65歳以上は69.6%が通院中…通院者率の実情をさぐる(2023年公開版)
入院して管理された環境の中で徹底治療をするほどではないが、定期的な検査と診察が必要な病状にある人が求められる通院。どれほどの人が通院をしているのだろうか。厚生労働省が2023年7月に発表した「国民生活基礎調査の概況」(※)から確認する。
今回スポットライトを当てるのは、病気やけがなどで病院に通っている人、つまり「通院者」の割合について。計算を行う際に入院者は通院者にはカウントされないが、比率を計算する際の世帯人員数には入院者自身も含まれる。例えば「通院者」が40.4%だったとして、残りの59.6%が全員病院と無関係なわけではなく、何%かは入院していることになる。
まずは年齢階層別の通院者率。全体では約4割の41.7%。40代までは1~2割台と表現できる値だが、30代以降は急激に増加。70代以降はほぼ7割台となっている。平均的な定年年齢である65歳以上で区切れば、約7割が何らかの形で通院中となる。
若年層の通院率が若干高めに見えるかもしれない。これは一般の病院の他、歯科や眼科なども合わせて通院とカウントしているからに他ならない。子供のうちは虫歯関連で歯科、そして視力のチェックや眼鏡装着のためで眼科に通う人は少なくない。
これを男女別に見ると、10代までは男性が、それ以降はほぼ女性の方が高くなる。女性は妊娠や腰痛など、入院の起因となる要素が多いからだと考えられる。もっとも60代以降は再び男性の方が通院率は高くなる。通院を要するほどの体の老朽化は男性の方が早いからなのだろうか。
特に20代から30代にかけての男女の差異の大きさが、妊娠関連による通院機会の多さを想像させる。
蛇足ではあるが、通院者における対象となる病症の直近調査分の上位5項目を男女それぞれに集計し、以前の調査との差異も確認するため、過去4回分と併記したグラフは次の通りとなる。
男女とも高血圧症がトップで、男性は糖尿病に歯脂質異常症、女性は脂質異常症に目の病気が続く。経年変化を見ると男女とも高血圧症と目の病気、そして男性の糖尿病がほぼ連続して増加しているのが確認できる(女性の目の病気は前回調査分と同じ値の調査年もあるが)。いわゆる生活習慣病のうち、上位項目としてラインアップされ、三大成人病と呼ばれている「糖尿病」「脂質異常症」「高血圧」のうち、男女ともに5位以内に2つ以上が入り、しかも男性では2つも、女性でも1つが通院者率の増加を示している。
これらの疾病で通院する状況に陥らないように日々の生活習慣の改善を目指すとともに、定期的な検診を受け、兆候が確認されたら可及的速やかに改善のための治療を受けるようにしたいものだ。
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※国民生活基礎調査
今調査は全国の世帯および世帯主を対象とし、各調査票の内容に適した対象を層化無作為抽出方式で選び、2022年6月2日に世帯票・健康票・介護票、同年7月14日に所得票・貯蓄票を配ることで行われたもので、本人記述により後日調査員によって回収され、集計されている(一部は密封回収)。回収の上集計が可能なデータは世帯票・健康票が20万3819世帯分、所得票・貯蓄票が1万9140世帯分、介護票が5499世帯分。今調査は3年おきに大規模調査、それ以外は簡易調査が行われている。今回年(2022年分)は大規模調査に該当する年であり、世帯票・健康票・介護票・所得票・貯蓄票すべての調査が実施されている。
また1995年分は阪神・淡路大震災の影響で兵庫県の分、2011年分は東日本大地震・震災の影響で岩手県・宮城県・福島県(被災三県)の分、2012年は福島県の分、2016年は熊本地震の影響で熊本県の分、2020年は新型コロナウイルス流行の影響で全体のデータが取得されておらず、当然各種結果にも反映されていない。
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