夜中に台所で食事中の見知らぬ男と遭遇 取り押さえて死亡させたら処罰あり?
夜中に他人の住宅に侵入し、台所で勝手に食事をしていた男が家人に発見され、取り押さえられた。駆けつけた警察官が確認すると意識を失っており、搬送先の病院で死亡が確認された。家人は処罰されるか――。
どのような事案?
報道によれば、次のような事案だ。
「5日夜遅く、大阪府堺市の住宅で…この家に住む60歳の男性が、水を飲みに台所に行ったところ、見知らぬ男が椅子に座って、冷凍食品のパスタなどを食べているのに出くわした」
「男は、この家にあったTシャツを勝手に着ていて、男性が話しかけると『玄関から入ってきた』などと答え、逃げようとして暴れたため、同居する男性の父親が110番通報」「男性と隣に住む弟が一緒に、男を取り押さえた」
「警察官が駆けつけると…男は、意識を失っていて約1時間後、搬送先の病院で死亡」「男は…大阪府内に住む30代」
(2021年5月6日・読売テレビニュース)
男に住居侵入罪が成立することは間違いない。勝手にパスタを食べたという点も窃盗として評価される。窃盗犯が逮捕を免れるため、相手の反抗を抑圧する程度の暴行脅迫に及べば、より重い事後強盗罪に問われる。
ただ、既に死亡している男の刑事責任を問うことは不可能だ。
正当防衛の特例あり
一方、警察は男を司法解剖するなどし、死因の特定を進めているが、男性ら2人による制圧行為と男の死亡との間に因果関係が認められた場合、男性らは処罰されるだろうか。
私人でも現行犯逮捕は可能であり、男を取り押さえたこと自体は適法だろう。それでも、これを超える死亡の点については、改めて傷害致死罪や過失致死罪、重過失致死罪などの成否を検討する必要がある。
この点、刑法には正当防衛や過剰防衛の規定があるが、あくまで「急迫不正の侵害」に対するものでなければならない。その意味で、「逃げようとして暴れた」とか「取り押さえた」という部分の具体的な状況が重要となる。
ただ、1930年に制定された「盗犯等ノ防止及処分ニ関スル法律」には、正当防衛の特例が規定されている。
たとえ生命や身体などに対する現在の危険がなくても、窃盗犯による被害を防いだり、不法侵入した者を排斥しようとした際、恐怖や驚愕、興奮、狼狽によってそうした危険があると誤信し、現場で犯人を殺傷してしまった場合、処罰しないというのもその一つだ。
今回のケースがこれに当たれば、男性らが刑事責任を問われることはない。かなり珍しい事案だけに、警察による捜査の推移が注目される。(了)