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なぜデ・リフトは”112億円”で移籍に迫っているのか?ビッグクラブの思惑とCBの価値。

森田泰史スポーツライター
競り合うデ・リフトとハフェルツ(写真:ロイター/アフロ)

夏のマーケットが、活発化している。

今夏の移籍市場においては、リヴァプールが移籍金固定額7500万ユーロ(約105億円)でダルウィン・ヌニェスを、マンチェスター・シティが6000万ユーロ(約84億円)でアーリング・ハーランドを獲得している。早い段階でビッグディールがまとまったが、市場が閉まるのは8月31日だ。

シティに加入したハーランド
シティに加入したハーランド写真:ロイター/アフロ

ストライカーあるいはゴールスコアラーに高値が付くのは、歴史的に見て当然の流れだ。近年、クリスティアーノ・ロナウド、アントワーヌ・グリーズマン、ロメル・ルカクと多くのアタッカーが高額な移籍金で移籍を果たしている。

■新たなトレンド

だが、今回のマーケットでは、新たなトレンドが生まれてきている。そこにあるのはセンターバックの存在だ。

現在、バイエルン・ミュンヘンが、マタイス・デ・リフト(ユヴェントス)の獲得に動いている。交渉は移籍金8000万ユーロ(約112億円/固定額7000万ユーロ+ボーナス1000万ユーロ)で決着しそうだ。

バイエルンは今夏、ロベルト・レヴァンドフスキが退団した。2023年夏まで契約を残していたレヴァンドフスキだが、バルセロナが強い関心を示していた。バイエルンとしては、移籍金固定額4500万ユーロ+ボーナス500万ユーロで、33歳のストライカーを“売り捌いた”格好だ。

その資金を元手に、バイエルンはデ・リフトの獲得に本腰を入れている。

ユナイテッドに移籍したリサンドロ・マルティネス
ユナイテッドに移籍したリサンドロ・マルティネス写真:ムツ・カワモリ/アフロ

高額な移籍金でCBを確保しようとしているのはバイエルンだけではない。

カリドゥ・クリバリ(チェルシー/移籍金4000万ユーロ)、リサンドロ・マルティネス(マンチェスター・ユナイテッド/移籍金5400万ユーロ+ボーナス1000万ユーロ)、ニコ・シュロッターベック(ボルシア・ドルトムント/2500万ユーロ)、ジエゴ・カルロス(アストン・ヴィラ/3100万ユーロ)、スティーブ・ボットマン(ニューカッスル/3700万ユーロ)らの移籍が成立している。

■ファン・ダイクの移籍

また、近年のCBの移籍で、記憶に新しいのは、フィルヒル・ファン・ダイクのリヴァプール加入だ。

2017−18シーズン、リヴァプールは冬の移籍市場で、移籍金8500万ユーロでファン・ダイクを獲得した。最終ラインを安定させ、17−18シーズンにチャンピオンズリーグで準優勝。18−19シーズンには、見事、ビッグイヤーを獲得した。

リヴァプールでプレーするファン・ダイク
リヴァプールでプレーするファン・ダイク写真:ムツ・カワモリ/アフロ

「高いクオリティを備えた選手だ。だから我々は彼に関心を寄せ、最終的に獲得を決めた」とは当時のユルゲン・クロップ監督の言葉だ。

「人々はこう言うかもしれない。『なんて高額な移籍金なんだ』と。しかし、それは私には興味がない。そういった価格は、我々が決めるものではない。マーケットが決めるものだ。リヴァプールのファンが、真っ先にするべきは、支払われた移籍金を忘れること。我々は選手がどういった貢献をしてくれるかを話したいと思っている」

バルセロナからの関心があるクンデ
バルセロナからの関心があるクンデ写真:ロイター/アフロ

ジュール・クンデ(セビージャ)、パウ・トーレス(ビジャレアル)、プレスネル・キンペンベ(パリ・サンジェルマン)、ビッグクラブの「センターバック狩り」は、まだ終わっていない。

デ・リフトの移籍決定で、玉突きが起こる可能性は十分にある。後ろからの構築が、確固たるチームビルディングのために求められている。

スポーツライター

執筆業、通訳、解説。東京生まれ。スペイン在住歴10年。2007年に21歳で単身で渡西して、バルセロナを拠点に現地のフットボールを堪能。2011年から執筆業を開始すると同時に活動場所をスペイン北部に移す。2018年に完全帰国。日本有数のラ・リーガ分析と解説に定評。過去・現在の投稿媒体/出演メディアは『DAZN』『U-NEXT』『WOWOW』『J SPORTS』『エルゴラッソ』『Goal.com』『ワールドサッカーキング』『サッカー批評』『フットボリスタ』『J-WAVE』『Foot! MARTES』等。2020年ラ・リーガのセミナー司会。

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