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コロナも吹き飛ばす大ニュース!米スポーツ界最大のスーパースター、トム・ブレイディが電撃移籍を決意!

三尾圭スポーツフォトジャーナリスト
ペイトリオッツからバッカニアーズへ移籍するトム・ブレイディ(三尾圭撮影)

Text & Photos by KIYOSHI MIO

 日本同様にアメリカのニュースは新型コロナウィルスに関するもの一色で、スポーツニュースもコロナ関連のニュースで占められている。

 シーズン中のNBAとNHLはシーズンを中断して、開幕間近のMLBも開幕を延期。本来ならばこの時期に最も盛り上がるはずの大学バスケットボールも全米王者決定トーナメント戦を中止した。テニスもゴルフも中止となり、報じるべきスポーツのイベントが皆無なのも日本と同様だ。

 そんなコロナ一色のスポーツニュースの中で、唯一話題を提供してくれているのがNFL。NFLはシーズンオフだが、ストーブリーグの真っ最中。今年のNFLストーブリーグは例年にも増して大物選手の移籍が相次ぎ、ファンを一喜一憂させている。

 3月17日(日本時間18日)には、NFLの顔的存在のトム・ブレイディが20年間プレーしたニューイングランド・ペイトリオッツとの決別を発表。

 NFL選手生活20年目にして初めてフリーエージェントの権利を手にしたブレイディの去就に関しては昨シーズン中から注目が集まり、プロ生活一筋を過ごしたペイトリオッツを離れるのではとの噂も流れていたが、実際のブレイディ自らがペイトリオッツに別れを告げると、ペイトリオッツ・ファンだけでなく、全米中のスポーツファンは愕然となった。

 それから数時間後、今度はもっと大きな衝撃が全米を駆け抜けた。ペイトリオッツに別れを告げた42歳のブレイディが、タンパベイ・バッカニアーズとの契約に合意したと報じられると、コロナの話題に占領されていたスポーツニュースがブレイディの話題で独占となった。

 2000年のドラフトで6巡目、全体199番目でペイトリオッツに入団したブレイディは、4番目のクオーターバック(QB)として1年目のキャンプを迎えたが、1年目のシーズンが終わったときにはNFL最高年俸を得ていたスターQBのドリュー・ブレッドソーに次ぐ2番手QBまで階段を駆け上がった。

 NFL2年目となった2001年シーズン序盤にブレッドソーが試合中の大怪我で戦列を離れると、ブレイディは先発に昇格。ブレイディはペイトリオッツをスーパーボウルに導いただけでなく、スーパーボウルを制覇。そのオフにペイトリオッツはブレッドソーをトレードで放出して、ブレイディに不動の先発QBの座を与えた。

 ペイトリオッツでの20年間でブレイディが成し遂げた偉業は、

  • 9度スーパーボウルに出場して、6度優勝(スーパーボウル6度優勝はNFL史上最多)
  • 4度のスーパーボウルMVP(NFL史上最多)
  • 3度のシーズンMVP(歴代2位タイ)
  • 満票でのシーズンMVP選出(NFL史上初の快挙)
  • 14度のプロボウル選出(オールスター選出)
  • 通算パス獲得ヤード歴代2位
  • 通算タッチダウンパス数歴代2位
  • 通算勝利数歴代1位
  • プレーオフでの通算勝利数歴代1位

などがあり、Greatest of All Time(史上最高の選手)の頭文字を取って”The GOAT”の異名を与えられた。

 プライベートでもスーパーモデルのジゼル・ブンチェンと2009年に結婚。このブンチェンはブレイディ以上に稼ぎ、2017年にケンドル・ジェナーに抜かれるまでは15年連続でモデル界で最高年俸を得ていた。2008年には総資産額が1億8000万ドル(約180億円)を超え、「最も稼いだモデル」としてギネスブックに認定され、2012年には年間で4500万ドル(約45億円)も稼いだ。

 夫人がこれだけ稼ぐので、ブレイディはリーグ最高給をもらう必要もなく、自らの年俸を抑えることでチームに貢献。NFLではサラリーキャップ制が導入されているので、ペイトリオッツはブレイディのおかげで効果的な補強ができた。

 ブレイディの昨季の年俸は2300万ドル(約23億円)でリーグ17位だったが、ブレイディの年俸が2000万ドルを超えたのは昨季が初めてで、2018年シーズンは1500万ドル(約15億円)でしかなかった。バッカニアーズとの新契約は年俸3000万ドル(約30億円)と報じられており、これはリーグ7位の高給となる。

アメリカで最も稼ぐセレブ・カップル、トム・ブレイディ&ジゼル・ブンチェン夫妻(三尾圭撮影)
アメリカで最も稼ぐセレブ・カップル、トム・ブレイディ&ジゼル・ブンチェン夫妻(三尾圭撮影)

 ブレイディが移籍先に選んだバッカニアーズは、2002年シーズンにスーパーボウル優勝を果たしたが、2007年シーズンを最後に12シーズンもプレーオフから遠ざかっている。

 バッカニアーズは昨季も7勝9敗で、3年連続して負け越したが、リーグ・ナンバー1のパス攻撃を誇り、クリス・ゴッドウィンとマイク・エバンスのリーグ最強レシーバー・デュオがいる。タイトエンドのOJ・ハワードも捕球能力は高く、豊富なパスターゲットがブレイディを待っている。

 だが、常勝軍団のペイトリオッツとはチーム・カルチャーが大きく異なり、チーム内には負け癖が染み込んでいる。ブレイディを守るオフェンシブ・ラインも強力とは言い難く、ディフェンスも脆弱。これまではプレーオフ出場が当たり前だったブレイディにとって、バッカニアーズをプレーオフに導くのは簡単な仕事ではない。

 しかし、逆境に強いのがブレイディ。2020年シーズンのスーパーボウルはバッカニアーズの本拠地であるレイモンド・ジェームス・スタジアムで開催されるが、これまでの歴史の中でスーパーボウルが開催されるスタジアムを本拠地とするチームがスーパーボウルに出場したことはない。前人未到の偉業を達成できれば、ブレイディはNFL史上だけでなく、アメリカンスポーツ史上最も偉大な選手として歴史に名前を刻むだろう。

 誰よりも強い闘争心を持つブレイディの21年目のシーズンは、大きな挑戦の年となる。

バッカニアーズで自身7度目となるスーパーボウル優勝を狙うトム・ブレイディ(三尾圭撮影)
バッカニアーズで自身7度目となるスーパーボウル優勝を狙うトム・ブレイディ(三尾圭撮影)
スポーツフォトジャーナリスト

東京都港区六本木出身。写真家と記者の二刀流として、オリンピック、NFLスーパーボウル、NFLプロボウル、NBAファイナル、NBAオールスター、MLBワールドシリーズ、MLBオールスター、NHLスタンリーカップ・ファイナル、NHLオールスター、WBC決勝戦、UFC、ストライクフォース、WWEレッスルマニア、全米オープンゴルフ、全米競泳などを取材。全米中を飛び回り、MLBは全30球団本拠地制覇、NBAは29球団、NFLも24球団の本拠地を訪れた。Sportsshooter、全米野球写真家協会、全米バスケットボール記者協会、全米スポーツメディア協会会員、米国大手写真通信社契約フォトグラファー。

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