土砂災害など水害で被災した時に覚えておきたい損害保険の迅速な請求術
静岡県や山陰地方を豪雨が襲い、土砂災害などの水害が発生しています。災害発生の際の対応のうち、お金関係はわかりづらいものです。今回は、普段気にすることの少ない、住宅の火災保険について迅速な保険金請求につながるよう情報提供いたします。
火災保険は水災付帯なら土砂災害などの水害でも保険金がもらえるが・・・
火災保険という名前から、自宅の保険は火事のときしかお金が受け取れないと考えてはいませんか?火災保険は補償の範囲を自分で選ぶことができ、基本設定である火災、落雷、破裂・爆発、風災・ひょう災・雪災の他、オプションで水災、盗難、破損などを選択することができます。
損害保険料率算出機構の「火災保険 都道府県 水災補償付帯率(2019年度)」によると、火災保険契約における水災付帯率は、
- 2015年73.4%
- 2016年71.9%
- 2017年70.5%
- 2018年69.1%
- 2019年67.8%
となっています。
最近では3割以上の建物が水災への備えができていないことになります。水災補償付帯率とは、各年度末の時点で保険契約の有効な火災保険のうち、水災を保証している契約件数の割合のことを言います。
なぜか徐々に減少しています。
近年の豪雨災害をニュースで見聞きしていれば付帯率は上昇するのが普通ではないかと考えます。理由は不明ですが、マンションなど水災付帯しない契約が増えているのか、保険料節約のために水災を外しているか、などが考えられます。
土砂災害は水災に該当しないという認識の方も多いかもしれません。この点は、保険加入時の説明をしっかりと認識していないことが問題かもしれません。
ハザードマップで洪水のリスクがないから水災をつけない、という選択は一見合理的です。しかし、土砂災害は洪水とは別のハザードマップを見て確認する必要があるのです。
マイホームをお持ちの方は、今一度火災保険に水災が付帯されているか確認をおすすめいたします。
保険期間が終了していればそもそも保険金を請求することはできない。
筆者がメディア関係者から聞いたところでは、被災地に取材に行くと必ずといっていいほど、保険期間の終了により保険金の請求ができない人がいるそうです。
原因は、火災保険加入の経緯にあります。
かつては、火災保険は住宅購入時に35年分の保険料を一括で支払う方式がありました。さらに保険証券は住宅ローンの人質に銀行が預かり、住宅ローンの完済まで戻ってこないということもあります。
住宅ローンを払い終える頃までに、自然災害に遭う人は少ないと考えられますから、住宅ローン支払い以降も火災保険を払い続ける人は少ないのかもしれません。
ですから、保険に入っていた「つもり」になっている人もいるのです。マイホームをお持ちの方は、この記事を読んだらすぐに自分の火災保険を確認することを勧めます。
スマホをもって逃げれば、保険証券はなくても大丈夫だが・・・
次は、被災時です。まずは命を確保することを優先しなければなりません。熱海のケースは逃げるための危険を察知することすら難しい状況だったかもしれません。
一方で、豪雨であれば避難警報が当然のように発令されるでしょう。人間は正常性バイアスといって、リスクを過小評価する傾向にあるとされています。
NHKが取材中に、取材相手との取材を打ち切って避難を促したのは、取材相手の方が正常性バイアスに陥っていると、NHKが判断したからに他なりません。
いざ逃げる場合には、身の回りの準備をしている暇はありません。着のみ着のまま、スマホと財布だけもって避難できれば御の字でしょう。
火災保険の保険金請求はスマートフォンのカメラが絶大な威力を発揮します。
受け取りに時間のかかる義援金と異なり、保険金は請求後すみやかに支払われます。その際に必要なことは、保険金請求書への記入の他に、被害状況の証拠写真になります。
災害が一段落し、二次災害等の危険性がない状態になったら、自宅の状況を写真撮影してください。ただし、立入禁止になっている場合は、無理に侵入しないよう注意が必要です。
現況確認が困難なほどの被害状況であれば、航空写真などで被害の状況が確認されれば、証拠写真がなくとも保険金の支払いに応じる可能性があります。
スマートフォンでの保険証券の撮影については、過去記事「地震に備えて加入した保険の社名や証券番号おぼえてる? 今すぐできる情報管理術」を確認ください。
災害が落ち着いたら罹災証明書を取得しよう
保険金請求と同様に大切な請求の1つに、罹災証明書の発行があります。被災したことの証明になりますので、避難場所での自治体からの情報発信を確認しておきましょう。
一般的には、罹災証明書交付申請書への記載、本人確認書(免許証など)、罹災したことが確認できる写真、が必要になります。
罹災証明書の発行申請を行うと、自治体が現地調査を実施し、被害の状況を確認後、罹災証明書を発行してくれます。
罹災証明書があることで、自治体や国からの支援を受ける際スムーズです。罹災証明書がないと支援を受けられない場合もあります。義援金を受け取る際も、罹災証明書が必要です。
まずは、命の確保を最優先し、天候や被災地の状況が安定したら、速やかに保険金の請求を行いましょう。どこの保険に加入してるかわからない場合は、損害保険協会の自然災害等損保契約照会センター(0120-501331)※受付時間:平日9時15分〜17時(祝日・年末年始を除く)に連絡してください。
日本は春から秋にかけて水害、土砂災害が多い地域です。大切な財産が被害にあう前に、準備をしておきましょう。