なぜレアルはチェルシーを”撃沈”できたのか?モドリッチの躍動とベルナベウの魔法。
ベルナベウに、再び魔法がかけられた。
チャンピオンズリーグ準々決勝、レアル・マドリーはセカンドレグで本拠地サンティアゴ・ベルナベウにチェルシーを迎えた。ファーストレグを3−1で制した後、セカンドレグを2−3として2試合合計スコア5−4でベスト4進出を決めている。
「我々は失望している。個々の選手のクオリティが十分ではなかった。大事な時間帯にミスを犯してしまった。少し運がなかった。チャンスは生かさなければいけない。レアル・マドリーのように、だ。マドリーが相手で、2つのボールロストを許してはくれなかった」
これはチェルシーのトーマス・トゥヘル監督の言葉だ。
ファーストレグを落とした後、トゥヘル監督は逆転が難しいと認めていた。それでも、セカンドレグではしっかりと手を打ってきた。3バックから4バックに変更して、ジョルジーニョを先発外に。ルーベン・ロフタス・チークやティモ・ヴェルナーがスタメンに名を連ねた。
一方で、マドリーはプランを変えなかった。カルロ・アンチェロッティ監督は【4−3−3】を継続して、1stレグと同様にバルベルデを右ウィングに起用。出場停止のエデル・ミリトンに代わりナチョ・フェルナンデスが入った。「我々は苦しんだ。2点差にされるとは思っていなかったが、セットプレーの場面ではミリトンがおらず厳しかった。0−2にされた時には精神的なショックがあった」とはアンチェロッティ監督の弁だ。
マドリーはアウェーでの一戦と同じようにバルベルデを右SBまで下げて瞬間的に5バックを形成した。だがシャドーのメイソン・マウントやカイ・ハフェルツにアンカー(カゼミーロ)の脇のスペースを使われ、5バックの手前で起点をつくられた。
マウント、アントニオ・リュディガー、ヴェルナーの得点でチェルシーが優勢に試合を進めた。サンティアゴ・ベルナベウに意気消沈のムードが漂い始めたところで、ルカ・モドリッチが現れた。モドリッチの芸術的なアウトサイドのクロスが、ピンポイントでロドリゴ・ゴエスの足元に届いた。“ミスター・チャンピオンズ”の異名をとったクリスティアーノ・ロナウドのようなボレーシュートで、ロドリゴがネットを揺らした。
そして、最後に試合を決めたのはカリム・ベンゼマとヴィニシウス・ジュニオールだった。
延長突入後、チアゴ・シウバとエンゴロ・カンテの連携ミスをついたエドゥアルド・カマヴィンガが、ヴィニシウスにスルーパスを送る。ヴィニシウスのソフトなクロスに、ベンゼマがヘディングで合わせてマドリディスタに歓喜が届けられた。
ベンゼマ(今季38試合38得点13アシスト)、ヴィニシウス(41試合17得点15アシスト)とアンチェロッティ・マドリーの攻撃を牽引してきた2選手が、やはり大舞台で仕事をした。
「0―3になり、我々は逆に解放された。その時、このスタジアムの、このクラブの魔法があらわれた。その魔法は(ダニ・)カルバハルのセンターバックでのプレーを助けた。準決勝に進むためのエネルギーになった」とはアンチェロッティ監督の言葉だ。
「私は試合に負けるとは決して思わなかった。というより、サンティアゴ・ベルナベウのゲームで負けると思ったことは一度もないんだ」
パリ・サンジェルマンに続いて、本拠地ベルナベウでマドリーはチェルシーを撃破した。イタリア人指揮官が語るように、魔法のような夜が、そこにはあった。
起死回生のゴールのシーンでは、モドリッチ(36歳)のアシストでロドリゴ(21歳)が得点を記録した。
試合終了のホイッスルが鳴った時、ピッチ上にトニ・クロースやカゼミーロはいなかった。一方で、カマヴィンガ、マルセロ、ダニ・セバージョス、ルーカス・バスケスらが戦っていた。若手、ベテラン、補強選手、カンテラーノが融合するように、ひとつのチームが生み出された。
これは奇跡などではない。レアル・マドリーというクラブの歴史とマドリディスタの誇りをもってして、ベルナベウの魔法の夜が演出されたのである。