伝説のイベント『Live EPIC25』が一夜限定劇場上映。EPICという名の“熱狂”に酔う
8月21日、ライヴ・フィルム『Live EPIC 25-20th Anniversary Edition-』が、全国19か所23館の劇場で一夜限定上映
『Live EPIC25』――今から20年前の2003年、鈴木雅之、桑野信義、鈴木聖美、大沢誉志幸、小比類巻かほる、松岡英明、大江千里、THE MODS、HARRY(The Street Sliders)、BARBEE BOYS、TM NETWORK、渡辺美里、佐野元春(出演順)というEPICレーベル所属アーティスト、EPICの歴史を彩ったアーティストが出演し、大阪城ホールと国立代々木競技場第一体育館2daysに4万人を動員した伝説のイベントだ。この『Live EPIC 25』がEPIC創立45周年を記念して、創立日である8月21日(月)、ライヴ・フィルム『Live EPIC 25-20th Anniversary Edition-』として、全国19か所23館の劇場で一夜限定で上映される。
この作品は2003年8月に映像商品として発売されたが、今回の劇場上映では、最新リミックス&デジタル・リマスタリングによる劇場版5.1chサラウンドの音声、全曲アップコンバートを施した映像を、日本屈指のシステムを備えた映画館で大音量で上映する。その初号試写を観た。映像商品はもちろん何度も観ているが、この劇場版は別もの、新しい感動を与えてくれた。音も映像も解像度が上がり、ひとつ一つの音の粒立ちが強くなり、スーパーバンドが生むアンサンブル、アーティストの魂がこもった歌の素晴らしさが、新たな感動を運んでくる。
当時、日本でレーベル単位でイベントが行われることは珍しかった。トリを務めた佐野元春が「アンジェリーナ」を歌った後、「彼がいなければ僕らは今このステージに立っていなかったと思う」と、関係者席に座るEPICレコードのファウンダー・丸山茂雄氏を紹介しスポットライトが当たると、客席から大きな拍手が贈られる。そう、このイベントは丸山氏がソニー・ミュージックエンタテインメントの取締役を退任したことを受け、彼の功績を称えるという意味合いが強いイベントで、「丸さん」と誰からも慕われた稀代のミュージックマンのキャリアの節目に、多くのアーティストが駆け付けた。再結集したBARBEE BOYS 、大沢誉志幸は4年ぶりのライヴ、久々にステージに戻ってきた小比類巻かほる、The Street SlidersのHARRYも登場した。そして急遽出演が取りやめになった岡村靖幸に代わって、アナウンスされていなかった松岡英明がサプライズで出演した。
スペシャルバンド・The Burst Waltzはなんとも豪華だ。ライヴのサウンドプロデュースを務めたバンマス佐橋佳幸(G)、葛城哲哉(G)、江口信夫(Dr)、萩原“メッケン”基文(B)、Dr.KYON(Key)、西本明(Key)、山本拓夫(Sax)、大滝裕子(Cho)、濱田“Peco”美和子(Cho)という凄腕ミュージシャン達の素晴らしい演奏も、このライヴの聴きどころ、見どころだ。
トップバッターで登場した鈴木雅之が、1曲目にレゲエテイストにアレンジされた「ランナウェイ」を歌うなど、オリジナルアレンジの持つ良さ、空気感を最大限に生かし、しかし一曲一曲新たなアレンジが施され、このイベントが決して懐古趣味的なライヴではないことを伝えていた。鈴木は現在もEPICを象徴するアーティストとしてシーンの最前線で活躍。近年は“アニソン界の永遠の大型新人”としてアニソンシーンでも活躍している。このライヴで披露した「ランナウェイ」と「め組のひと」は、鈴木のライヴでは今も欠かせない昭和~平成~令和と歌い継いできた名曲だ。姉・鈴木聖美の圧巻のボーカルと、鈴木の色気のあるボーカルとのデュエットソングの定番「ロンリー・チャップリン」は、誰もが口ずさんでいた。
鈴木のソロデビュー曲となった「ガラス越しに消えた夏」を作者の大沢誉志幸とワンコーラスずつ歌うシーンもこのライヴのトピックスのひとつだった。大沢が歌った「そして僕は途方に暮れる」はEPICを代表する一曲といっても過言ではない、決して色褪せないスタンダードナンバーだ。名アレンジャー・大村雅朗の先進的かつ切なさを纏ったアレンジの力も大きい。このライヴを観て感じたことは、EPICレーベルから世に放たれた楽曲達は、時代を超え、愛されるスタンダードナンバーが多いということ。アーティストのパワーはもちろん、作家陣、スタッフの熱量が一曲一曲に込められている気がする。
1987年に設立されたEPIC。当時は制作セクションのスタッフを除いて、ほとんど音楽業界未経験者が集まった、まさにゼロからスタートしたレーベルだった。そこで自由なクリエイティブがどんどん生まれ、それまでになかった独創的なレーベルとなっていった。自由奔放な空気が熱狂を醸成し、先取性に富んだアーティストが次々とデビュー。EPICのもうひとつの強みはいち早くMUSIC VIDEOに注力したこと。楽曲がその映像と共にリスナーの心に強く残っていった。そしてもうひとつの「映像」、テレビのCMやドラマ、映画のタイアップ戦略が相乗効果を生み、その曲達は幅広い世代から愛された。
ライヴではそんなアーティストの代表曲が次々と披露され、約4時間という濃密で、でもあっという間の夢の一夜だった。小比類巻かほるは大ヒットナンバー「Hold On Me」「Together」を披露し、最後に「I'm Here」をアカペラで歌った。EPICで過ごした日々を誇りに思う、そんな気持ちが込められているように感じた。大江千里はスタンディングでピアノを弾きながら「YOU」を歌い「十人十色」で客席がひとつになる。「激しい雨が」他を歌ったThe MODSの強い音圧と森山の強い歌は圧巻だ。
The Street Sliders のHARRYがアコギをもって登場し「風が強い日」を歌って、まさにふらっと寄ってふらっと去っていく粋なステージ。再結集したBARBEE BOYSも大きな注目を集めた。大歓声で迎えられ「泣いたままで listen to me」「負けるもんか」「女ぎつね on the Run」という名曲オンパレード。KONTAと杏子のせめぎ合いに客席は熱くなり、杏子が舞い、スカートやストールがひらりと揺れるパフォーマンスもやはり印象的だ。
TM NETWORKにもひと際大きな声援が送られ、「BE TOGHTHER」「Get Wild」「Self Control」を披露。「Get Wild」は9月8日公開の『劇場版シティーハンター 天使の涙(エンジェルダスト)』のエンディングテーマとして、再び注目を集めている。渡辺美里は小室哲哉のピアノで「君にあえて」を愛おしそうに歌う。小室が手がけた「MY REVOLUTION」のイントロが流れた瞬間歓声があがる。そして「恋したっていいじゃない」「10 YEARS」で盛り上げる。そしてトリの佐野元春は、赤いストラトを抱えて登場すると「約束の橋」をこの日限りのアレンジで披露。「アンジェリーナ」を披露し、オールキャストでこれもEPICを代表する一曲といっていい「SOMEDAY」を歌い、まさに大団円。
あれから20年経ったとは思えない、エネルギーに満ちあふれたライヴ映像だ。それは一人ひとりのアーティストのパワー、一曲一曲に込められた高い熱量、さらにこのライヴに関わった全てのスタッフの情熱、そしてEPIC創始者・丸山茂雄氏へのリスペクトと感謝の思いがひとつになって作り出された“熱狂”だ。映像商品を持っている人は改めて大画面であの臨場感を堪能し、良音を楽しみ、まだこの映像を観たことがないという人は、EPICというレーベルの“真髄”を楽しんで欲しい。
8月21日東京・新宿バルト9には上映前に、ギタリストで音楽プロデューサーの佐橋佳幸が登壇することが発表された。『Live EPIC 25』のバンド・BURST WALTZのバンマスとしてサウンドプロデュースを担当した佐橋から、ライヴ当日の話はもちろん、この伝説の一大イベントのプロデューサーだからこそ知る苦労話など、ここでしか聞けないとっておきのエピソードの数々が語られる予定だ。
またこの映像商品(Blu-ray)が『Live EPIC 25(20th Anniversary Edition)』として、9月20日に発売される。この作品にはオリジナル版には未収録だったBARBEE BOYSの「チャンス到来」「泣いたままで listen to me」「負けるもんか」「女ぎつね on the Run」の4曲が追加された。