北朝鮮が超大型ロケット弾を試射、弾道ミサイル相当の発射は今年12回・23発目
10月31日夕方、北朝鮮は西部の平安南道の付近から日本海に向けて2発の飛翔体を発射しました。韓国軍の観測では水平距離370km、最大到達高度90kmで、この飛び方は通常軌道で発射されています。この飛行性能から「600mm超大型多連装ロケット(アメリカ軍コードネーム:KN-25)」が発射されたものと推定されていました。
韓国軍の発表では10月31日の北朝鮮の飛翔体発射は午後4時35分と午後4時38分。着弾位置は日本のEEZ外だったものの、日本の海上保安庁は午後4時40分に海上の船舶に向けてミサイル警報を発信しています。しかし通常軌道で短距離だったので飛翔時間は短く、おそらく最初の1発目の着弾には警報は間に合っていません。ただし発射地点は北朝鮮西部で日本海の着弾位置はかなり朝鮮半島寄りだったので、そもそも日本の漁船は居なかったでしょう。
そして翌11月1日、北朝鮮は10月31日の発射について「超大型放射砲」の発射試験であると発表、前日の推定通り600mmロケット弾だったと確定しました。放射砲とは北朝鮮の用語で多連装ロケットの意味になります。金正恩の現地視察は無かったようで、労働新聞は視察動向の様子を伝える報道欄ではない扱いとなっていました。
北朝鮮の公式声明では「超大型放射砲の連続射撃システムの安全性を検証する目的の発射試験」であると説明されていますが、飛翔が確認されたのは2発のみで600mm多連装ロケットの一斉発射である4発ではありませんでした。その一方で「実戦能力の完全性が確認された」としています。
【関連】北朝鮮が再び超大型ロケット弾を試射(2019年9月11日)
なお日本政府は今回の北朝鮮の発射した飛翔体を「弾道ミサイル」と呼んでいますが、これは600mm超大型ロケット弾が短距離弾道ミサイルと同等の射程を有しているので、弾道ミサイル扱いするという意思表示です。射程370kmは短距離弾道ミサイルのスカッドB型に匹敵する性能です。この大きさのロケット弾が世界に類を見ないのは、もはや弾道ミサイルとして設計した方が扱いやすい重量と大きさになる為で、細長いロケット弾の形状をそのまま超大型化した北朝鮮の設計方針はメリットがあまりよく分からない面があります。
北朝鮮2019年飛翔体発射 12回・23発
- 5月4日 イスカンデル短距離弾道弾×2
- 5月9日 イスカンデル短距離弾道弾×2
- 7月25日 イスカンデル短距離弾道弾×2
- 7月31日 大口径ロケット弾×2
- 8月2日 大口径ロケット弾×2
- 8月6日 イスカンデル短距離弾道弾×2
- 8月10日 ATACMS短距離弾道弾×2
- 8月16日 ATACMS短距離弾道弾×2
- 8月24日 超大型ロケット弾×2
- 9月10日 超大型ロケット弾×2
- 10月2日 北極星3号SLBM×1
- 10月31日 超大型ロケット弾×2
※イスカンデルはロシア製の独特な発射方式まで忠実に模倣
※ATACMSは形だけアメリカ製を模倣して中身はイスカンデルの可能性
※大口径ロケット弾は推定直径約400mm。ただしモザイクで詳細不明
※超大型ロケット弾は推定直径約600mm
※北極星3号は潜水艦用の水中発射弾道ミサイル
※5月4日の発射は当初1発と推定、後日に2発発射(1発失敗)と判明
※9月10日の発射は3発発射されて1発失敗している可能性