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以前にも海外オファーあった。テビタ・タタフの渡仏に、松島幸太朗の忠告は【ラグビー旬な一問一答】

向風見也ラグビーライター
激しい突進が魅力的。(写真:つのだよしお/アフロ)

 ラグビー日本代表で活躍するテビタ・タタフが、来季からフランスのボルドー・ベグルに加わる。

 1月17日、現所属先である東京サントリーサンゴリアスの練習後に心境を明かした。

 以下、単独取材時の一問一答の一部(編集箇所あり)。

——移籍への思い、決意、きっかけは。

「いままでずっと日本でラグビーをしていたので、海外でしたい、と」

——目標は。

「試合に出て、日本プライドを出していきたいです。フィジカル、負けず嫌いの気持ちを(出したい)」

——テストマッチでも力を発揮しているが。

「フィジカルの部分は、まだ足りないですね。ここでしっかりトレーニングしていける(より通用する)ようにしたいです」

——現在来日中のご両親には何と言われたか。

「向こうでもしっかり頑張ってください、と」

 アメリカ領サモア出身で、公称「183センチ、124キロ」の26歳。パワフルなラン、ジャッカルで魅する。

 トンガカレッジ、目黒学院中学校、同高校、東海大学を経て2019年にサンゴリアス入りした。

 学生時代の2016年に初選出された日本代表へは、2021年以降に定着した。

 ところが昨秋のツアーでは一時、選外となった。候補合宿前のコンディションチェックで、ジェイミー・ジョセフヘッドコーチにだめを出されたのだ。

 直前のオフに、約3年ぶりの帰省を叶えていた。ウイルス禍を経て久々に家族と再会できた嬉しさもあってか、体重管理が難しくなった。

 もっとも減量して復帰するや、持ち味を発揮した。

 代表活動のあった秋は、合宿や遠征の合間にもサンゴリアスのクラブハウスで走り込んだ。日本代表のスタッフが現地へ訪れ、持久力を高めるメニューを課していた。

 本人はこう話していた。

「9月に(日本に)帰ってきて、『体重を』と(指摘され)、フィットネスとダイエットプランニングをやってきました。(一時落選は)悔しかった。それも自分の責任でした。代表の時は、オフでもトレーニング。大変でした!」

——ちなみに現在は。

「代表の時はかなり落ちて、でも、軽すぎるのは…とアップしました。(減量すると)コンタクトがいつも通りじゃなく、軽く、弱い(感覚がある)」

 サンゴリアスには、フランスでのプレー経験のある選手がいる。

 そのひとりは松島幸太朗。日本代表のウイング、フルバックとして2度のワールドカップに出場した29歳は、昨季までの2シーズン、クレルモン・オーヴェルニュに在籍した。

 今回のタタフの移籍については「僕も皆と同じタイミングで知った」と笑い、取材へはこう応じた。

「ボルドーは普通に強い。ダミアン・プノー(フランス代表ウイング)も移籍するし、毎年パンチがありますが、(来季は)もっと強くなりそう」

——アドバイスは。

「彼は、自分の持ち味であるパワーとフィジカルを出していけば、必ずチームのプラスになる。相手にいたら脅威で、嫌だと思う。見るのが楽しみです」

——生活面では。

「…あまり、チーズを食べすぎないように」

——! …向こうでは日本と比べ、食生活の管理が本人に委ねられる傾向があるのですか。

「そうですね。ボルドーがどうかはわからないですが、(概ね)徹底して(管理を)やっている、とは聞かないので」

 田中澄憲監督は、「彼が世界で活躍するチャンス。いいことじゃないですか。チャレンジを応援したいと(本人に)話しました」。ゼネラルマネージャーだった昨季の逸話を交えて語る。

「実は、その前の年にもヨーロッパの別なチームから話があったんです。その時、彼に言ったのは、『ワールドカップ(今秋のフランス大会)の前に行かないほうがいいんじゃないの?』と。その理由は、見ての通り、コンディション(の管理および調整)が難しい選手で、ほったらかしにすると…ということで、『ワールドカップが終わるまでは日本でやって、大会後に世界へチャレンジしたら?』と」

 タタフの件に限らず、田中監督は代表選手の海外移籍へは「ワールドカップ前に慣れないチームでやることは、ワールドカップにも影響が出てよくないのではないかと思っています」との考え。ただ、所属選手の世界挑戦へは「本人がやりたければ」と背中を押す方針だ。

 旧トップリーグ時代の2017年度を最後にタイトルから遠ざかっているサンゴリアスは、現在、国内リーグワン・1部の2季目に挑んでいる。

 田中監督のもと、複層的な陣形を作り続け、走り勝つ攻撃スタイルを展開する。4節までを消化し、3勝1敗で12チーム中3位につける。

 将来的な日本復帰も望まれるタタフがこのクラブで躍動するのは、ひとまずは今季が最後となる。有終の美を飾れるか。

ラグビーライター

1982年、富山県生まれ。成城大学文芸学部芸術学科卒。2006年に独立し、おもにラグビーのリポートやコラムを「ラグビーマガジン」「ラグビーリパブリック」「FRIDAY DIGITAL」などに寄稿。ラグビー技術本の構成やトークイベントの企画・司会もおこなう。著書に『ジャパンのために 日本ラグビー9人の肖像』(論創社)『サンウルブズの挑戦 スーパーラグビー――闘う狼たちの記録』(双葉社)。共著に『ラグビー・エクスプレス イングランド経由日本行き』(双葉社)など。

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