Yahoo!ニュース

【NHL】ホームラン王のハーパーも大興奮! 創設1年目のベガスがスタンレーカップファイナルに進出!!

加藤じろうフリーランススポーツアナウンサー、ライター、放送作家
MLBのMVPや本塁打王に輝いたワシントンナショナルズのブライス・ハーパー(写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ)

 4月11日(現地時間)から始まった今季のNHLのプレーオフは、東西両カンファレンスのチャンピオンが決まりました。

 イースタン カンファレンスを制したのは、ワシントン キャピタルズ」!

 対してウエスタンを勝ち上がって来たのは、ベガス ゴールデンナイツ」!

 両チームによる”頂上決戦”は、明後日にラスベガスのT-モバイルアリーナで、第1戦が行われます。

▼今季最大のサプライズ

 今季のNHLで最大のサプライズと言えば、何と言っても、ベガスの躍進

 2000年秋にコロンバス ブルージャケッツと、ミネソタ ワイルドが加わって以来、17季ぶりの新規加盟チームとなるベガスは、「NHL31番目のチーム」であるだけでなく、「ラスベガスに初めて誕生した北米4大スポーツ(NHL、NBA、NFL、MLB)チーム」として、大きな話題になりました。

 

▼ライバルを圧倒したベガス

 高くはなかった前評判と打って変わって、ベガスは北米4大スポーツで、史上初のリーグ加盟初年度にディビジョン(地区)優勝を達成(リーグが創設した年は除く)

 プレーオフに入ってからも勢いは衰えず、ベストオブ7(7回戦制)の3つのラウンドを戦って喫した黒星は、わずか3敗のみ(15試合)。ライバルチームを圧倒する強さで、ウエスタン カンファレンスを制しました。

▼ワシントンとベガスを築いた男

 ベガスの舵取り役を担ったのは、初代GMに指名された ジョージ・マクフィー(59歳)

 ニューヨーク レンジャーズと、ニュージャージー デビルスに7季在籍したものの、選手(FW)として目立った働きができず、31歳の若さでリタイアしたマクフィーは、チームオペレーション役に転身。

 バンクーバー カナックスで、チームオペレーションの職を5季にわたって務めたあと、ワシントン キャピタルズのGMに抜擢されると、いきなり1年目に、チームを初めてのスタンレーカップ ファイナルへ導きました!

▼ヤーガやオベチキンがワシントンに!

 その後もマクフィーは、全盛期のヤロミール・ヤーガ(FW・46歳・現リティリィ クラドノ)を、ピッツバーグ ペンギンズから移籍加入させたり、低迷したシーズンに得たドラフト全体1位指名権を用いて、アレックス・オベチキン(FW・32歳/下の写真左)を指名するなど、核となる選手の獲得に着手。

アレックス・オベチキン(左)を全体1位指名したジョージ・マクフィーGM(Courtesy:@USAHMagazine )
アレックス・オベチキン(左)を全体1位指名したジョージ・マクフィーGM(Courtesy:@USAHMagazine )

 この他にも、プレーメイクに長けたニクラス・バックストローム(FW・30歳)や、屈指のスキルを有するエフゲニ・クズネツォフ(FW・26歳)など、現在の中心選手たちを指名し、ワシントンの強化に注力してきた人物です。

▼解任通告のち初代GM就任

 しかしマクフィーは、4季前に短期的視点でのトレードを数多く仕掛け迷走した末、7季ぶりにプレーオフ進出を逃したことから解任され、アシスタントGMのブライアン・マクレラン(59歳)が後任に昇格。

 そのためマクフィーは、ニューヨーク アイランダーズや、チームカナダ(シニア男子代表)の仕事に携わっていましたが、長年にわたるチームオペレーションの経験を買われ、ベガスの初代GMに招かれました。

▼GMに見込まれたディフェンスマン

 GMに就任したマクフィーに見込まれてベガスへやって来たのが、ネイト・シュミット(DF・26歳)です。

ネイト・シュミット(@TSN_Sports)
ネイト・シュミット(@TSN_Sports)

 ミネソタ大学在学時に高い評価を受け、21歳の春にマクフィーがGMを務めていたワシントンと契約すると、すぐさまAHL(=アメリカンホッケーリーグ・NHLの一つ下のリーグに相当)でプロデビュー。

 翌年以降も年々力をつけていき、一昨季からはワシントンのレギュラーポジションを獲得しました。

▼2度目のラブコール

 シュミットの運命を変えたのが、昨年6月に行われたエクスパンション ドラフト

 17季ぶりに開催された「エクスパンション ドラフト」は、翌シーズンから「31番目のチーム」として新規加盟するベガスが、ルーキーや戦力外になった選手を集めるだけでは、満足な戦力強化に至らないため、既存の30チームから一人ずつ選手を指名するもの。

 その席でベガスのマクフィーGMは、ワシントンの選手の中からシュミットを指名!

 ミネソタ大学在学時に続いて、マクフィーGMから”2度目のラブコール”を受けたシュミットは、新天地で奮起!

 ベガスの全選手の中で最も長いアイスタイム(=出場時間)を記録しているのが示すように、ジェラルド・ギャラントヘッドコーチ(54歳)が信頼を寄せるディフェンスマンです。

▼MLBのホームラン王が声援を送るのは・・・

 シュミットと同様に、ワシントンからベガスへと移った男がいます。

 それは、3季前にナショナルリーグ(MLB)のMVPやホームラン王に輝いた ブライス・ハーパー(ワシントン ナショナルズ・25歳)!

 と言っても、もちろんハーパーが移籍したわけではありません。

 同じワシントンD.C.をホームタウンとしている縁から、ハーパーはNHLのワシントンを応援。

 選手との交流があるだけに限らず、NHLのプレーオフシーズン中に行われたナショナルズパークでのホームゲームで、試合後にヒーローインタビューに臨むと、開口一番、、、

「Let's Go CAPS(=ワシントン キャピタルズの愛称)!」と叫ぶほど、熱い声援を送っていました。

 ところが、その後ハーパーは心変わり。

 選手にチーム(NHLのゴールデンナイツ)ロゴの入ったバットを、プレゼントするほどのベガスファンになったのです!

▼元カレ(!?)を裏切ってラブコール

 まるで元カレ(!?)を裏切ってラブコールをするような豹変ぶりですが、それもそのはず! ハーパーはラスベガス出身 !!

 地元に誕生した初めての北米4大スポーツのチームとあって、心変わりしてしまうのは、やむを得ないかも???

 クリスマス直前(12月23日)に、T-モバイルアリーナで行われたワシントン戦は、オフシーズンだったこともあって、始球式ならぬ、セレモニアル パックドロップ(=試合開始前にパックを両チームの選手の間に落とす)に招かれたハーパー。

 しかし、今はMLBシーズン真っ只中だけに、さすがに故郷での観戦は難しそうですが、(現時点で)試合が組まれていない4日は、ワシントンD.C.での試合を観戦するハーパーの姿が、キャピタルワン アリーナで見られるかもしれません。

フリーランススポーツアナウンサー、ライター、放送作家

アイスホッケーをメインに、野球、バスケットボールなど、国内外のスポーツ20競技以上の実況を、20年以上にわたって務めるフリーランスアナウンサー。なかでもアイスホッケーやパラアイスホッケー(アイススレッジホッケー)では、公式大会のオフィシャルアナウンサーも担当。また、NHL全チームのホームゲームに足を運んで、取材をした経歴を誇る。ライターとしても、1998年から日本リーグ、アジアリーグの公式プログラムに寄稿するなど、アイスホッケーの魅力を伝え続ける。人呼んで、氷上の格闘技の「語りべ」 

加藤じろうの最近の記事