黄砂は来ないがPM2.5は来る
中国で黄砂
中国の甘粛省では11月25日に大規模な黄砂により、農業や交通など市民生活に大きな影響がでました。
強風による高さ100メートルの砂嵐が迫ってくる画像は、世界中に配信され、大きなインパクトがありました。
気象衛星「ひまわり8号」の画像からも、はっきり黄砂が映っています(タイトル画像参照)。
ただ、この黄砂が直ちに日本に来るわけではありません。
黄砂という現象は、中国大陸で風によって上空高く巻き上げられた「黄砂」と呼ばれる砂が、上空を流れる偏西風に乗って東進し、日本付近で下降して地表面付近に達して発生します(図1)。
黄砂が11~12月に日本へ来ることがないというわけではありませんが、何といっても春先に一番多くやってきます(図2)。
気象庁の黄砂予測では、今回の黄砂は中国大陸の中で落下し、日本までやってきません(図3)。
しかし、自然起源で目で見える黄砂より粒径が小さく、自然起源だけでなく人工起源のものも多くて目に見えない2.5マイクロ以下の非常に小さい粒子、PM2.5はいつでも日本にやってきます。
PM2.5
非常に粒径が小さいPM2.5は、その小ささのために肺の奥深くまで入り込み、なかなか体外に排出されませんので、ぜんそくや気管支などの呼吸器系の疾患を引き起こすとされています。
このため、中国の経済発展に伴う大気汚染によるPM2.5の増加は、日本にとって対岸の火事ではありません。
11月28日以降、中国からのPM2.5も加わり、日本列島ではPM2.5の値が高い状態になります(図4)。
この図で、「極めて多い」は「非常に多いの閾値の2倍」、「非常に多い」は「注意喚起レベル」、「多い」は「日本の環境基準程度」、「やや多い」は「大気が少しかすむ程度」です。
つまり、28日15時には、中国大陸の汚染とは規模が違いますが、日本列島でも広い範囲で「日本の環境基準」以上の汚染が予想されています。
ただ、一時的なものです。長期間にわたってPM2.5の影響が続く中国と違って、29日になれば、北からのきれいな空気が入ってくるため、PM2.5の濃度は減少します(図5)。
北から寒気が南下し、平年並みまで気温が下がると同時に、きれいな空気も南下してきます。
中国の大気汚染は将来の日本に大きな影響
中国の大気汚染の影響は中国に住む人にとって大きな問題ですが、気になる報告書もあります。
平成20年(2008年)3月に経済開発協力機構(OECD)が発表した環境予測では、都市の大気汚染による地表付近のオゾンによって、呼吸器系の病気で死期を早める人は、日本と韓国で2030年には100万人あたり88人と、世界で最も高い数値になっています。
この予測では、中国は100万人あたり49人です。
つまり、発生源に近い場所より、汚染物質が移動してきた場所の方が大きな被害を受けるという報告書です。
PM2.5だけでなく、中国の大気汚染の影響は、周辺国にとって他人事ではないのです。
タイトル画像の出典:ウェザーマップ提供。
図1、図2、図3の出典:気象庁ホームページ。
図4、図5の出典:SPRINTARS開発チーム・ウェザーマップ提供