「韓国の新庄」といえばこの人? 2人を知る阪神の元コーチの見解は
「韓国に新庄みたいな選手はいますか?」
この十数年、筆者は日本のメディア関係者から幾度もそう尋ねられた。しかし今季から日本ハムの指揮を執るBIG BOSSこと新庄剛志監督(50)は、現在はもちろん現役当時から誰もが認める唯一無二の存在だ。「新庄っぽい人」などなかなかいない。
しかし「いません」と答えるのは野暮なので、「強いて挙げるなら」と答えてきた人物がいる。ホン・ソンフン(44)だ。
1999年に慶熙大からトゥサンベアーズに入団したホン・ソンフンは、韓国を代表する捕手としてワールド・ベースボール・クラシック(WBC)などの国際大会にも出場。2009年から4年間ロッテジャイアンツでプレーした後、再びトゥサンに戻り、16年に引退するまで2046安打、208本塁打、1120打点、通算打率3割1厘を残した韓国のレジェンドプレーヤーだ。
ホン・ソンフンはその成績もさることながら、整った顔立ちと明るいキャラクターで人気を集め、数々のパフォーマンスでもファンを沸かせてきた。
「韓国の新庄、ホン・ソンフン」
果たしてこのフレーズは受け入れられるだろうか。新庄とホン・ソンフンの両者を知る人物に尋ねることにした。かつて阪神でトレーニングコーチを務め、14年にはトゥサンでも同職で活動した続木敏之氏(63)だ。
続木氏に2人について訊くと、「ははは、全然違います」と言って笑い、こう続けた。
「新庄は常に自分の世界、『俺はこうなるんだ』というビジョンを持っていて、『こうやったら面白い』というイメージが頭の中にできている選手でした」
「まだ新人で1軍に上がる前から、『僕には東京ドームでダイヤモンドを回っているイメージがあります。絶対にそうなります』と言っていましたし、槙原(寛己=巨人)から敬遠球を打った時も、以前から外した球を踏み込んで打つ練習をして、準備を重ねることでイメージを膨らませていました」
一方のホン・ソンフンについて続木氏は「会った時にはもうベテラン選手(当時37歳)だったこともありますが、自分のことを一生懸命やりながら、チームのキャプテンとして選手たちの意見をまとめて首脳陣に伝えにきていました。周りとの協調性がある選手でした」
続木氏に話を訊くと新庄とホン・ソンフン、どちらも華やかな振る舞いの一方で、野球への姿勢はいつも真剣という点は共通していると感じた。
ホン・ソンフンは引退後に渡米。パドレス傘下のチームでコーチを務め、現在は帰国し家族と共にテレビのバラエティー番組などに出演している。
ホン・ソンフンの自宅にファン・ジェギュン(KT)、ヤン・ウィジ(NC)が訪れた回(映像:KBS Entertain)
続木氏にホン・ソンフンの近況を伝えると「監督になった方がいいと思います」と未来の姿に期待を込めた。ホン・ソンフン自身もいつか現場復帰したいと考えているという。
日本では新庄の他、チーム生え抜きの元スター選手が監督を務めるケースが少なくない。一方、近年の韓国は指導者経験のない元チームマネージャーや、通算0勝の元スコアラーなどが監督に大抜擢される事例が見られる。現役当時の実績や知名度に頼らず、球団が考える野球観と一致する人物を選ぶのが主流だ。
もしホン・ソンフンが監督に就任するようなことがあれば、新庄ほどとはいかないまでも韓国国内では話題になるだろう。その時には日本の媒体で「韓国の新庄、監督に就任」という言葉を一度くらいは使ってみたいと思う。