後ろに上空寒気を示す低気圧を伴なった南岸低気圧による雪
金曜日は、本州の南海上を前線を伴なった低気圧が通過して太平洋側で雪が降りやすい気圧配置となっています(図1)。
気象庁が発表した東京都心の金曜日の予報が「雪か雨」から「雨か雪」に変わりました。
これまで「どちらかというと雪の可能性が高いという予報」が、「どちらかというと雨の可能性が高いという予報」に変わったのです。
太平洋側の大雪と南岸低気圧
寒気の吹き出しが弱まる2~3月になると、東シナ海から本州の南岸に前線が現れやすくなります。この前線上に低気圧が発生し、南西諸島を通って四国と本州の南岸沿いを東北東から北東に進むので、南岸低気圧と呼ばれています。
南岸低気圧は発達しながら進むことが多く、太平洋沿岸では大雨や大雪、強風、高波に警戒が必要となります。
普段は雪が降らない太平洋側の雪ですので、気象情報に注意し、雪に不慣れなことからくる転倒事故等に注意が必要です。
平成26年2月13日に南西諸島近海で発生した低気圧が、16日にかけて発達しながら本州の南岸を閉塞しながら北東へ進みました(図2)。南岸を通過中に閉塞することは珍しいのですが、低気圧が陸上にかかったといっても、上空にだけの暖気ですので、雨に変わることなく雪として降り続けました。
このため、14日夜から15日にかけて、関東・甲信、東北地方で記録的な大雪となり、大きな被害が発生しました。
甲府市では1時間に1~9センチメートルの降雪が続いて積雪が114センチメートルと、119年の観測で最大であった49センチメートルを大幅に上回りました。県庁所在地の積雪の記録でいえば、甲府は、新潟市の120センチメートルや山形市の113センチメートルと並んだのです。
後ろに上空寒気を示す低気圧
金曜の南岸低気圧は、後ろに前線のない低気圧があるという珍しい特徴をもっています。
これは、低気圧の後ろ側(西側)に、氷点下42度以下という非常に冷たい寒気が入っていることを反映してできた低気圧です。
南岸低気圧による雪は、2から3月に多いということからわかるように、昔から「春を告げる雪」とも言われてきました。
大雪が降っても、真冬とは違って春を感じさせる要素もあるのですが、今回の南岸低気圧は、春を告げるどころか、冬へ逆戻を告げる低気圧です。
非常に冷たい寒気に伴う低気圧は、大気の状態が不安定ですので、日本海側の陸地(平地)にかかると、そこでは暴風と大雪となる可能性がありますので警戒が必要な低気圧です。
しかも動きが遅い低気圧で、油断できません。
南岸低気圧通過後は日本海側と太平洋側で全く違う天気
南岸低気圧の通過後、西高東低の冬型の気圧配置となります。
このため、寒気が南下して全国的に寒くなり、日本海の地方では雪、太平洋の地方では晴れと全く違った天気となります(図3)。
東京と新潟の気温を比較すると、最高気温は晴れている東京のほうが高いのですが、最低気温になるどほとんど変わりません。
日本海側の地方では、再び大雪がふる可能性がありますが、特に、雪崩に注意する必要があります。
一週間位前に大雪が降ったあとに気温が上がり、その後の寒気で固まっていますので、その上に積もる新雪は滑りやすいからです。
雪崩注意報は、発表期間が長い注意報ですが、雪崩の危険性が同じではなく、一旦暖かくなったあとに降る大雪では、「表層雪崩がおきやすいので危険」という認識が必要です。
冬の最中に発生する表層雪崩は、雪崩が発生しなかった場所で発生したり、雪崩の走路が思わぬ場所まで達するからで、過去にはひとつの雪崩で158名が死亡した例もあります。