阪神タイガース・東日本での豪雨被害を受けた方々への支援のための募金活動
■選手の発案で行った募金活動
9月15日。甲子園球場外周のミズノスクエアで試合前、阪神タイガースの選手による募金活動が行われた。目的は、東日本における豪雨被害を受けた方々への支援のためだ。
「まず選手から『やりたい』と声が上がったんで、運営のところで協力できればと。球団としてという気持ちももちろんありましたが、選手からの発案というのが嬉しかったですね」。こう話すのは阪神タイガース営業部、コミュニケーション担当課長の畑野幸博氏だ。
「こういう甚大な被害が起こって、募金をしたいけどどうしたらいいかわからないという人もたくさんいる。また、タイガースがこういう活動をしていることを知って、募金をしようと思ってくれる人もいる。こうして貢献できることは、非常に嬉しいこと」と募金活動の様子を、目を細めて見守っていた。
■選手それぞれの思い
開始は午後4時だった。前日に球団のホームページやフェイスブック、ツイッター、そして新聞各紙などで告知したこともあり、始まる前から長蛇の列ができていた。
まず藤井、福留、鳥谷、マートン、大和の野手5選手がそれぞれ募金箱の前に並んだ。列の先頭から選手の持つ箱に募金を入れ、選手と順々にハイタッチ、もしくは握手をしていく。どの選手も満面の笑みで感謝の気持ちを表していた。中でも福留選手は、一人一人に丁寧に「ありがとうございます」と礼を言い続けていた。
ふと一番端のマートン選手を見ると、右手で握手をしながら、空いた左手をずっと胸に当てている。終了後にわけを訊くと、「その(被害)ことを思ったら、感情が高まっていきました」と答えた。心優しき男は心底、被災者の皆さんを憂いているのだ。
災害が起こった当日には、「大変な人にも届くようお祈りします」という気持ちを込めて、自身のツイッターに「Pray For Ibaraki Pray For Japan」という投稿もしている。そういえば2011年の震災が起こった時も、心を痛めていた。
今回、募金活動をするに当たっても、「人々を助けられる機会。自分のためだけじゃなく、人のためにできるのはいいこと。タイガースのユニフォームを着ているからこそできることなので、ぜひ協力したい」と話していた。そして進んで活動に参加した。
キャプテン・鳥谷選手も同じ思いだ。「少しでも力になりたいと思っているし、自分にできることはしていきたい」。
常日頃から、海外の靴のない子供たちに靴を送る活動をするなど、社会貢献の意識の高い鳥谷選手。「シーズン中はなかなかできないけど…」と言いつつ、こうして有事の際には率先して動く。
小さな手に握り締めた小銭を差し出す子供に向ける瞳は、パパの優しい眼差しだ。子供の高さに合わせて屈み、手を合わせてのタッチで謝礼の気持ちを伝えた。
野手5選手は15分間の予定だったが、少し延長して選手たちは協力を呼び掛けた。続いて福原、安藤、能見、メッセンジャー、岩田の5人の投手陣が登場。同じく笑顔で応対した。
■実は能見投手も・・・
活動後、代表して能見投手が取材に応じ、「人間の温かみというか、被害に遭われた方への思いを皆さんが持っていると思う。非常にたくさんの方が募金をしてくださって、ありがたいと思います」と感謝の言葉を述べた。
また「色んな方に応援してもらっていますし、微々たるものだと思うんですけど、こうやって動くことが本当に大事なことですし、何か役に立ってもらえればと思う。こういうのは一回で終わらずに、何回もやって皆さんで協力して、元に戻ってもらえることが一番」と、今後も継続していくことを誓っていた。
そして能見投手は、「ボクの実家も一度、浸水というのは味わっているので。堤防が決壊したっていうのは一緒だったので、同じような感じだった」と自身も被災経験があることを明かし、だからこそ「こういうのは続けていけたらと思う」と強く訴えていた。
選手が退出した後も球団スタッフによる活動は続けられ、1時間で450,398円(約1,000人参加)が集まった。
■ファンの皆さんの反応は?
募金をしたファンの方に話を聞いた。「災害で被害を受けた方のための募金なんで、あまり浮かれて並ぶのも気が引けたけど、ファンとしては選手と近くでふれあえる数少ないチャンスなんで嬉しい。正直、メンバーに驚きました。試合前なので控え選手かと思っていて。鳥谷さんと握手なんて初めてで、すごい笑顔での対応が嬉しかった。試合前の時間なんで、選手の負担にならなかったらドンドンやってほしい」(東大阪市のMさん)。
「なかなか自分たちだけではできないけど、選手たちが率先して募金活動などをしてくれると、ファンみんなも参加できてとてもいいと思う」(神戸市のSさん)。
「まさかの主力選手だったのでビックリした。みんなすごく丁寧に対応や握手をしてくれたので、募金に行ってよかった。選手の負担にならない程度で、またしてほしい」(西宮市のKさん)
■プロ野球選手だからこできる活動
大好評だ。改めて選手の力は偉大だと思った。一般の人間ではこれだけの人とお金を集めることはできないのだから。だからこそ、この活動の意義は大きい。この偉大な力は、もっともっと生かしていくべきだ。
畑野氏も話す。「球団ができることはなかなかない。こうして選手が声を上げて社会貢献活動をしてくれる。球団としてはハブ的な位置で、それをバックアップできれば。やってくれる選手も、そしてこうして集まってくださるファンの皆さんも、どちらもありがたいこと。タイガースがこういうことをやっていると知って来てくださる。こんな嬉しいことはない」。
阪神タイガース、そしてタテジマ戦士たちは今後も、グラウンド外での“プロ野球選手だからこそできる活動”に力を入れていく。