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智之、不安な気持ちはわかる…でも、あえて伝えたい。ポスティングでのメジャー移籍はFA以上に覚悟が必要

上原浩治元メジャーリーガー
(写真:ロイター/アフロ)

 選手個人や特定の球団を批判するためのコラムではないことは最初に断っておきたい。

その上で、巨人の菅野智之投手が正式に申請したポスティングシステムへの姿勢に対して

疑問を呈したい。

 8日にジャイアンツ球場で取材対応した智之(菅野投手)の言葉を報道ベースでみると、「一野球人としてそこ(メジャー)でプレーしたい。その思いだけ」という率直な気持ちがある一方で、「メジャーの来年のシーズンがどう行われるか。どうなるかわからない不安な状況で自分のパフォーマンスができるのか」などといった懸念材料があることも打ち明けていた。偽りのない気持ちだと思う。ただ、ポスティングはFAとは違うという点をはき違えてはいけない。 

 海外FAは球団の容認は不要で、選手の権利。コロナ禍の状況や自らへの評価を聞き、自分が行きたいと思う球団と条件が合致すれば移籍できる。一方で、ポスティングはメジャーへの移籍が大前提だ。コロナ禍で状況が不透明で不安があるというなら、そもそもポスティングを申請しなければよいだけの話なのだ。智之(菅野投手)がこのタイミングでメジャーに本気で行きたいか、どうか。行きたいのなら状況は関係ない。ポスティング=オファーがくれば、どんな状況でも、条件でも移籍をする。その覚悟は必要だと思う。

 グラウンド外でも交流がある智之を責めるつもりはない。残留容認でポスティング申請を認めた球団の姿勢も制度の趣旨とは違うように思える。ただ、すべての根源はポスティングという申請手続きそのものは制度化されているにもかかわらず、その後のルールが統一されていない点に問題があるのだと思っている。

 ポスティングシステムは海外FA権(出場選手登録(1軍登録)日数が9年)取得前にメジャーへの移籍を認める制度で、球団は対価として譲渡金を受け取ることができる。ただ、球団によって容認するか、どうか、あるいは入団から何年なら認めるかなどが曖昧になっている。そのため、選手はまずポスティングでの移籍を訴えることから始めなければならない。私は海外FA権取得の1年前(最短で8年)に選手が希望すれば、どの球団も必ず認めるという統一ルールが必要だと考えている。前回のコラムでこのことを書いたとき、「8年より前に認めている球団もある」という意見があったが、統一ルールができれば、どの選手も8年で縛ればいいと思う。

 そして、ポスティングを申請後、メジャーからオファーが届けば、条件に関係なく選手は移籍を選択するという点を明記すれば、ポスティングのルールはわかりやすくなる。今回のことで智之がダメとか、巨人がダメということではない。今後、同じような選手が出てきたとき、ポスティングシステムがより曖昧なものになってしまわないようにしてほしいという思いで書いた。選手にとっても、容認した球団にとっても、ポスティングは覚悟を持った決断が必要な制度だという原点は忘れないでほしい。

元メジャーリーガー

1975年4月3日生まれ。大阪府出身。98年、ドラフト1位で読売ジャイアンツに入団。1年目に20勝4敗で最多勝、最優秀防御率、最多奪三振、最高勝率の投手4冠、新人王と沢村賞も受賞。06年にはWBC日本代表に選ばれ初代王者に貢献。08年にボルチモア・オリオールズでメジャー挑戦。ボストン・レッドソックス時代の13年にはクローザーとしてワールドシリーズ制覇、リーグチャンピオンシップMVP。18年、10年ぶりに日本球界に復帰するも翌19年5月に現役引退。YouTube「上原浩治の雑談魂」https://www.youtube.com/channel/UCGynN2H7DcNjpN7Qng4dZmg

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