2007年、夕張支線で「SL夕張応援号」が運行され大賑わい 現在は「攻めの廃線」で人の気配が消えた…
北海道夕張市が財政破綻した翌年の2007年秋、石勝線夕張支線では夕張市を応援しようと「SL夕張応援号」が運行されたことがあった。「SL夕張応援号」はC11形蒸気機関車に客車4両編成で後部にはDE10形ディーゼル機関車が連結されていた。運転区間は追分―新夕張―夕張―新夕張―夕張―新夕張―追分間で、石勝線夕張支線の区間となる新夕張―夕張間では2往復が運転された。
筆者もこのとき「SL夕張応援号」には、追分―夕張間で乗車しているが、1975年の蒸気機関車の運転終了以降初となる夕張での運行ということで、注目度は高く多くの鉄度ファンが全国から訪れていた。
夕張市では、2024年の観光入込客数の目標を60万人としており、目標達成に向けて観光ホームページの更新や観光案内看板の整備、市内観光マップの更新作業に取り組んでいるというが、2022年の観光入込客数は23万6000人にとどまっており、2023年12月6日に行われた夕張市の定例市議会で厚谷司市長は「目標達成は厳しい状況であることは事実」と答弁している。
かつて夕張駅前で営業していたホテルマウントレースイやホテルシューパロは、2019年の石勝線夕張支線の「攻めの廃線」後、運営会社が倒産しており今日に至るまで営業再開の見通しは立っていない。先日、夕張市を訪問した際に、地元の方に話を聞いたところ「ホテルがなくなったことで修学旅行生が消滅したことが大きな痛手」だと話していた。
さらに「攻めの廃線」により便利になったはずのバス路線も運転士不足から壊滅状態だ。2023年10月1日は夕張市内と新札幌駅を結ぶ夕鉄バスの路線バスが廃止となり、2024年10月1日には北海道中央バスも夕張から撤退することになり、夕張市内と札幌駅前を結ぶ高速ゆうばり号と夕張市内と岩見沢駅を結ぶ路線バスも廃止となる。
一方で、輸送密度が49人であったのにもかかわらず上下分離により存続した福島県のJR只見線会津川口―只見間は、日本一の地方創生路線として多くの観光客が只見線沿線を訪れ、5億5000万円の年間維持費に対して県内だけで6億1000万円の経済効果を発揮していると福島県が発表している。現在、利用者は3倍程度に伸びているといい、沿線の宿泊施設も予約が取りづらい状況となっているという。
夕張の惨状は目先のコストカットに奔走し、観光振興を軸とするならば、そのために必要な政策を誤った失策にほかならないのではないだろうか。
(了)