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【伝説の序章】2016年9月3日、藤井聡太三段(14歳)リーグ1位通過で史上最年少四段昇段決定!

松本博文将棋ライター

 2016年9月3日。第58回三段リーグ最終戦、2局の対局がおこなわれました。

 三段リーグは原則的に上位2人が四段に昇段し、プロ棋士の資格を得ることができます。

 注目の藤井聡太三段は最終日を迎えた時点で12勝4敗。成績1位でした。しかし午前に始まった対局で坂井信也三段に敗れたため、一歩後退。ただし競争相手も敗れたため、午後から始まる最終戦で勝てば上位2人に入る「自力」の状態はキープしていました。

 最終戦で対戦したのは西山朋佳三段(当時21歳)。西山三段自身も女性初の四段昇段を目指す存在として大変に注目されていました。過去の対戦成績は西山三段が2戦2勝。藤井三段にとっても強敵です。

 先手番は藤井三段。西山三段は得意の中飛車から穴熊に組みます。対して藤井二冠は銀2枚を中段に進めて急戦を仕掛けていきます。

 一般的に昇段の一番といえば大変なプレッシャーがかかるもの。しかし藤井三段は終始のびのびと指し進めます。結果は111手藤井三段の勝ちとなりました。

 藤井三段の最終成績は13勝5敗。リーグ29人中1位の成績をあげて、堂々の四段昇段を果たしました。

 藤井新四段はのちに昇段の一番を自分で解説しています。

 現在の藤井二冠はどのような大きな勝負であっても堂々として、緊張などなさそうに見えます。しかし当時はこうした仕事や記者会見などでも多少の緊張はあったようで、初々しさを感じさせます。

 西山現女流三冠は、のちに次のように語っています。

西山「どっちが昇段の一番かわかんないぐらい私がプレッシャーかかって。内容も完敗で。はっきり力負けしたかなという将棋でした」

 現在の三段リーグの制度が1987年に始まって以来、難関のリーグを1期で抜けた例は、藤井三段を含めて8回しかありません。

 年度前期の三段リーグで昇段を決めた場合には、10月1日付けで四段に昇段します。藤井新四段は14歳2か月。加藤一二三四段(現九段)の14歳7か月を抜いて、史上最年少記録を打ち立てました。

 藤井新四段はデビュー戦で加藤一二三九段に勝利。以後はデビュー以来無敗で史上最高の29連勝を達成するなど、数々の信じがたい記録を現在進行形で打ち立てていっているのは、周知の通りです。

将棋ライター

フリーの将棋ライター、中継記者。1973年生まれ。東大将棋部出身で、在学中より将棋書籍の編集に従事。東大法学部卒業後、名人戦棋譜速報の立ち上げに尽力。「青葉」の名で中継記者を務め、日本将棋連盟、日本女子プロ将棋協会(LPSA)などのネット中継に携わる。著書に『ルポ 電王戦』(NHK出版新書)、『ドキュメント コンピュータ将棋』(角川新書)、『棋士とAIはどう戦ってきたか』(洋泉社新書)、『天才 藤井聡太』(文藝春秋)、『藤井聡太 天才はいかに生まれたか』(NHK出版新書)、『藤井聡太はAIに勝てるか?』(光文社新書)、『棋承転結』(朝日新聞出版)など。

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