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「良いくどい人」と「悪いくどい人」の見分け方

横山信弘経営コラムニスト
終わったことをくどくど言うと、パワハラになるかもしれません。(写真:アフロ)

■ くどいのは悪か?

「くどいですね。本当に、くどい。あなたみたいに、くどい人は他にいない」

私はよく、このように言われます。「くどい」「しつこい」と。しかし相手が怒っているかというと、そうではありません。だいたいが苦笑して言っているのです。「まいったな」と頭をかきながら。

世の中には「くどい人」がいます。何度も何度も、同じことを執拗に言い続ける人のことです。

しかし「くどい人=迷惑な人」というわけではありません。くどいぐらいに言ってくれる人がいるからこそ役立つ、ということもあるからです。

今回は、「良いくどい人」と「悪いくどい人」の見分け方を解説します。

■ ノウイング・ドゥイング・ギャップ

私は企業の現場に入って目標を絶対達成させるコンサルタントです。持ち味は「くどい」ことです。

頭ではわかっているのだけれども、なかなか行動に移せないことは誰にでもあります。

「知っていること:ノウイング(knowing)」「行っていること:ドゥイング(doing)」に差があることを、「ノウイング・ドゥイング・ギャップ」と呼びます。私どもの支援先企業にも、「ノウイング・ドゥイング・ギャップ」の状態の人がたくさんいます。私はそういう方に、淡々と同じことを執拗に言い続けます。

組織で決めたこと、もしくは、自分で「やる」と宣言したことをやらない人に、こういった姿勢を私は貫きます。

「先日、言いましたとおり期限通り、資料を提出してください」

「あ、はい。ごめんなさい。すぐにやります」

それでも、期限通りに提出されなければ、また私は繰り返します。

「先日、言ったとおり、期限内に、資料を提出してくださいね」

「わかってますよ。すぐにやります」

「わかってます」と言ったにもかかわらず、それでも提出しない方も、もちろんいます。ですから、私は別の日に、また淡々と指摘しつづけます。

「先日、言ったとおり、期限内に、資料を提出してくれませんか」

「わかってますって。……そんなにこの資料って大事なんですか?」

「期限内に、資料を提出することは最初に全員でコミットした事柄です」

これほど言ってもやらない人はやりません。しかし私は壊れたロボットのように、執拗に言いつづけます。根負けしません。プロですから。

「先日、言ったとおり、期限内に、資料を提出してくださいね」

「わ、わかりました……」

さすがに、4回も5回も同じことを言えば、相手が根負けするのが普通です。相手は大人ですから、たいていは聞いてもらえるものです。

大切なことは、淡々と言い続けることです。テクニックなど要らないのですが、なかなかこのように「くどくど」同じことを指摘しつづけられるマネジャーは存在しません。

■ 感情的になってはいけない

いちばんいけないのは、感情的になることです。

「どうして期限内に提出しないんですか? 何かできない理由でもあるんですか?」

「前も言ったじゃないですか。これで3回目ですよ」

このように、感情的になってしまうと「もう何を言ってもダメですね。勝手にしてください」と捨て台詞を言うなどして、相手が変わることを諦めてしまいます。

これは本当の思いやりとは言えません。私は部下に対しても同じように言います。

「エレベーターを乗り降りする順番がおかしいよ。順番はわかってるよね?」

「この前推薦した本読んだ? 読んだほうがいいよ」

1年でも2年でも、淡々と言い続けます。決して、

「いい加減、エレベーターを乗り降りする順番ぐらい覚えたらどうだ? ビジネスマナーぐらい勉強しなさい。お客様の前で恥ずかしいだろう」

「どうして私が勧めた本を読まないんだ? 勧めてからもう半年以上たってるだろう? 私が推薦した本だから読まないのか? ええ? どういうつもりなんだ?」

などと感情的にはなりません。相手が「やる」と言ったことであれば、事情が変わらない限り淡々と繰り返せばいいのです。

■ 終わったことを、くどくど言ってはならない

さて、「良いくどい人」と「悪いくどい人」はどう違うのでしょうか?

「良いくどい人」は始まるまでくどくど言いますが、「悪いくどい人」は終わってからくどくど言います。

ですから、終わってしまったことを、くどくど言うのはやめましょう。

「わかってたんだよ。今回の商談はうまくいかないって。あえて私は何も言わなかったけど、あんなことやってたらお客様から評価されないのは当然だ。なぜこうなったのか、君はわかってるのか? 最初から経緯を説明したまえ。だいたい、あんな提案書を作ってるからダメなんだよ……」

上司が部下に対してだけではありません。家庭の中でもよくあることです。

「ご飯を食べるのに、どうしてそんなに時間がかかってるの? 言ってみなさい。どうしてそんなに時間がかかったの? お父さん、聞いてよ。1時間前からずっと言ってるのに、この子、全然私の話を聞いてないのよ。誰に似たのかしら。本当にいやんなっちゃう。明日もこんなに時間がかかるんだったら、もう何も食べさせませんからね! いい? わかった? わかったか、ってお母さんは聞いてるの。返事ぐらいしなさいよ。さっきだってずっとテレビばかり観てたじゃないの。そんなにお母さんが作ったこのコロッケが美味しくないの……?」

終わったことをくどくど言うと、お互いの健康上よくありません。周囲の空気も悪くします。

やるまでは「くどくど」いきましょう。しかし終わってしまってからは「さばさば」しましょう。仕事でも家庭でも大事なポイントです。

「良いくどい人」をめざし、「悪いくどい人」にならないようにしたいものですね。

経営コラムニスト

企業の現場に入り、目標を「絶対達成」させるコンサルタント。最低でも目標を達成させる「予材管理」の理論を体系的に整理し、仕組みを構築した考案者として知られる。12年間で1000回以上の関連セミナーや講演、書籍やコラムを通じ「予材管理」の普及に力を注いできた。NTTドコモ、ソフトバンク、サントリーなどの大企業から中小企業にいたるまで、200社以上を支援した実績を持つ。最大のメディアは「メルマガ草創花伝」。4万人超の企業経営者、管理者が購読する。「絶対達成マインドのつくり方」「絶対達成バイブル」など「絶対達成」シリーズの著者であり、著書の多くは、中国、韓国、台湾で翻訳版が発売されている。

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