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小山怜央アマ(29)棋士編入試験合格まであと2勝! 若手強豪・徳田拳士四段(24)との大熱戦を制する

松本博文将棋ライター
(記事中の画像作成:筆者)

 11月28日。大阪・関西将棋会館において、棋士編入試験五番勝負第1局▲徳田拳士四段(24歳)-△小山怜央アマ(29歳)戦がおこなわれました。

 10時に始まった対局は17時43分に終局。結果は166手で小山さんの勝ちとなりました。

 小山さんは今年度勝率1位を走るスーパールーキーを降し、棋士編入まであと2勝としました。

 第2局は12月12日、東京・将棋会館でおこなわれ、小山さんは岡部怜央四段(23歳)と対戦します。

小山さん、劇的な龍捨てで決める

 振り駒で第1局、小山さんは後手となりました。以後は先後が交替し、第2局では小山さん先手です。

 戦型は角換わり腰掛銀。現代将棋の最前線です。小山アマはさほど時間を使わず、戦いが始まっても気合よく指し進めていきます。前例はありますが、それを踏まえた上で、さらに深い研究がなければできないことでしょう。

 82手目。小山アマが銀取りに歩を突き出したところでは、すでに中盤戦の終わりのような形です。持ち時間3時間のうち、消費時間は徳田53分、小山22分。そこで昼食休憩に入りました。

 午後の戦いに入ってから、コンピュータ将棋ソフトが示す評価値は、やや小山さん有利で推移していきました。しかし局面は難解なまま、徳田四段も地力を発揮。

勝敗不明の終盤へと入ります。

 106手目。小山さんは自陣二段目に歩を打ちます。攻防によく利いている徳田四段の馬の態度を聞いた手で、いかにも力がこもった一着でした。

 攻めるターンが回ってきた小山さんは、銀を捨てて徳田玉に迫ります。しかし徳田玉は上部へと逃げ出し、容易にはつかまらない形に。勝敗不明の攻防が続いていきました。

 130手目。小山さんは自陣一段目に歩を打ちます。これもまた力のこもった一手で、馬取り。徳田四段はどう応じるのか難しいところです。

 残り時間は徳田27分、小山18分。徳田四段は18分を使い、銀を打って小山玉に王手をかけました。鋭い捨て駒。しかしこの瞬間、形勢の針は小山さんの方へと傾きました。

 142手目。小山さんは龍を捨てます。これが劇的な決め手。馬で取らせることによって筋をそらせ、桂を打って徳田玉に王手をかけると、押し戻せる形です。

 小山さんは王手をかけながら相手の馬を抜き、盤石の態勢。最後は徳田玉を詰ませて、さしもの大熱戦も幕を閉じました。総手数は166手。大熱戦の余韻をそのまま後世に伝えるような、終局図となりました。

 本局は始まる前、徳田四段ノリの声が圧倒的に多かったところ。小山さんは下馬評をくつがえし、大きな大きな、本当に大きな1勝をあげました。

 第2局にも注目です。

将棋ライター

フリーの将棋ライター、中継記者。1973年生まれ。東大将棋部出身で、在学中より将棋書籍の編集に従事。東大法学部卒業後、名人戦棋譜速報の立ち上げに尽力。「青葉」の名で中継記者を務め、日本将棋連盟、日本女子プロ将棋協会(LPSA)などのネット中継に携わる。著書に『ルポ 電王戦』(NHK出版新書)、『ドキュメント コンピュータ将棋』(角川新書)、『棋士とAIはどう戦ってきたか』(洋泉社新書)、『天才 藤井聡太』(文藝春秋)、『藤井聡太 天才はいかに生まれたか』(NHK出版新書)、『藤井聡太はAIに勝てるか?』(光文社新書)、『棋承転結』(朝日新聞出版)など。

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