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新型コロナウイルス:日本で感染がわかった人の状態は?治療はどのように行われた?最新報告が示すことは

市川衛医療の「翻訳家」
(写真:ペイレスイメージズ/アフロイメージマート)

国内で新型コロナウイルスへの感染が判明した人は、どのような状態で病院を受診し、どのような治療をうけ、どのような経過をたどっているのでしょうか?

2月6日、その詳しい実態を、国立国際医療研究センター(東京・新宿区)が明らかにしました。

レポートが掲載されたのは、日本感染症学会のホームページです。PDFファイルで、誰もが原文を読める形で公開されています。「当院における新型コロナウイルス(2019-nCoV)感染症患者 3 例の報告」という題名で、いわゆる症例報告の形をとっています。

日本において新型コロナウイルスの感染が判明し、国立国際医療研究センターで治療を受けた3人の患者さんの状態や治療の様子、そしてその後の経過が詳しく報告されています。

あくまで医療従事者向けのものですが、その内容からは、現状を現場にいる専門家がどのように評価しているかを察することができます。

詳細は原文を読んでいただくとして、報告の内容について、抜粋してざっとご紹介します。(以下で断りなく「受診」「入院」と記す場合、その施設は国立国際医療研究センターを示します)

3人の患者さんの詳細

1)湖南省に在住する中国人

1月19日 武漢のホテルに1泊

  20日 来日

  23日 のどの痛みと37.5℃の発熱「新型コロナウイルスでは?」と心配になり受診

  30日 胸部レントゲン検査で肺炎の症状が判明、入院。新型コロナウイルスへの感染が判明、通常はHIV感染症に使われている薬による治療を受ける

2月 3日 37℃まで解熱 倦怠感も改善傾向

2)54歳男性※2018年5月から 武漢に仕事で滞在

1月27日 のどの痛みと鼻汁

  29日 帰国の飛行機内で軽いさむけ 37.1℃の発熱 入院 その後38.7℃まで上昇

  30日 新型コロナウイルス感染が判明 肺炎の症状はなし

  その後、経過観察(特別な治療を行わず経過を見る) 

  37℃台の発熱はあるが呼吸状態の悪化はなし

3)41歳男性※2019年12月から 武漢に仕事で滞在

1月31日 日本に帰国後、38℃の発熱と軽いせきがあり、入院

2月 1日 新型コロナウイルス検査陽性、肺炎の症状がみられる

      その後、経過観察(特別な治療を行わず経過を見る)

      現在まで37℃台の発熱はあるが、呼吸状態の悪化はなし

研究チームの見解は

国立国際医療研究センターの研究チームが、症例報告の「考察」のなかで指摘しているポイントは下記です。

・この3例はともに武漢で感染したと考えられ、現状では過去14日間の武漢への渡航歴があるかが重要

・でも現在は中国全土で症例が報告されているので、症状から疑わしければ、武漢市以外にいた人でも新型コロナウイルス感染を疑ってもよさそう

・中国では重症例や死亡例が多数報告されているが、この3人は重症ではなく、そして国内で死亡例は出ていない。中国での報告とは状況が違う

・ただし、中国での感染の広がりには歯止めがかかっていない。日本でも今後、流行が広がる可能性は十分ありうる

・上記を考えると、国内においては、新型コロナウイルスの感染そのものを封じ込めることを目指すより、重症になったり亡くなったりする人を防ぎつつ、医療体制を維持するように努めたほうがよさそう

・具体的には、新型コロナウイルス感染症を治療する体制を整えた病院(感染症指定医療機関や都道府県の指定する診療協力医療機関)は、重症になった人の治療に専念し、症状が軽い人は全ての医療機関(病院やクリニック)で治療する体制を作るのが望ましいのではないか

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いま、新型コロナウイルス感染症に関して様々なニュースが流れています。最新の情報を参照するのは良いことである一方で、偏りのある情報が拡散する可能性もあります。

そのなかで、いままさに治療にあたっている専門家たちが、その緊迫し忙しい時間を割いて、症例報告という形で現在わかっていることを公表しようとした今回の取り組みは評価されるべきものと思います。

もちろん、たった3例の報告ですから、このレポートだけをもとに何かを判断することはできません。しかし不安の高まるいまだからこそ、様々な情報を判断する基礎情報として、参考になるものと思います。

【参考文献】

「当院における新型コロナウイルス(2019-nCoV)感染症患者 3 例の報告」

日本感染症学会ホームページ(2月5日公開)

http://www.kansensho.or.jp/uploads/files/topics/2019ncov/2019ncov_casereport_200205.pdf

医療の「翻訳家」

(いちかわ・まもる)医療の「翻訳家」/READYFOR(株)基金開発・公共政策責任者/(社)メディカルジャーナリズム勉強会代表/広島大学医学部客員准教授。00年東京大学医学部卒業後、NHK入局。医療・福祉・健康分野をメインに世界各地で取材を行う。16年スタンフォード大学客員研究員。19年Yahoo!ニュース個人オーサーアワード特別賞。21年よりREADYFOR(株)で新型コロナ対策・社会貢献活動の支援などに関わる。主な作品としてNHKスペシャル「睡眠負債が危ない」「医療ビッグデータ」(テレビ番組)、「教養としての健康情報」(書籍)など。

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