JR四国・鳴門線の謎の無人駅「教会前」 駅前にキリスト教の教会がないのはなぜ!?
JR鳴門線の教会前駅
徳島県鳴門市には高徳線池谷駅から分岐して終点の鳴門駅までの8.5kmを結ぶJR鳴門線が運行されている。JR鳴門線は、徳島と鳴門を結ぶ目的で地元の有志によって設立された阿波電気軌道の手によって建設が進められた路線で現在の鳴門線の前身となる区間は1916年に開業した。
阿波電気軌道の社名が示すように当初は、路線を電化して電車による運行が計画されていたが、建設に多額の資金を要したことから電気運転を断念。その後、1926年に社名を阿波鉄道に変更し、1932年に国有化されている。阿波電気軌道の電気運転の計画がとん挫して以降、徳島県内の鉄道は今日まで全路線において電化されることはなく、全列車ディーゼル車により運行されており、日本で唯一電車が運行されていない県となっている。
そんな鳴門線には「教会前」という謎の駅が存在する。日本で「教会」と言えば、キリスト教の教会をイメージするのが一般的ではないかと筆者は思っているが、この教会前駅の周辺にはキリスト教の教会らしきものは見つからない。代わりに、駅の徒歩圏内には天理教の教会が立地している。
教会の正体とは・・・
日本では「教会」の呼称は、明治時代の1873年に当時の教部省が公布した「教会大意」により規定されたものが始まりとされる。「教会大意」は宗教組織の設立規則や廃止について定めたものだ。こうしたことも関係しているのか「教会」の呼称はキリスト教のような伝統宗教に限らず、新宗教でも用いられており日本の新宗教では天理教や金光教、立正佼成会でも「教会」の呼称が用いられている。なお、現在は宗教法人の監督官庁は文部科学省となっている。
JR鳴門線の教会前駅は1924年に阿波電気軌道の天理教前停留所として開業しているが、その2年後の1926年には教会前停留所に改称されており、その後の鉄道国有化にともなって教会前駅となった。
天理教は、江戸時代後期の1838年に中山みきを開祖とした新宗教で、奈良県天理市に教会本部を置く。天理教では奈良県天理市が「世界人類発祥の地」とされており、この世界人類発祥の地である「ぢば」を囲むように神殿が設置されている。筆者が天理市を訪れた時の様子については2024年8月10日付記事(「ようこそおかえり!」の異色の宗教都市 世界人類発祥の地という「奈良県天理市」に行ってみた!)で詳しく触れている。
(了)