれた平田監督。「きょうは早出で守備もやっている。(きのうは)終わってから特打もやっている。ただファームでゲームに出るっていうだけじゃなく、特守や特打というところも入れてやっているんで。体力も含めて強化ということは矢野監督も井上ヘッドとも、しっかり話できてるんで」

 ヒットはなかったけれど、バッティングの内容はよかったのでは?「きょうはなかなかよかったよ!きのうといい、きょうといい、1軍のピッチャーが投げていてたんで、輝にとってはいい実戦になったと思うよ」

 それから平田監督は「また甲子園でやれるってのがいいや。きょうもお客さんが入ってくれて。あれ(制限)があるかもしれないけど、来られる範囲で来ていただきたいね。こうやってファームの選手たちが上を目指してやっているというところをファンの人たちに数多く見てもらえたらうれしいな」と話しました。グラウンドで、ベンチで、まさに肌で感じた思いでしょうね。

 その甲子園で、今度は14日から首位攻防のソフトバンク3連戦が行われます。平田監督によれば、先発は二保旭投手、中田賢一投手で「3つ目が(藤浪)晋太郎かな」という予定だとか。最後に佐藤輝選手は今後も4番ライトですか?と聞かれた平田監督の答えは「もちろん、もちろん」でした。

最後に、また野望を…

 この日、2安打1打点だった板山祐太郎選手は、これで11試合連続安打となっています。その11試合は35打数12安打で打率.343。同じくマルチの江越大賀選手も6試合連続安打で、ここ6試合は25打数10安打で打率.400という数字です。

 そして9勝目となった村上投手は、同じ日のオリックス戦でロングリリーフして8勝目を挙げたソフトバンク・大竹耕太郎投手に1差をつけてリーグトップ。しかも規定投球回数に到達したため、2.40という防御率だけでなく、勝率も.900でリーグトップに名前が登場しました!

 11日に規定投球回数をクリアした西純矢投手の名前が翌日消えてしまったように、村上投手もあと2試合消化したら消えます。でも残り試合を全部行うとして算出した、最終の規定投球回数までは8回2/3ですから、あと2試合先発できれば到達できますね。ここまで来たからには三冠とも狙ってもらって、それから1軍再昇格ってことでいかかでしょう?また私の野望です。

  <掲載写真は筆者撮影>

フリーアナウンサー、フリーライター

兵庫県加古川市出身。MBSラジオのプロ野球ナイター中継や『太田幸司のスポーツナウ』など、スポーツ番組にレギュラー出演したことが縁で阪神タイガースと関わって約40年。GAORAのウエスタンリーグ中継では実況にも挑戦。それからタイガースのファームを取材するようになり、はや30年が経ちました。2005年からスポニチのウェブサイトで連載していた『岡本育子の小虎日記』を新装開店。「ファームの母」と言われて数十年、母ではもう厚かましい年齢になってしまいましたが…1軍で活躍する選手の“小虎時代”や、これから1軍を目指す若虎、さらには退団後の元小虎たちの近況などもお伝えします。まだまだ母のつもりで!

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