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「ようこそおかえり!」の異色の宗教都市 世界人類発祥の地という「奈良県天理市」に行ってみた!

鉄道乗蔵鉄道ライター
天理教の神殿はおやさとやかたという建物に囲まれている(筆者撮影)

 筆者は8月に入り夏風邪をひいてしまいしばらく執筆のペースが落ちてしまっていたが、今回は日本屈指の宗教都市・奈良県天理市を訪れたときの話をしたい。奈良県天理市は、その名の通り、天理教が市名の由来となった宗教都市だ。1954年までは天理教教会本部のあるあたりは山辺郡丹波市町といったが、周辺の6町村と合併して奈良県で4番目の市として天理市が発足した。

 天理教は江戸時代後期の1838年に中山みきを開祖とした日本発祥の新宗教で、JR線や近鉄線で天理市に向かい天理市に入ると「おやさとやかた」と呼ばれる独特の和風建築のビル群が表れるほか、天理駅や天理市内の各所には「ようそこおかえり」や「おぢばがえり」といった独特の用語が書かれた横断幕が目に付く。さらに関西地区で夏になると天理教の「こどもおぢばがえり」のテレビCMも流されていたことがあったようで、天理教の知名度は高いという。

 こうしたことから、かねてより大阪府内に在住する高校の同級生であるノルゾー2号くんから「いつか天理に行ってみたい」という話を受けており、ちょうど筆者が大阪に行くタイミングとノルゾー2号くんのタイミングが一致したことから天理市を訪問してみようという流れになった。

大阪から天理へは近鉄が便利!

新阪急ホテルからは大阪駅がよく見えた(筆者撮影)
新阪急ホテルからは大阪駅がよく見えた(筆者撮影)

 筆者はこの日、大阪駅前の新阪急ホテルを午前7時にチェックアウトし、ノルゾー2号くんとの待ち合わせ場所であるJR大阪環状線のホームへと向かう。ノルゾー2号くんは、ガチの鉄オタというわけではないが、乗り鉄には興味があるらしくちょいちょい筆者の乗り鉄活動に同行することがある。天理へは大阪環状線で鶴橋駅へと向かい、そこから近鉄奈良線に乗り換え大和西大寺駅へ。大和西大寺駅からは天理線に直通する天理行に接続し、そのまま天理へと向かうことができる。

 鶴橋駅から大和西大寺駅に向かう近鉄奈良線は、近鉄発祥の路線で近鉄の前身となる大阪電気軌道(通称・大軌)が1914年に開業した路線だ。大阪―奈良間には当時すでに生駒山地の南側を迂回するルートで国有鉄道の関西本線が開業していたが、大軌ではこれに対抗するために大阪―奈良間を直線的に結ぶルートを計画。生駒山地を全長3.4kmのトンネルでぶち抜いて国有鉄道に所要時間の面で対抗しようというものだったが、トンネル工事が難工事であったうえに大軌が資金難に陥り工事を請け負った大林組までもが倒産危機に陥ったことなどから、大軌では沿線となる「お寺の賽銭」で資金調達を行ったという都市伝説も残されているほどだ。

生駒トンネルに向かう山越えの区間からは大阪の街並みがよく見えた(筆者撮影)
生駒トンネルに向かう山越えの区間からは大阪の街並みがよく見えた(筆者撮影)

 筆者らが乗車した近鉄奈良線の奈良行の快速急行は生駒山地の麓に達すると、急な坂で山を登り始めやがて長いトンネルを抜けると生駒駅に到着。そして、天理行の乗換駅となる大和西大寺駅には鶴橋駅からわずか23分ほどで到着した。なお、大和西大寺駅の北口は2022年7月8日に安倍晋三元首相が銃撃された事件現場である。大和西大寺駅では13分の接続時間で近鉄橿原線から近鉄天理線に直通する天理行に接続しており、天理駅には8時45分に到着した。

 近鉄橿原線は終点が橿原神宮前駅で、橿原神宮は初代神武天皇が即位した地として「日本書紀」に記されていることから「日本の始まりの地」と言われているが、近鉄橿原線の平端駅から分岐する近鉄天理線で終点の天理に向かうと、天理市内には天理教が「人類発祥の地」と定めた「ぢば」がある。奈良盆地には、「日本の始まりの地」と「人類発祥の地」が同居している。

天理行の近鉄電車(筆者撮影)
天理行の近鉄電車(筆者撮影)

天理駅から神殿まではアーケード街が続く

天理駅前から神殿に続くアーケード街(筆者撮影)
天理駅前から神殿に続くアーケード街(筆者撮影)

 天理に到着すると、駅の構内を始め町中のいたる所に「ようこそおかえり」と書かれた横断幕が旅人を出迎えてくれる。「ようこそおかえり」というのは、天理教の教えでは世界人類は天理の「ぢば」から発祥したことから、その人類が天理へと帰ってくることを「おぢばがえり」といい、「ようこそこかえり」と出迎えているのだという。

 天理駅前から天理教教会本部の神殿までの間には天理本通りのアーケード街が整備されており、雨天時でも神殿前まで濡れることなく向かうことができるようだ。アーケード街には天理教関連の商品を扱う店舗や飲食店などが立ち並び、飲食店では「おぢば定食」なるメニューがあったことが印象的だった。

アーケード街で見つけた「おぢば定食」(筆者撮影)
アーケード街で見つけた「おぢば定食」(筆者撮影)

 アーケード街をしばらく歩くと、背中に「天理教」と書かれた黒いハッピを着た人とすれ違った。同行のノルゾー2号くんは「第一信者発見!」とテンションが上がる。天理教の信者の方は黒いハッピを着ており、襟の部分には所属教会が書かれていることが特長だ。一応、非信者でもお土産用に天理教のハッピを購入することは可能なようだ。

 アーケード街の途中にはJTB「天理教おぢばがえり団参券発売所」と書かれた建物を見つけた。この時はまだ窓口の営業開始前であったが、帰りに窓口に寄って話を聞いたところ天理教教団本部が発行する証明書があればJRの切符を割引料金で購入できるということだった。このほか、天理教では近鉄とも同様の提携を行っているようで、教団本部に近い近鉄の団参券発売所では近鉄の切符も割引料金で買えるという話も聞いた。

JTB天理営業所は事実上の信者専用のようだ(筆者撮影)
JTB天理営業所は事実上の信者専用のようだ(筆者撮影)

いざ天理教の神殿へ

天理教の神殿(筆者撮影)
天理教の神殿(筆者撮影)

 アーケード街を歩くことおよそ20分。アーケードが途切れたところで、巨大な和風建築の神殿の前に出ることができた。この日は土曜日の朝ということもあり、神殿前には黒いハッピを着た信者の方々が、神殿周りの清掃活動を行っていたことは印象的だった。

 筆者は神殿横にある天理教教会本部のインフォメーションセンターでスーツケースを預けいざ神殿へ。神殿内部は撮影禁止であるが、非信者でもお参りをすることは可能で24時間開放されているという。神殿は東西南北を合わせて3157畳の畳敷きの礼拝場がありその中心には、世界人類が創造された地を示す甘露台が置かれている。天理教の参拝のマナーは最初に両手をついて1拝し頭をあげて4拍手。そして再び両手をついて1拝する。このときにお礼やお願い事をすることが一般的だという。そして頭をあげて4拍手し、最後に両手をついて1拝するという流れだ。

 筆者とノルゾー2号くんは、事前の練習通りに甘露台へのお参りを行い、その後、同じ神殿の回廊内にある教祖殿や祖霊殿をお参りし、神殿を後にすることにした。

 天理市では毎日、教祖の中山みき氏が「現身をかくされた時刻」とされる14時になると、市全体にミュージックサイレンが鳴り響き、天理市民はその間、教祖殿の方角を向いて黙とうをささげるという。しかし、筆者はこの日は帰りの飛行機の関係で12時過ぎには天理を離れざるを得なかったことから、次に天理市に訪問する機会があればぜひ14時まで滞在してみたい。

神殿の向かい側にある「おやさとやかた」には天理教教団本部や天理大学が入居している(筆者撮影)
神殿の向かい側にある「おやさとやかた」には天理教教団本部や天理大学が入居している(筆者撮影)

(了)

鉄道ライター

鉄道に乗りすぎて頭の中が時刻表になりました。日本の鉄道全路線の乗りつぶしに挑戦中です。学生時代はお金がなかったので青春18きっぷで日本列島縦断修行をしてましたが、社会人になってからは新幹線で日本列島縦断修行ができるようになりました。ステッカーやTシャツなど鉄道乗蔵グッズを作りました。

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