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Jリーグ王者からMLSへ~異国で愛される背番号1~

林壮一ノンフィクション作家/ジェイ・ビー・シー(株)広報部所属
(写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ)

 「ヨウヘイは最高だよ!選手としても、人間としても」

 MLS(メジャー・リーグ・サッカー)、バンクーバー・ホワイトキャップスのPR部に所属するコーディネイター、セバスチャン・ペレイラはそう言った。

 9月21日(土)、ホワイトキャップスは、敵地LAで同じ西地区で首位に立つギャラクシーと対戦した。キックオフ時点でホワイトキャップスは7位。

写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ

 一昨年、Jリーグで全試合に出場し、横浜F・マリノスの優勝に大きく貢献した高丘陽平は、昨シーズンからMLSでプレーしている。移籍直後に正GKのポジションを掴み、今年は背番号1を着けて活躍中だ。

 アウェイゲームながら、ホワイトキャップスに取材を申し込むと、担当者のセバスチャンは高丘を絶賛していた。その口調から、日本人守護神がバンクーバーでいかに愛されているかが伝わってくる。

写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ

 この日、ホワイトキャップスは、ギャラクシーに2-4で敗れた。試合後、高丘は悔しさを滲ませながら、指定場所にやって来た。ギャラクシー戦では確かに4失点したが、彼が何度か見せたセーブも印象に残った。

 筆者は昨シーズンのLAFC戦で、高丘のポジショニングの良さに唸っている。LAFCのほとんどのシュートを正面で受けていたからだ。

 その折「日本では言われたことのない要求が、こちらのGKコーチからあるんです」と語っていたが、一年が経過し、精度が更に増したように感じられた。

 質問すると、高丘は応じた。

写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ

 「以前は飛んでいたシュチュエーションでも、足を運んでキャッチすることや、より確実にボールを抑えるためのHow toを、かなりGKコーチ達から指摘されます。なので、確率的には上がってきているかな、という感触はありますね。

 でも、今日は失点が多かったです。こういう相手の質が高いゲームでも、コンスタントに力を発揮できるようにしなければ、と思います」

 前半32分、こぼれ球をギャラクシーのブラジル人右ウイング、ガブリエル・ペクにグラウンダーで打たれ、先制点を許したホワイトキャップスだが、その9分後、同じような位置からペクが放ったシュートを高丘は自身の正面で受けた。筆者はそこに適応力を感じた。

写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ

「同じシュチュエーションはありませんが、似ている部分はあって、多少、自分のポジショニングを変えましたし、最後までボールを見て我慢するという意識でした」

――MLSに来て、掴んだもの。自分が成長したと感じるものは何ですか? と、訊ねてみた。

 「どうですかね……GKとしての幅と深みを引き出してもらえました。それまで培ってきたものを無かったものにするんじゃなく、プラス、新しいGKとしてのスタイルを学んでいるので、うまくミックスしながら自分をもっともっと作り上げて表現しなければいけないと感じています。

 ポジショニング、判断、決断力…色々な部分で成長があると思いますが、その状況において何が起こっているかを把握したなかで、正しい選択をするーーという精度をもっともっと上げたいです」

撮影:筆者
撮影:筆者

 JリーグでVを飾った後、高丘はワールドカップに出場することを目標に海を渡った。米国、カナダ代表選手の多くはMLSからヨーロッパに移籍する。高丘陽平も未来に向け、確かな歩みを見せている。

ノンフィクション作家/ジェイ・ビー・シー(株)広報部所属

1969年生まれ。ジュニアライト級でボクシングのプロテストに合格するも、左肘のケガで挫折。週刊誌記者を経て、ノンフィクションライターに。1996年に渡米し、アメリカの公立高校で教壇に立つなど教育者としても活動。2014年、東京大学大学院情報学環教育部修了。著書に『マイノリティーの拳』『アメリカ下層教育現場』『アメリカ問題児再生教室』(全て光文社電子書籍)『神様のリング』『世の中への扉 進め! サムライブルー』、『ほめて伸ばすコーチング』(全て講談社)などがある。

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