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在宅勤務でついに絶滅寸前? 「指示待ち部下」と「指示だけ上司」

横山信弘経営コラムニスト
「指示待ち部下」と「指示だけ上司」(写真:アフロ)

■「顔を見ると用事を思い出す」という法則

在宅勤務ではなく、オフィス勤務を好む人は、「指示待ち部下」「指示だけ上司」の傾向が強い。

「指示待ち部下」が在宅勤務に向いていないのは、もう説明する必要がないだろう。人間というのは、顔を見ることによって何か用事を思い出す、そういう生き物だ。

部下がオフィスにいて、上司がその部下の顔を見るから、

「ちょうどいい。こういった資料、つくってくれないかな」

「3時から打合せがあるから、君も出ないかね」

と依頼することができる。

もし部下が在宅で、オフィスにいなければ上司に指示されることがない。そのため、仕事が任されなくなっていって、「指示待ち部下」はやることがなくなっていく。こういう原理だ。

当然、会社としても、このような主体性を発揮できない組織メンバーに対し、それなりの評価をすることになる。ちなみに「顔を見ると用事を思い出す法則」というのは、いろいろなところで垣間見ることができる。

本題から少し脱線するが、事例を書きだしてみよう。

まず第一に挙げられるのが営業活動だ。まさに典型例だろう。営業がお客様のところへ定期的に足を運ぶ。だからこそ「ちょうどいいときに来た」とお客様に言われるのである。

「実は先週、社内でこのような課題が持ち上がったんだけど、こういうソリューション、あなたの会社で提案できませんかね」

といった具合に声をかけられる。また、夫婦間でもそうだ。

残業が減って家に帰るのがはやくなると、とたんに奥様から家事や育児を任されるようになる。

「はやく帰ってきたんだから、子どもをお風呂に入れてくれない?」

という具合に。一所懸命に業務効率化してはやく帰宅できても、自宅でまた別の仕事を依頼されるのであれば、複雑な思いを抱くサラリーマンも多いことだろう。

このように、人の顔を見ると多くの人は何らかの仕事を思いつき、無意識のうちに依頼したくなるものだ。そしてこの原理をうまく活用し、それをアテにして日々仕事をしている、という人がいてもおかしくはない。その代表例が「指示待ち部下」というわけだ。

しかし在宅勤務になると、こういった「指示待ち部下」は顔が見られないものだから、上司から指示されることがなくなる。指示を待っているのに、いつまでたっても仕事が来ないという状態に陥るのだ。

■「指示だけ上司」って?

「指示待ち部下」の問題は、本来自分自身に割り当てられている仕事の目的を理解できていないことだ。そのため、日々「発生」する仕事にしか意識を向けていない。みずから「設定」して仕事を生み出すことができないので、在宅勤務になるとすぐさま仕事がなくなる。

いっぽう上司にも、在宅勤務になるととたんに力を発揮できなくなるタイプがいる。

これが「指示だけ上司」だ。

「あれをやってくれ」「これをやってほしい」と指示だけする上司は、組織マネジメントの本質を理解していない。

組織マネジメントの本質は、当然のことながら組織目標を達成させることである。

組織目標を達成させるための行動計画があり、その計画どおりに実行したか。そして実行した結果、目標に近づいているのかを検証し、継続改善を主導するのがマネジャーの務めである。

にもかかわらず、行動の「指示」だけするということは、マネジメントサイクルをまわしていない、ということに他ならない。

こういう「指示だけ上司」も、オフィス勤務を好む。

なぜかというと、ここでも先述した法則が深くかかわっている。「人間は、顔を見ることによって何か用事を思い出す」という法則だ。このような上司は、いつも部下の顔を見て指示をするだけだ。その後、その仕事がどうなったのかを検証する気がない。

なぜ、それがわかるか?

私は現場に入って支援するコンサルタントであるから、部下に指示を出すマネジャーに対し、

「その指示にはどんな意味がありますか? そして、その行動が正しく組織目標の達成に繋がったか、いつ、どう検証しますか?」

と尋ねても、ほとんどのマネジャーが答えられないのだ。そんな上司であるから、当然、指示を出したあとのことまで考えていない。

「指示だけ上司」が、

「とりあえず、この分析をまとめてくれないかな」

と言えば、

「指示待ち部下」が、

「かしこまりました」

と言い、それをやるだけ。それ以上でもそれ以下でもない。部下は仕事が終わったあと報告もしないし、上司もまた報告がないことなどイチイチ気にしない。指示をして、投げっぱなしなのである。

だから「指示だけ上司」は部下の顔をみるたびに、

「そういえば、あれどうなった?」

と尋ねる。このように、オフィス勤務であれば部下の顔を見るわけだから、そのたびに自分が出した指示ぐらいは思い出す。

「やっておきました」

と部下が言えば、

「じゃあ、メールに添付して送っといて」

と言うぐらいだ。それ以上の手続きはない。

■「指示待ち部下」「指示だけ上司」を撲滅するために

まとめると「指示だけ上司」も「指示待ち部下」も、発生型で仕事をしているため存在意義が薄い。部下の顔を見たら指示を出す上司と、上司から指示を出されたら動く部下。

双方、組織目標の達成を意識していないことは明白で、組織にとっていてもいなくてもどちらもいい存在なのである。

であるからこそ、このような上司や部下は、会社から在宅勤務を要請されると渋る。現代において、自分たちがお荷物な存在だと証明することになってしまうからだ。

会社からすれば、「指示待ち部下」「指示だけ上司」をできるだけ輩出したくない。だから何とか絶滅させようと必死だ。絶滅させるには、定期的に組織目標をメンバー全員で確認すること。

単に「主体的に動け」と言うだけでは変わらない。組織目標を繰り返し意識させ、その目標を達成させるためにはどんな仕事が必要で、その仕事を誰にどのタイミングで割り当てるのか。それを常にマネジャーが伝えていれば、おのずとメンバーたちもどんな仕事を「設定」すればいいか理解できてくる。

マネジメントというのは、組織目標を達成させるため、経営リソースを効果効率的に配分することを指すのだから。本来の仕事を怠ってはならない。

経営コラムニスト

企業の現場に入り、目標を「絶対達成」させるコンサルタント。最低でも目標を達成させる「予材管理」の理論を体系的に整理し、仕組みを構築した考案者として知られる。12年間で1000回以上の関連セミナーや講演、書籍やコラムを通じ「予材管理」の普及に力を注いできた。NTTドコモ、ソフトバンク、サントリーなどの大企業から中小企業にいたるまで、200社以上を支援した実績を持つ。最大のメディアは「メルマガ草創花伝」。4万人超の企業経営者、管理者が購読する。「絶対達成マインドのつくり方」「絶対達成バイブル」など「絶対達成」シリーズの著者であり、著書の多くは、中国、韓国、台湾で翻訳版が発売されている。

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