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「機能性表示食品」事業者が「科学的根拠に基づく食情報を提供する消費者団体」にクレーム

佐藤達夫食生活ジャーナリスト

■FOOCOMが消費者庁に真っ正面から「申し入れ」

機能性表示食品については、このコラムで何度か書いた。

http://bylines.news.yahoo.co.jp/satotatsuo/20150503-00045361/

http://bylines.news.yahoo.co.jp/satotatsuo/20150703-00047213/

読んでもらえればおわかりになると思うが、私は機能性表示食品をも含む「いわゆる健康食品」に対しては批判的立場をとっている。私よりもさらに過激に、というよりも論理的に機能性表示食品を批判しているのが「科学的根拠に基づく食情報を提供する消費者団体:FOOCOM」だ。

6月に公表がスタートした機能性表示食品の届け出についても、消費者庁に対し真っ正面から「申し入れ」を行っている。詳細は下記のホームページをご覧いただきたい。具体的に13の商品(の届け出)に対して疑義を申し立て、その理由もしっかりと述べてある。同時に、消費者庁に対してガイドラインの改訂を提案し、早急に事業者に対する指導を求めてある。

http://www.foocom.net/column/editor/12869/

私は「きわめてまともな」申し入れであると感じたのだが、具体的な商品名や成分名を取り上げて指摘された事業者からは、さまざまな反応があったようだ。ある事業者は「事実無根であり、営業上の不利益を被っているため、直ちに申し入れを撤回し、ホームページ等からの削除と謝罪を求める」という文書を配達証明つきで送りつけてきたようだ。

FOOCOMは「事実無根の指摘をしたとは考えておらず、文書の撤回や謝罪をするつもりはない」と判断し、弁護士と相談をして、その旨の解答書を当該事業者に送付したようだ。

http://www.foocom.net/special/12929/

その直後に、当該事業者のホームページに下記のような「見解」が公表された。

http://www.toyoshinyaku.co.jp

何とも回りくどくて一度や二度読んだだけでは何を言いたいのかが(私には)理解できない。どうやら、「謝罪」と「削除」を求めてはみたが、FOOCOMからきちんとした回答を得られたので矛を収めたい、ということのようだ(これは私の理解)。これを機会に、しっかりとしたエビデンスとわかりやすい情報を提供をする事業者になっていただきたいと強く願う。

■これも「経済的手法で首を絞めるやり方」なのか?

「機能性表示食品」に関する諮問に対し、消費者委員会のは平成26年12月9日に安倍首相に答申をしている。その答申には9つの付帯事項が付いていることは、すでに紹介した。その主旨--たとえば、届出後に、その食品の機能性に十分な科学的根拠が無いことが判明した場合には、早急に適切かつ厳格な行政処分や罰則を科すような態勢をとる。等々--から鑑みて、今回FOOCOMが行なった行動(消費者庁への申し入れ)は、しごく当然であり、消費者庁はこれを真摯に受け取り、早急に対応すべきである。

ましてや、事業者が「まるで脅しのような」謝罪と削除を求める文書を送りつけた行為については(直後に事実上取り下げたとはいえ)、消費者庁からその事業者に直接の指導があってもしかるべきと、考える。

その中身については(事業者が矛を収めたようなので)ここではこれ以上は踏み込まないことにする。私が危惧するのは、この事業者がとった「手法」である。配達証明郵便で「謝罪」と「削除」を求めているので、当事者(FOOCOM)としては、放置するわけにはいかず、弁護士等に相談をして、対応することになる(実際、そうしたようだ)。

もちろん大きな出費を伴う。FOOCOMは、私の知る限り、きわめて弱小な組織だ。基本的にホームページの閲覧はタダ、会員の会費のみで運営をする消費者団体である。「いわゆる健康食品」の売り上げで大きな利益を得ている事業者にとっては、弁護士費用などは「織り込み済み」だろうし、そもそもそれほど大きな負担にはならないだろう。しかし、会員の会費のみで運営している小さな組織にとっては、弁護士費用はかなりの「負担」になるはずだ。

論理的にはあるいは科学的には対抗できなくとも、経済的負担を負わせて「物を言わせなくする」という手法を看過するわけにはいかない。他の会社もこれに倣ったら、消費者のために正しいことを言う組織は姿を消すかもしれない。

折しも、時の権力者が「新聞の発言を封じるには、広告主から圧力をかければいい」と発言し大きな問題となっている。今回の事業者が、そのような貧しくかつ下品な発想の持ち主ではなく、FOOCOMの指摘を自社の商品を見直すきっかけにして、真に「消費者の健康に貢献する商品」の制作に役立ててもらいたいと願う。

★このコラムは7月13日に投稿したものですが、事業者が(私の予想しなかった)素早い対応をとったため、7月15日、内容を修正して再投稿しました。ご了承ください。(佐藤達夫)

食生活ジャーナリスト

1947年千葉市生まれ、1971年北海道大学卒業。1980年から女子栄養大学出版部へ勤務。月刊『栄養と料理』の編集に携わり、1995年より同誌編集長を務める。1999年に独立し、食生活ジャーナリストとして、さまざまなメディアを通じて、あるいは各地の講演で「健康のためにはどのような食生活を送ればいいか」という情報を発信している。食生活ジャーナリストの会元代表幹事、日本ペンクラブ会員、元女子栄養大学非常勤講師(食文化情報論)。著書・共著書に『食べモノの道理』、『栄養と健康のウソホント』、『これが糖血病だ!』、『野菜の学校』など多数。

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