『情報銀行』と言う名の個人情報の売買システムのカギは『同意』の認知にある
KNNポール神田です。
■いったい『情報銀行』って何?
『銀行』という名前がついているが、『おカネ』を原資とした『金融』の『銀行』のハナシではなく、『個人情報』を預かり、その『個人情報を運用・活用する事業者』のメタファーとして『情報銀行』と呼ばれるようになった。ネット巨人のGoogleやFacebook、Amazonなども個人情報を、ユーザーの許可の上で『預かり』、広告などに、運用・活用して利益を得ている。それまでの『広告』は『広告スペース』という場所に出稿してもらうビジネスだったが、現在の広告は『個人情報』をもとに匿名化された個人に対して『マッチング』できる広告情報の提供が可能となる。
広告だけであれば、理解しやすかったが、たとえば『キャッシュレス』の『QRコード決済』の事業者であれば、『購入履歴』『購入金額』『購入場所』『行動時間』『行動履歴』に基づく『広告』だけではない『キャンペーン』や『プロモーション』を打つことも十分に可能となる。
個人名は匿名化されているとはいえ、名前よりも重要な『個人のパーソナリティ面』にまで踏み込める可能性がある。
たとえ、個人は『匿名化』されていても、ネットのデータ上での個人にフィットした情報を常にAIが分析し、あなたが活動する時間や場所、曜日や天気にあわせておすすめしてくるのだ。もしかすると健康状態にまで、勝手に推し量ってくれることだろう。
それは、理解した上で個人情報を『預託』している人には良いが、勝手に個人情報を『搾取』されている人にはとっても気持ちが悪い…。
そしてこれからの『情報銀行』は、『同意を得た上で他者に提供する企業』となっている。
しかし、個人はどこでいつ『同意』したかのが、実はまったく理解していない。それは、長ったらしい『利用規約』を読まないと使えないみたいなところを『情報銀行の利用を許可する』みたいなシンプルな構造で認知させる方法と理解が必要だ。
■TSUTAYAの『Tポイント』が隆盛した時代
『情報銀行』を語る前に、レンタルビデオのTSUTAUYAのビジネスを思いだしてほしい。
『Tポイントカード』を発明したTSUTAYAを運営する『カルチャコンビニエンスクラブ(CCC)』の個人データ仲介ビジネスは、レンタルビデオやDVDのレンタルする会員登録情報をベースに、属性にフィットしたプロモーションを展開できる企画が画期的であった。
40代男性のバツイチだった『わたし』は、毎週金曜日の深夜にアクション系の洋画と18禁の巨乳系DVDを借り、月曜日に返すという性癖、いや習慣があったとしよう。そんな『わたし』がTポイントを使えるお店で利用した行動履歴は蓄積され、マーケティングデータとして『Tカード』に利用される。そして、個人情報を提供する代わりに『Tポイント』というリワードが『Tポイント加盟店』のネットワークから『わたし』はもらえる。そうやって『Tポイント』に加盟する一業者一社の中で『ポイントによる回流力』を生んだ…。
Tカード誕生から、16年経過、市場環境は大きく変わり、さらに今年は、2019年QRコード決済が乱立状態である。そこに『情報銀行』のルールの統一化がでてくる。
■『ウーバーイーツ』のドライバーでも簡単にわかる個人の嗜好
筆者は『ウーバーイーツのドライバー』もしているが、太陽に当たることができ、ジムの代わりになること以外に『ウーバーのAI』になったつもりになれるメリットがある。これは、デリバリーをしてみてわかったことだ…。
お昼前に『マクドナルド』をデリバリーする人の属性は、朝昼兼用の水商売の人が多く、お昼すぎに『タピオカ』のデリバリーを頼む人は富裕層の女子やマダムが多いなど、『時間×商材×性別』でマーケティングができることが容易に想像できる。お昼前のマクドナルドの人には、二日酔いのサプリメントや、タピオカを注文する人には、他のスイーツのクーポンがあれば良いということが経験値として個人ドライバーでもわかる。これを『ウーバーイーツ』の『AI』が、ビッグデータでプロモーションとして、利用すれば、毎度のオーダーのついでに『プロモーション』画面を挿入できる。初回が無料で気に入ってもらえれば、リピーターになってもらえる。
■スカパーの利用料金割引システム
スカパーは2019年7月から『情報銀行』で視聴料金の割引を開始する。スカパーは、本人の同意を得て、データを流通させる『情報銀行』のスキームで、視聴履歴や好きなスポーツチームの嗜好を外部企業に提供する対価として、視聴料の割引に数百円単位で応じるという。
https://tech.nikkeibp.co.jp/atcl/nxt/news/18/04929/
スカパー!の顧客基盤を活用した新規事業として「LIFE育成事業の育成」を明言しているが、そのひとつとして、契約者のパーソナルデータを活用する「スカパー!情報銀行プラットフォーム」の実現を目指す。
スカパーJSATが18年度通期決算を発表。FTTH再送信サービス拡大をベースに、多チャンネルサービス契約増へ
https://this.kiji.is/499179663219508321?c=493473239399466081
今後は、このような『情報銀行』に同意すれば、得をするというサービスが増えてくることだろう。
■『統一されたデータ仕様』と『データポータビリティー』最大の課題は『同意』の認知
『情報銀行』で必要なのは、取り扱う個人の『統一されたデータ仕様』と、それをユーザーが自由に、自分で『管理』できること、または、他の事業者に携帯電話番号の『MNP』のように、自分のデータを完全に移動できる『データポータビリティー』の権利であるだろう。
事業者がそれぞれ勝手な『利用規約』で同意を求めるのではなく、統一された政府ポータルの『情報銀行』の利用規約で『同意』を得ることが必要だろう。それと同時に、自分がどれだけの企業に『情報銀行』の利用に『同意』しているかの『可視化』も重要だ。「PDS(Personal Data Store)」の有効活用だ。
まずは、ユーザーが自分で何を『同意』しているのかを知る権利を与えることが『情報銀行』事業の最大の課題であると思う。
■「PDS(Personal Data Store)」 のしくみをどこが運用するのか?
「個人が自らパーソナルデータを事業者に与えるかどうか管理できるシステム」のことを総務省は「PDS(Personal Data Store)」と定義している。
あくまでも、この「PDS」を個人が『同意』した上で運用できることが重要だ。
■政府の『情報銀行』関係団体リスト
内閣官房 IT戦略本部『データ流通環境整備検討会』
https://www.kantei.go.jp/jp/singi/it2/senmon_bunka/data_ryutsuseibi/dai2/siryou2.pdf
https://www.kantei.go.jp/jp/singi/it2/senmon_bunka/data_ryutsuseibi/kentokai.html
内閣府『戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)』
https://www8.cao.go.jp/cstp/gaiyo/sip/
総務省 『情報信託機能の認定スキームの在り方に関する検討会』
http://www.soumu.go.jp/main_sosiki/kenkyu/information_trust_function/index.html
情報信託機能に関する検討の概要