レノファ山口:再びの5連勝、J3第1クールの"首位"確定。盛岡に4発快勝
3回戦総当たりで行われる明治安田生命J3リーグ。その1つ目のクールは残り一つのカードを残して山口の首位が確定した。5月17日の第12節・グルージャ盛岡戦を4-0で勝ち今季2度目の5連勝。次節は第1クール最終戦となる町田ゼルビアと敵地で対戦し、厳しい戦いも予想される2回戦目の戦いへと入っていく。
J3第12節 山口vs.盛岡 試合経過-スポーツナビ
4ゴール奪うも、運動量は不足
相性のいい維新百年記念公園陸上競技場(山口市)に、最下位のグルージャ盛岡を迎えたゲーム。スコア上は4-0の"圧勝"となったが、上野展裕監督は「内容が良かったわけではない」と振り返った。「盛岡さんのほうが動いてチャンスを作ったが、我々は引いて危ない場面もあった。(得点後に)気を抜いたこと、寄せなかったこと、運動量が少なかったこと。盛岡さんの方が動かれた」。その言葉の通りに山口はいつものハイプレッシャーと敵陣でのポゼッションが十分には繰り出せなかった。暑さやジャッジの向きなどが重なって集中を途切れさせたことも要因に挙げられるが、「この気候に慣れているのは山口」と上野監督。ただ、チームプレーが崩れるまでには至らず、少ないチャンスを効果的にゴールへと結びつけたことが、山口に4得点をもたらした。
先制は前半5分。ボールを保持していた盛岡のGK横山卓司にFW岸田和人が積極的にアプローチ。十分なクリアができずにこぼれたところを、得点ランキングトップに立っている島屋八徳が冷静な判断でGKの上を越すシュートを放ち、相手の出鼻をくじく1点を奪う。「半分はキシ(岸田)のゴール」と島屋。岸田の粘り強さを受け継いだ形のゴールについては「嬉しかったが半分はキシだったので、(岸田に)アシストで返そうと思ったが、今日はできなかった。次はアシストしたい」と話した。さらに前半19分には右からのコーナーキックを福満貴隆が決め、早々に2-0とする。
山口らしさが顕著に失われてしまうのがこの2点目を得てからだった。「悪い癖と言いますか、気を抜いてしまったのかなと」と上野監督。テクニカルエリアに出て身振り手振り選手に指示を送って要所を締めることはできたが、前半の終盤にかけては盛岡に攻め込まれ、後半も相手の猛攻を受ける形でゲームが再開することになる。特に盛岡は後半、「前半の失点が重くゲームプランが崩れた中で、後半は行くしかないと。多少足が止まるかなという不安のある中でしたが、(前に)行かせました」(鳴尾直軌監督)とリスクを覚悟の上での攻撃的なライン設定に出る。実際にゴールに近い位置まで迫り決定機を創出。後半23分、ペナルティエリア内から振り抜かれたチョン・フンソンのシュートが左のポストを叩くと、直後には右サイドをオーバーラップした守田創のクロスに木村勝太がゴール前でボレー。このシュートも右に外れるが、盛岡は重心を前に移した利点を生かしてゲームを動かそうとする。
生かした速攻。後半も2得点
ただ、その高い重心がゆえ、「山口の速攻、攻撃は不安だったが、その部分が出てしまった」と鳴尾監督。承知の上での戦法であった以上、それはやむを得ないが、盛岡がチャンスを作っていくのと同じように山口もしたたかに最終ラインの背後を狙ってチャンスメーク。後半5分には島屋の縦パスを庄司悦大が華麗にフリックするなどペナルティエリア内で美しく繋ぎ、最後は鳥養祐矢がネットを揺らした。「みんなが連動して取れた得点。いい連係があった」(鳥養)。その勝利を決定づける3点目のあとも後半21分にはカウンターから少ないタッチで敵陣に運び、「点差もあったので思い切ってシュートに行きました」と笑みを浮かべた福満がミドルシュート。リードをさらに広げると守備でも体を張ったシュートブロックが効き、山口のクリーンシートでホイッスルを迎えた。
後半の山口はシュートわずかに4本。そのうちの2本が決まり、決定力の高さと、内容の悪い中でも勝ちきる勝負強さを見せつけた。3点目のゴールを決めた鳥養は、今節への構えとして「(盛岡は)気持ちをぶつけてくると思ったので、足下をすくわれないように強く気持ちを持って戦おうとした」と話し、相手の順位を意識することなく強いメンタリティで試合に入った。気負わず、首位に甘んじない姿勢が山口を強くしている。鳥養は「練習でやっていることが試合でできている」とする反面、「勝ってはいるが気が抜ける場面やミスが続くこともある」と反省点も忘れない。上野監督も第1クールの首位確定については「もっとできたかなと思うが、初めてJ3に上がった中で少しずつ狙いのサッカーはできつつある。まだのびしろは大きい。しっかり練習しないといけないので、(選手たちに)練習するぞと言ってきました」と語気を強めた。
破れた盛岡も、攻める姿勢を出し続けた。無策の敗戦ではなかった。「悔しい思いをさせてしまって申し訳ないなと思います」と険しい表情の鳴尾監督だったが、「本当に多くのチャレンジをしながら前に進もうという気持ちは消えていないので、気持ちの伝わるゲームをして初勝利を届けたい」と話し、ホーム連戦となる次節以降に目を向けていた。
第2クールへ。下関でも好ゲーム誓う
山口はこのあと控える5月31日と6月14日のホームゲームが下関市営下関陸上競技場での開催となる。昨季はあまり相性の良くなかったスタジアム(そして何の因果か、関門海峡を挟んで対岸のJ2・ギラヴァンツ北九州のホームゲームと日程が重なることになる)。維新公園のある山口市で沸騰するレノファ熱が今年は山口県西部まで広がるか。「まず我々のサッカーをやり続けたい。下関や周辺の方が楽しみに来ていただき、また来たいなと思っていただけるような試合をしたいと思う」(上野監督)。第2クールは山口への研究が進み、試合はより難しくなるだろう。それでもスタジアムが沸き上がるサッカーを目指す意志はブレない。山口発、山口県全体を巻き込む襷となる。
(レノファ山口のレポート記事は次回は6月20日のYS横浜戦を予定しています)