新型コロナ オミクロン株の症状、経過、重症化のリスクは?のどの痛みが多い、重症化が早いなどの特徴が
2022年2月現在、全国で第6波を迎えており、かつてない規模で新型コロナウイルス感染症の新規感染者が増加しています。
オミクロン株による感染ではこれまでとどういった違いがあるのでしょうか。
新型コロナの典型的な症状、持続期間、重症化のリスクや典型的な経過などについて現時点での知見をまとめました。
オミクロン株の感染から発症までの期間は?
従来の新型コロナでは感染してから発症するまでの期間(潜伏期)は約5日とされていました。
これはインフルエンザの約2日と比較して長い潜伏期になります。
しかし、オミクロン株ではこの潜伏期が従来の新型コロナウイルスよりも短くなっているようです。
国立感染症研究所の疫学調査ではオミクロン株の潜伏期は約3日となっており、99%の人が感染してから7日以内に発症しています。
従来の新型コロナウイルスよりも潜伏期が約2日短くなっている、ということになります。
また、感染者と接した場合も7日以上経った後に発症することは稀ということになります。
オミクロン株の典型的な症状は?
従来の新型コロナウイルス感染症では、
・咳、息切れ、息苦しさ
・発熱、寒気
・筋肉痛、関節痛
・嘔吐、下痢
・嗅覚・味覚の異常
などの症状がみられました。
これらの症状は風邪やインフルエンザととてもよく似ていますが、息切れや嗅覚障害・味覚障害がみられることは稀ですので、嗅覚障害・味覚障害は新型コロナに特徴的な症状であり、もしあれば新型コロナの可能性を疑うきっかけになっていました。
しかし、オミクロン株ではこの新型コロナに特徴的であった嗅覚障害・味覚障害という症状の頻度が少なくなっています。
また、のどの痛み、鼻水といった風邪やインフルエンザでもよくみられる症状の頻度が増えています。
イギリスで行われた、オミクロン株に感染した18万人の臨床症状に関する調査が報告されました。
この調査では、頭痛、のどの痛み、鼻水といった症状がオミクロン株の感染者の半分以上でみられた、とのことです。
オミクロン株では重症化するまでの期間が短い
従来の新型コロナウイルス感染症では、発症からしばらくは軽症のまま経過し、一部の人では発症から約1週間を境に重症化することがありました。
しかし、オミクロン株ではこの重症化までの期間が短くなっているようです。
広島県健康福祉局からは、オミクロン株が主流である第6波の感染者は発症から中等症II(酸素投与が必要な状態)以上に悪化するまでの期間が3日の人が最も多いと報告されています。
これは、デルタ株が主流であった第5波の7日よりも4日短くなっていることになります。
第6波では、新型コロナが悪化して重症になる人に加えて、もともとの持病が新型コロナに感染して悪化することで重症になる人も多くいることも関係しているかもしれません。
新型コロナでは軽症のうちに抗ウイルス薬や中和抗体薬を使用することで重症化を防ぐことができるため、これまで以上に早期診断・早期治療が重要になってきます。
オミクロン株での無症候性感染者の頻度は?
新型コロナウイルスに感染しても症状が出ない人が一定の割合でいることが分かっており無症候性感染者と呼ばれています。
従来の新型コロナウイルスでは、子どもの約半分、成人の3分の1、高齢者の5人に1人が無症候性感染者と報告されています。
オミクロン株による感染者では、どれくらいの人が無症候性感染者になるのかについては、いくつか報告が出ています。
・南アフリカで2021年12月にHIV陽性の無症状者を対象に行ったPCR検査で31%が陽性だった。
・日本国内で12月27日までに診断されたオミクロン株による感染者109例のうち29例(27%)が経過中無症状で経過した
・沖縄県でのオミクロン株による感染者50名のうち、4%が無症状だった
・デンマークの初期の感染者785例のうち、20%が無症状だった
・ノルウェーの集団感染例81人のうち、1人(1.2%)のみが無症状だった
ということで、現時点では報告によって様々です。
また、無症候性感染者の頻度はウイルスそのものの性質だけでなく、感染者の免疫の状態(ワクチン接種済、過去の新型コロナの感染、自身の免疫抑制状態など)によっても変わってくると考えられます。
オミクロン株による重症化リスクは?
オミクロン株は、従来の新型コロナウイルスよりも重症化しにくいという報告が増えています。
・デルタ株と比較して、オミクロン株の感染者の入院リスクは約3分の1(イギリス)
・デルタ株と比較して、オミクロン株の感染者の入院リスクは0.2倍、重症化リスクは0.3倍(南アフリカ)
・デルタ株と比較して、オミクロン株の感染者のICU入室リスクは0.26倍、死亡リスクは0.09倍(アメリカ)
一方で、ワクチン接種による感染予防効果はオミクロン株に対しては大きく落ちるため、世界中で多くのワクチン接種者がオミクロン株には感染しています。
しかし、ワクチン接種による重症化予防効果は保たれていることから、ワクチン接種者は感染しても重症化することが少なくなっています。
このため、見かけ上オミクロン株の重症度が低くなっているという側面もあると考えられています。
ワクチン未接種者ではデルタ株と比較してオミクロン株の入院リスクは約25%低くなる程度にすぎない、と南アフリカ、イギリスからそれぞれ報告されており、これは最初に武漢市で見つかったオリジナルの新型コロナウイルスやアルファ株と同程度の病原性と考えられます。
つまりワクチン未接種者にとっては未だ大きな脅威と言えます。
また、日本よりも先にオミクロン株が広がったニューヨーク市では、年齢が高くなるほど入院率が高くなっており、これまで通り高齢者で重症化しやすいという傾向は変わりません。
新型コロナに感染した際に重症化しやすい持病(基礎疾患)は、
・悪性腫瘍
・慢性閉塞性肺疾患 (COPD)
・慢性腎臓病
・2型糖尿病
・高血圧
・脂質異常症
・肥満 (BMI 30以上)
・喫煙
・固形臓器移植後の免疫不全
・妊娠後期
・男性
であり、これはオミクロン株になっても変わらないと考えられます。
オミクロン株では重症化リスクが低くなっているとしても、感染者が爆発的に増えてしまえば結果として重症者は増え、実際に現在全国で医療の逼迫が起こっています。
また、極めて感染力の強いオミクロン株が市中で広がることで、全国的に医療従事者の感染者や濃厚接触者が増え病院機能の維持が困難になっており、救急搬送の困難事例が増加するなど新型コロナ以外の医療にも影響が出ています。
現在の状況を改善するためには、感染者を減らすことが重要です。
手洗い、3つの密を避ける、マスクを着用するなどの基本的な感染対策をこれまで通りしっかりと続けるようにしましょう。
特に会食や休憩室など「マスクを外した状態での会話」で感染したと考えられる症例が多いことから、誰かと食事をする際は人数は最小限にし、短時間で済ませ、黙食・マスク会食を徹底しましょう。
ご自身や周りの人を守るためにも、まだワクチンを接種していない方はぜひ接種をご検討ください。