世界チャンプの傍にいる「叫び屋」
WBA/WBC/IBF/WBO統一ウエルター級タイトルマッチの10日前にラスベガスで行われた公開練習の映像を見直した。テレンス・クロフォードのチームには、<叫び屋>がいた。
私服姿で、「テレンスこそ、2階級で4団体を統一するチャンピオンだ!」「見ろ!この動きこそ、3階級制覇王者に相応しい!!」「彼以外に、一体誰がパウンド・フォー・パウンドだって言うんだ!」等と、がなり立てていたのである。
下の写真で赤コーナーのポスト前に立つ彼だ。その名をバーナード・デイビスという。
SHOWTIMEはアシスタントトレーナーと表していたが、クロフォードを技術的にサポートするタイプではない。そんなデイビスの姿を目に留めながら、マイク・タイソンの傍らにも「叫び屋」がいたことを思い出した。
クロコダイルなるニックネームで呼ばれていた巨漢で、記者会見や計量の際、タイソンよりも5分ほど早く登場しては「ヘビー級の歴史上、最強の男がまたKO劇を見せる!」「彼こそ、本物のIron(鉄の男)だ!」「マイク・タイソンは統一ヘビー級王者が似合う!!」と大声を出していたものである。
トーマス・ハーンズは、弟のビリーにそんな役を宛がっていた。
テレンス・クロフォードは理詰めのボクシングを見せ、スマートな戦い振りで圧勝したが、トレーニング時は己を駆り立ててくれる「叫び屋」を必要としていたのか。
超一流のチャンピオンの陣営には、こんな仕事もあるらしい。……が、王者がリングを降りた後は、彼らは何をするのだろう。クロコダイルは、今、どうしているのか。ちょっと気になっている。